賛否両論?クセがすごすぎるミステリ小説10選
皆さん、普通のミステリ小説に満足していますか?
普通に人が死んで探偵が解決するタイプのミステリもいいが、もっとクセが欲しくないだろうか?
そんな皆さんに今回ご紹介したいのは、クセがすごいミステリだ。もしかしたら、某千鳥の某ノブさんが読んだら「クセがすごいんじゃ」っていうかも知れないようなミステリだ(言ってないです)。
ミステリの既成概念にとらわれないような、問題作のミステリ小説を紹介したい。
『ドグラ・マグラ』、『黒死館殺人事件』、『虚無への供物』、『匣の中の失楽』の四大奇書はプレミアム殿堂入りしているので除外しています。悪しからず。
『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』 / 麻耶雄嵩
トップバッターは麻耶雄嵩『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』だ。麻耶雄嵩という作家は、本格ミステリの常識を打ち破る作品を数多く発表している。『翼ある闇』も例外ではない。この小説が麻耶雄嵩のデビュー作なのだが、いきなり最後の事件というのはツッコミたくなるだろう。
この小説には木更津悠也とメルカトル鮎という2人の探偵が登場する。ストーリーだけでなく探偵のキャラもクセが強い。この二人が推理合戦を繰り広げるのだが、二転三転する推理合戦は三大奇書の『虚無への供物』を彷彿とさせる。中には、そんなのアリかよと思うような推理も登場する。そして、最後には全てをひっくり返すカタストロフィが待ち受ける。
この小説を楽しむには「密室で人が死ぬタイプのミステリ」や「見立てに沿って人が死ぬタイプのミステリ」などの本格ミステリを読んでおく必要がある。クセが強すぎて、普通の本格ミステリを読んだことがないと十分に楽しめないことが懸念される。既存の本格ミステリへのアンチテーゼになっているのが『翼ある闇』だ。
『夏と冬の奏鳴曲』 / 麻耶雄嵩
またまた麻耶雄嵩の小説。麻耶雄嵩の小説は大体が問題作なのだけれども、『夏と冬の奏鳴曲』は特に問題作だ。現代版日本三大奇書を選んだら間違いなくランクインするだろう。
作中を彩るキュビズムの衒学的な話といい、小説の構成といい、トリックの破茶滅茶具合といい、奇書に相応しい問題作。特に密室トリックは唖然とするしかなかった。こんなに呆気にとられた密室トリックは未だかつてなかった。
最後のカタルシスというか、今までの展開を完全にひっくり返すカタストロフィは必見。
『黒い仏』 / 殊能将之
殊能将之の代表作といえばどんでん返しで有名な『ハサミ男』だろう。だが、驚愕の展開では『黒い仏』も負けていない。衝撃度でいえば『ハサミ男』よりも大きいのではないだろうか。あまりの超絶展開ゆえに、本を壁に投げつけてしまう人がいるほどだ。
『黒い仏』のどこにクセがあるのかというと、中盤から明かされる真相に問題がある。普通のミステリでは起こらないことが起こるのだ。てか、普通のミステリだとやってはいけない。真相が明かされて、「この小説ミステリとして成立するのか?」と思いながらページを進めて行くと斜め上すぎる展開が待ち受けている。人によっては怒りそうな人もいそうだ。とにかく、斜め上すぎる展開とクセの強さは保証します。
『名探偵の掟』 / 東野圭吾
ミステリで有名な東野圭吾もクセが強いミステリを書いている。その小説が『名探偵の掟』だ。『名探偵の掟』は、ミステリ界隈の身内ネタみたいな内容だ。
ミステリは様式美や形式美を重んじるジャンルだ。クローズドサークルや密室殺人、ダイニングメッセージなどなど。そんな本格ミステリの形式を大胆に茶化して見せたのが『名探偵の掟』である。密室や見立て殺人などのミステリの「お約束」にどんどん切り込んでパロディ化しているのだ。東野圭吾先生ここまでやっていいんですか?と読者の側が心配になってしまう。自虐ネタやブラックユーモアが面白くて、読んでいると結構笑ってしまうので電車で読むのは気をつけて。
『コズミック 世紀末探偵神話』 / 清涼院流水
本格ミステリ史上、最もバッシングを受けたと言われるのが清涼院流水の『コズミック』だ。メフィスト賞がイロモノ作品のための賞と言われるようになった原因でもある。1200の密室で1200人が殺されるという時点で雲行きが怪しい。1200の密室とか、密室のインフレがすごい。登場する探偵も、名探偵をも超越したメタ探偵・九十九十九とあってクセが強い。
発表当初から賛否両論が巻き起こったメフィスト賞最大の問題作を読んでみるのはどうだろうか。
『ディスコ探偵水曜日』 / 舞城王太郎
純文学のフィールドでも活躍している舞城王太郎の問題作が『ディスコ探偵水曜日』だ。この小説も現代版日本三大奇書を選ぶなら間違いなくランクインするだろう。その内容はとにかく破天荒の一言に尽きる。後半にいくにつれて既存の物理法則が破壊され、壮大なスケールの話になっていく。
『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』 / 早坂吝
世にも珍しいタイトル当てのミステリが早坂吝の『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』だ。「タイトルが何か当てるミステリなんてクセが強いな」と思うかもしれないが、問題はそこではない。終盤にある事実が明かされるのだが、それを知ってしまうとタイトル当てとかどうでも良くなってしまうのだ。当たり前すぎる前提が崩れる瞬間は呆気にとられる。
『虹の歯ブラシ 上木らいち発散』 / 早坂吝
こちらも早坂吝の小説。連作ミステリの体裁をとった小説だ。連作ミステリというと最後の短編で全ての話が一つにまとまっていくのを想像すると思うが、『虹の歯ブラシ』では斜め上すぎる方法で全ての短編を一つに繋げてしまう。クセが強すぎる技法は圧巻だ。
『最後のトリック』 / 深水黎一郎
ミステリといえば犯人当てだ。読者の意表を突くために色んなタイプの犯人が描かれてきた。全員が犯人、助手が犯人、探偵が犯人などなど。『最後のトリック』が挑戦しているのは「読者が犯人」という意外すぎる犯人像だ。読み終わった時には、「その手があったか!」と唸らされるはず。
『レプリカたちの夜』 / 一條次郎
新潮ミステリー大賞を受賞した小説なのだが、この小説がミステリかどうか考えると非常に怪しい。動物のレプリカ工場で動くシロクマを見かけた主人公は混沌と不条理の世界に迷い込む。この小説の世界観は映画で例えるとデヴィッド・リンチに近い。『マルホランド・ドライブ』のような摩訶不思議な世界観を楽しみたい人はぜひ読んでみて。
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