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macurocuo
【SS】ピロートーク(658文字)
思いきり愛し合ったあとは、セミダブルベッドの上で夫にくっついて、とりとめもない話をすることが多い。
心地よい疲労感とともに眠りにつくまでの間、ぽつりぽつりと交わす会話が好きだ。
今日の話題は、昔話。
「私ね、小さいときおばあちゃん家に行くのが怖かったの。」
「ふーん、なんで?」
「寝室の天井の木目が顔に見えることってない?あれが怖くて。夜は絶対仰向けで寝ないようにしてた。朝起きて天井を見ちゃったらホラーだもん。」
「ああ、それ僕もあったな。『シミュラクラ現象』って言うらしいよ。人間の頭は3つの点や線が逆三角のかたちになったものを顔だと認識しちゃうんだって。」
知的な夫は何でも知っている。
たまに自分が物を知らなさ過ぎて恥ずかしくなる。
「あなたは怖くなかったの?」
「うーん、どちらかと言えば面白いと思ってたかな。大通り沿いを歩いていると色んな車が通るでしょ。車にも、色んな顔があるんだよね。スポーツカーは釣り目でちょっと性格がきつそうだな、とか、ライトが丸い車はびっくりしてるみたいで可愛いな、とか考えてた。」
「ふふ、あなたも結構変な子供だったのね。」
「子供なんてみんなそんなもんじゃないのかなあ。」
ふだん隙がない夫の意外な子供時代を思い浮かべて頬が緩む。
また愛しさがこみあげてきて、ちょっと幼さが残る夫の顔を見つめた。
「ね、もう一回、シない?」
「いいけど、、、どこ見てるの。」
「なによ。私がひとの目をみて話すタイプって知ってるでしょう。」
「いや、君が見てるのはその、、、なんていうか。」
「僕の乳首だよ。」
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