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少年アヤ「少年アヤちゃん焦心日記」ー混沌、でも希望

少年アヤちゃんの頃の少年アヤに出会ったのは
ある女性向けのWebコラムで
そこでアヤちゃんは消費税とともに生まれたオカマでニートというレッテルのもと、
オカマとして、自分を「私」と呼び、恋愛対象を「男性」において
恋愛のことや自意識について、
身を切るような言葉で色んなことを言っていた。

アヤちゃんが丸の内や池袋、原宿を巡る連載もあった。
それは果てしなく面白く、些細なものもでも語る人の目と文章により
面白いコンテンツに変わりえることを、私はそこから嫌という程学んだし
少年アヤちゃんが作り出す文芸世界を
憧れと尊敬と
自分にはできないという一定の距離感をもって
遠くからじっと見続けた。

連載が終了したのか更新が止まり
そのWebコラムにアヤちゃんがあまり出てこなくなったときには
安否すら心配になり、Twitterをフォローした。
そこで、本書の出版を知り、Amazonで先行予約をした。
私にとって、初めての先行予約だった。

少年アヤ「焦心日記」を読み終わって、
アヤちゃんはもうアヤちゃんではないと知り
なんと呼べばいいのかわからないけど、
ひとまずアヤさんで落ち着けて感想等を書く。



焦心日記には、アヤさんの本気と勇気が詰まっていて
その濃厚さに、私は思わずだじろいでしまった。
私生活を綴ったブログの書籍化だから
個人の生活感が溢れているのは当然のことなのかもしれないけれど
アヤさんが送る毎日は、わたしの想像を超えたカオスの連続で
文章から盛り上がり迫ってくる言葉の勢いに、その気迫に、圧倒されてしまう。

そのすごい気迫で書かれた文章は死ぬほど美しい言葉の塊で
内容それ自体は清廉とは言えないけれど
アヤさんの詩にも似た言葉は、苦しみながら迷いながら必死に流れてくるから
私はなんとかこの小さい心と体で受け止めようと必死で
心苦しくなりながらも、ページを捲り続けた。

「愛されたい」と叫びヤクザを慄かせる歌舞伎町のアヤさん。

韓流アイドルや、韓国料理屋のイケメン、人力車の若い男子に
惹かれ、嘘をつき、熱狂し、裁かれ、距離を置き、また追いかけるアヤさん。

電車で痴漢にあう、アヤさん。

冬に心のひだをかき分け見つけた、怒りに震える自分の本心に、
「私は、私のために怒ることができるんだ」と安心して涙を流すアヤさん。

アヤさんが本能的に綴った言葉は、人の心を打つ文の芸だと思う。
怒りと憧れが幾重にも重なった1年の芸術。



こうやって自分の本心に貪欲に向き合う作業を怖がらず
面倒だと逃げもせず
怖いほどに猛進するエネルギーは
自分が好きでないと絶対に湧いてこないものだと思う。

正解のない、誰も褒めてくれないこの作業のことを
「時間がある奴の暇つぶしだ」と嘲笑するのは簡単。
「不幸自慢」だと思うひともいるのかもしれない。

でも自分の本心を探すことを止めることは
自分の幸せを他人に託してしまうことは、
もったいなくないか?

誰かのために尽くすよりも、自分のために尽くしたい。

#本
#読書
#少年アヤ

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