村田紗耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』
自分の尺度で世界に触れると波紋が起きる。
それに気が付いた主人公の谷沢が、
自分の世界を震わせるために
生身の自分で、周囲との接触を求める。
その立ち向かう姿は、激しくかっこいい。
そんな抜き身の刃物みたいな谷沢に接触されると
大抵の人は、「気持ち悪い」と振り払ってしまう。
でも、その「気持ち悪い」さえ、世界との正確な接触なのだ。
生身でぶちあたっていったからこそ、その反応が得られるのだから。
性の目覚め、処理できないこの心。
そして越えられないクラス内のヒエラルキー。
でもその間の壁を、境界線を越えて
自分の尺度で、自分を測って進んでいこうとする人の話。
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怒りで体から青い炎を出すように燃えたり
自分の気持ちを正確に人にぶつけていくことは
とても体力がいることで
現実では、そんなことをする人を受け止めてくれる器は、小さい。
だから、孤独で哀しい終わりを迎えたりするだろうなと思う。
必ずしも、この感情のぶつけ方が正しいとは思わない。
でも、この感覚を失ったら終わりだと思う。
自分が正確でありたいと思う相手には、ことさらに。
「それは私の価値観だから。撤回できない」(p.295)
「私には値札がついていて、その数字がすごく低いんだ。でも、私、
それとは関係なしに、すごく綺麗みたい」(p.308)
谷沢の目を通して生まれる言葉が、それはもう宝石のようで。
描写が生々しかったりするから、敬遠する人もいるかもしれない。
でも私には、ストレートに作者の気持ちが入ってくる。
村田紗耶香さんの、世界の違和感に立ち向かっていく姿が、綺麗だと思った。