短編小説/俺はあなたの前で泣かない
2017年。小説書き始めて半年くらいの頃に書いたものです。小説投稿サイトのコンテストで大賞をいただきました。
1.それを悔し涙と言う
小さな指で懸命に連打していたリモコンを放り投げ、俺の隣にいたチビは台所にいる母親の元へ駆けていった。彼の真一文字に結ばれていた唇は、母親の太ももに抱きつくなり大きく開く。腹の底から絞り出すような泣き声がリビングまで響いてきた。
「カケル、また負けちゃったの?」
母親の問いかけに返事をすることもなく、どこから出ているのか分からないくらい