見出し画像

【SS】トイレの時間(1066文字)

バッチィカン市国は世界最小の国ながら、世界最大の尿の輸出国である。
国民がトイレに行く回数が全世界平均の約50倍という驚きの頻尿国であるためだ。

環境破壊を食い止めるために新たなエネルギー源の開発が急がれ、アンモニアは主要なエネルギー源のひとつとなった。

通常はハーバーボッシュ法で生成した気体のアンモニアを液化して輸送するのだが、バッチィカン市国は尿の状態で輸出し、輸入国でアンモニアを抽出するのだ。
バッチィカン市国民の尿に含まれる単位あたりアンモニア量が飛びぬけて多いため、これが可能になる。
彼らの尿は高濃度尿と呼ばれている。

バッチィカン市国は周辺国を属国化した上で、頻尿化・高濃度化のノウハウを伝授した。
そして、Organization of the Pee Exporting Countries(尿輸出国機構)、通称OPECを結成した。
バッチィカン市国を始めとする加盟国が、尿価格の調整を行い、国際尿市場を支配することとなったのだ。

ところがどっこい。

その後、かの大国アメリカにてシュール革命なるものが起こり、米国民の尿に含まれるアンモニアの高濃度化が進んだ。
高濃度尿の増産により、国際尿市場の価格は急落。

OPECはあわてて減産に合意したが、米国での技術革新が進んだ以上、人口で圧倒的に劣るOPECの影響力はもはや無いに等しい。
彼らの権威は地に落ちたのだ。

はたしてこれは悲劇なのだろうか?

バッチィカン市国およびその属国の人びとは、1日に約300回トイレに行き、あの無機質な壁を見つめ、流れ出る液体を見下ろしていた。
国家主導で尿による国益増大のプロジェクトが進められてから、たしかに国は豊かになった。
引き換えに、家族の会話は減り、恋人同士のロマンチックな時間は失われた。

米国に勝ち目はないと踏んだOPECは解散し、プロジェクトは中止となった。
各国はまた独自の国益増強策を考えねばなるまい。

しかし今、国民たちはほっと胸をなでおろしている。
愛する人と過ごす時間が増えただけでない。
国中を通るパイプラインから漏れ出す匂いに頭を悩ませる必要はもう、なくなったのだ。

***

なんて妄想をしながら、下半身から流れるわずかな液体を眺めている。

布団に入った瞬間、さっきトイレに行ったばかりなのに何故かまた行きたくなる。
もう出し切ったと頭では分かっているのに、耐えきれずトイレに行く。
案の定、チョロリとしかでない。
この現象は一体何なんだろうな。

はーあ、明日も仕事だ。
さっさと寝るか。

ロシアとウクライナ、戦争にならなきゃいいけど。
平和が一番だよ。本当に。


テキトーなことを書きました。すべてはフィクションということで許してください。


いいなと思ったら応援しよう!

枝折(しおり)
最後まで目を通していただきありがとうございます。 スキ・フォロー・コメントなど頂けると飛んで喜びます!!

この記事が参加している募集