五一五事件

血盟団事件から五一五事件へ

二人目(団琢磨)の暗殺実行以後、警戒厳重に
談合の結果、個人テロは至難になった為、今後は残った民間同志と海軍側と聯合して集団テロ決行で大体一致

海軍側(古賀、中村ら)、井上日召の自首を聞いて最初の計画通り第二陣決行決心
中村が、井上と連絡あった橘孝三郎の愛郷塾一派、陸軍士官候補生の一団、血盟団残党を糾合、海軍側との連合軍組織、大川、本間憲一朗、頭山秀三の援助求め、可能なら西田、菅波一統の陸軍側も蹶起させ、一大集団テロ蹶起慣行を決意

上記諸勢力と井上一派との関係

・橘孝三郎の愛郷塾一派
水戸市外常盤村に兄弟村経営、愛郷塾開き、農本主義に基づく大地主義唱え、農村ひいては国家の救済を目的
昭和五年、那珂郡前渡村小学校で農村問題の講演の際、同小訓導の古内栄司と知り合い、それを通じ翌年井上と懇談、爾来深い関係
井上、橘は学者肌なので革命に適さず、破壊後の建設担当させようと考えていた
→血盟団事件に関与せず
この関係を知らなかった古賀等は第二陣への参加要求
愛郷塾一派は応諾

・血盟団残党
橘、残った大洗組四人を動員
官憲の追跡を逃れていた奥田秀夫を中村が訪ね、参加

・陸軍士官候補生(附池松武志)の一団
昭和六年十月、所属部隊より派遣され陸軍士官学校本科に入校した四十四期生
 入校早々十月事件に際会、参加
休日ごとに菅波だずね、訓導享ける
⇒国体問題、社会問題に関心
十一月ごろ~、権藤を訪ね、談論講義を聞き、そこで井上と知り合い、その後数回訪ねる
 革新的気分上昇
十二月、その内の米津三郎候補生が社会問題を論じた印刷物が出回り、池松ら関係者処分
 農村本位、生産機関国営化、過渡期には戒厳令布き戦時給付状態に
暗殺事件とともに、革新気分盛り上がる
三月二十日、中村は歩三に行き、所属者や士官候補生代表に蹶起勧めるが、自重論執って応じず
坂元兼一候補生代表、海軍側の決意に感動、中村を別室に呼び参加の意思表明
翌日同期生一同面会し参加決定

・大川周明
古くより藤井斉と同志的交際
藤井、井上と堅く提携しつつ、大川と連絡、これを利用しようとしていた
古賀、中村は藤井の後継者として援助求め、大川応じる
→事件は大川の思想信念により指導感化される

・本間憲一朗、頭山秀三
本間、東洋協会専門学校在学時代より頭山満方に出入りし指導受ける
秀三が天行会創立の際には本間が理事に
本間、井上と国家革新を誓い合った間柄
第一弾後は井上、天行会に潜伏し、それを訪ねた古賀、中村も秀三と知り合う
自首の際、本間、秀三は井上から事後を託され、第二陣の計画援助、拳銃提供

計画の概要

二十八日、第一次計画
 第一段:六組に分け、首相官邸、牧野内府邸、華族会館、工業俱楽部、政友会・民政党本部襲撃
 第二弾:三組に分け、東郷元帥を訪ね宮中に御伴、権藤を荒木陸相官邸に連れ行き、刑務所襲撃し血盟団被告奪還
池松、奥田は偵察方担当し、毎週水曜夕刻、山水閣で連絡

四月十日、古賀ら近く臨時議会開催せらる情報聞き計画変更→議会襲撃

二十一日ごろ。西田が計画探知し、他に漏らすらしい様子在り
古賀、中村は橘、後藤と相談し、川崎長光に西田を暗殺させることに決定

二十七日ごろ、古賀ら、議会開会中は士官候補生不在になるとわかり、五月十五日の首相官邸でチャップリン歓迎会を狙う計画に変更

二十九日ごろ、チャップリンの件は不正確であるとわかり、第四次計画
 第一弾:三組に分け首相官邸、牧野邸、工業俱楽部襲撃
 第二弾:一・二組は自首、俱楽部襲撃後三組は東郷の御伴
 愛郷塾:別動隊として変電所襲撃、東京市内暗黒化
 川崎長光:西田暗殺
 軍政府樹立後は、大川と通ずる陸軍同志、長野朗ら農民一派、大川、頭山系民間革命かその他一般愛国団体による支持あるとよそう

血盟団事件の取り調べで海軍側同氏の身辺も危険に
 浜大尉は三月初めより取り調べ、村山格之も禁足
→海軍側、決行急ぐ

五月八日、十五日の決行決定

十三日、会合で計画を最終決定

十五日午後五時半、一斉蜂起

事件の概要

第一弾:四組に分け、首相官邸(靖国集合)、内大臣邸(泉岳寺集合)、立憲政友会本部(新橋集合)、三菱銀行襲撃
 犬養・牧野を暗殺し、政党財閥打倒
第二弾:第四組以外の三組合同して警視庁襲撃
別動隊:橘、これに呼応し農民決死隊組織。午後七時頃日没を期して東京市内及びその近郊の電力供給する変電所六ヶ所襲撃
川崎長光:西田税暗殺

第一組以外、建物を損壊させた程度で暗殺は行わず引揚
警視庁は予想に反し、非常手配の様子無、全組、ほぼ通過して憲兵隊に自首
変電所も多少損壊した程度で帝都暗黒化せず
西田に拳銃六発連射し下腹部盲貫銃創負わせたが、奇跡的に一名取り留める

・不参加者
佐世保の同志・林正義、大庭春雄、塚野道雄らは、焦慮に過ぎると考えていた
 東昇少尉ら九州陸軍側は必ずしも静観的態度でないとの観測
→古賀に時機を選ぶよう注意
 林正義、決行を知り、延期を打電
 直接大庭を上京させて延期させようとしたが、休暇手続きに時間かかり時機失する

いいなと思ったら応援しよう!