写真で今を残している
僕たちは限りある人生を過ごしている。
何か成し遂げられるかどうかはまだ分からないが、今を振り返った時に後悔することがないように写真を撮り続けている。
僕にとっての写真はそういうものだ。
「迫力満点の風景を撮るぞ!」という意気込みが無いわけではないが、「この景色を残しておきたい」という気持ちの方が強い。
この傾向は去年の6月に祖父が逝去してから強くなってきた。それまで健康な人生を送ってきた人でも、突然呆気なく幕を下ろすことがあると知った時、「今」をもっと大切にしなければと思うようになった。
「今」は次の瞬間から「昔」に変わる。普段何となく見ている今の景色は、時間の経過が価値を与えてくれるものだと思っている。
例えば、昔通った学校の通学路。今通ってみると懐かしい気持ちになるけれど、当時はそんなこと考えてもいなかっただろう。
同じように一家団欒の風景も振り返れば、この世のどんな絶景にも負けない風景になっている。
祖父が撮った写真を見せてもらったことがある。そこには、まだ小さい頃の僕や若かった家族が写っていて、みんな良い笑顔をしていた。
当時はあまり気にしなかったが後に振り返ってみると、その笑顔が祖父に向けられたものであると気づき、僕は写真が持つ魅力を再認識させられた。祖父が感じた幸せをそのまま形に遺してくれたことを感謝している。誰かの幸せは、他の誰かに伝播するようだ。
写真が好きな人にも、そうでない人にもぜひ家族写真を沢山撮ることをオススメしたい。ふと思い出した時にアルバムを引っ張り出して、家族みんなで「懐かしいね」と言える日が来るはずだから。