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駆け抜けた1ヶ月の、先にあったもの

こんなに注目される1ヶ月はあっただろうか。

いや、それは言い過ぎかもしれないが、とにかく人と接した1ヶ月だった。

今までは個人的な時間を大切にし、人とのお付き合いもそこそこの、忙しいけれど割とマイペースを保てる環境に居たこの数年だが、転じて人が好きな方々ばかりいる大所帯の中で働くという、近年いや人生で稀に見る環境に身を置いている。

あちらからお声をかけられたかと思えば、こちらから名前を呼ばれ、新しい用語が飛び交い、知らない世界の話を会議でふむふむと聞く。

未知の世界への冒険と言えばドラマティックだし聞こえはいいが、その実、緊張しきりの日々だった。

「shiosaiさんはまだ皆さんのお名前とお顔が一致しないから不安な部分もあるかもしれないけれど、皆さんはshiosaiさんのことをご存知なので、大丈夫!」

何が大丈夫やねん、とつっこむ心の余裕もなく、歓送迎会や初めての業務をこなしつつ、1ヶ月でひとり立ちにこぎつけ、ほっとひと息つきつつあった今週末。

「ちょっと、休息が必要かも…」

筋膜リリース&骨盤矯正でお世話になっている整骨院と、行く予定だったライブを泣く泣くキャンセルし、静かに部屋で横になりつつ今月を振り返る。

空調の整った広いオフィスと清潔なデスクで、お優しい方々に囲まれておしゃべりをしつつ、同僚の方のお取り寄せやお土産のお菓子などをいただく。

個性は皆さんあるけれど穏やかな方々に囲まれて、無理のないペースで進んでゆく業務。

えっ、何一つ文句のつけどころのないホワイト企業やん…ってその通りなのですが、だからこそこんなにもへとへとになっている自分を煩わしくも感じる。

「どんな環境でも、慣れるまで時間はかかるよ」と母の言葉を思い出し、励みにしながら過ごした1ヶ月だったが、次の1ヶ月はもっと皆さんに馴染んで、健やかに楽しく過ごせることを祈る週末。


そんななか、人生で初めて、とうもろこしを茹でた。

北海道からお取り寄せの穫れたての「ピュアホワイト」を職場のお隣りさんからいただき、ようやくゆっくり食せるタイミングが来たわけだ。

エアコンを消し、換気扇をつけ、ぐらりぐらりと深鍋の中で茹だりつつある薄皮を残したとうもろこしを見ていると、ふと、小さいころおばあちゃんちで見た光景が甦る。

初孫のために豪華な食卓をと用意してくれただけでなく、食の細かったかつての私を心配し、優しい甘みのさつまいもやとうもろこしを茹でてくれたおばあちゃん。

暑い中、扇風機だけつけた台所でお鍋と向かうおばあちゃんの背中からはいつも、逞しさと安心感と包容力を感じていた。

そうか、こんなにシンプルなことだったんだ。

孫の笑顔のためにと汗をかきながら、茹でたてのとうもろこしをお皿いっぱいに持ってきてくれたおばあちゃんの顔は、誇らしさで溢れていた。

その理由が、今ようやくなんとなく、体感できた。

これから味わうであろう美味しさと、広がる笑顔と会話への期待を、目の前のとうもろこしにこめる。

期待?いや、切実な願いに近い。

「美味しく茹だりますように。」

人生、このくらいシンプルでもいいのかも。

物に溢れ、情報が飛び交い、常に何かに追われているような焦燥感にさらされても、私たちの体はひとつ。

食べるもの、住むところ、着るもので自らを守り、整えてゆく。

そのひとつひとつの実感が、長年かけて人としての深みにつながるのではないかと、ようやく気付いた。

この歳になって、我を忘れるほど夢中でとうもろこしに齧り付くなんて思いもしなかったけど、茹でたてを一本ぺろりと食べてしまった、「ピュアホワイト」。

まだまだ体験したい、食べてみたい未知のものが沢山あるし、その先に広がるのが、人の笑顔であってほしいと、今心から思える。

昔の私なら、「そんな言葉はありきたりだ」と簡単に言い放っていたかもしれない。

けれど、実感のこもった言葉なら、ありきたりだろうが古くからの言い回しだろうが関係ない。

私が、そしてあなたが心から感じた全てを言い表しているのなら、私はその言葉を全肯定します。

気忙しく、noteをほとんど読めていなかった1ヶ月だけれど、またぼちぼち読み始めますね。

引き続き、どうぞよろしくお願いします!

あっという間に一本消えた


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