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漫画表現の「見えない余白」について
突然ですが、この漫画上手い!と思うのはどんな時ですか?
画力が高くて空間を認識しやすい、ストーリー構成が秀逸で納得できるなど上手いの捉え方は人それぞれだと思います。
見えない余白とは
筆者は「時間が経過する表現」「人情の機微に触れる表現」など、言葉を使わないで見せる漫画表現を上手いと感じます。
ここでは上記を「見えない余白」とします。
始まりはコミカライズの作品を最近読んで、今回のnoteを執筆したのがきっかけでした。原作が小説の場合、情景描写をひとつの漫画として絵で描き分けて昇華させるのはかなり難しいと思います。
最近読んだ漫画の中で、上手いと感じた作品をピックアップして紹介します。
死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから
こちらの作品は、少女漫画カテゴリーですが、読者に愛される健気な主人公(1人だけ人生2周目)、キャラクターの人情の機微など原作小説から漫画に変換する描き方がお上手だと感じました。特に主人公のオリアナが友人に寄り添うシーンに心打たれました。どうしてそんなことを聞くの?をセリフとして描くのではなく、答えが見つからないことを表情で伝えたり、「側にいるよ、大丈夫だよ」と心の中で唱えて肩を寄せ合うシーンがあります。
煙たい話
全部を言葉で説明できなくとも、理由がないことの証明にはならない。
ただ、言葉にできないだけで、名前のない関係を心地よいと感じているだけ。無くなるわけでもないし。
誰かを納得させるための適当な理由付けをしたら、次はもっと明確な言葉が欲しくなって怖くなる。これが自分にとっての当たり前なら、理由なんて要らないって割り切れたら苦しくないけど、の話。
言葉の扱い方や、機微を穿つような表現が素敵な作品です。
割れたカップを戻すには
BL作品のため、こちらは人を選ぶかもしれませんが、評価が4.8の理由に納得できました。時間がテーマの作品であり、時の扱い方が漫画表現として秀逸だと感じました。
今回ここで伝えたいのは、読む前にカテゴリーで判断するのではなく、一つの作品として漫画に触れていただきたいのです。大切な誰か、がいる方に読んでいただけたらと思います。
既知の未知化
漫画における「見えない余白」を作り出すために、「既知の未知化」をしているではないかと考えます。
いかに受け手の「知らなかった」を引き出し、コミュニケーションの可能性や余地を作り出していくこと。それが「未知化」です。
例えば、時間について「時は経過するもの」だというのは皆さんご存知ですよね。
ですが、時間は目で見えないものです。
人には感情がありますが、感情そのものが具現化することはないと同義ですね。つまり、時間や感情を表現したい!デザインしたい!と考えた時、いかに受け手の頭の中にイメージを喚起させるかが重要になってきます。
時間の経過を伝えるために、モチーフや情報を追加したり、感情を伝えるために人物の表情を描く。どんどん想像して、未知化する。
漫画というコミュニケーションツールを用いて、読者に思考の余地を与えているのではないか?と考えたわけです。
さいごに
noteで面白い投稿企画があるなと、応募してみました。
"ハマった沼を語らせて"を広義として捉え、今回は漫画にハマった魅力について執筆しました。言語化することができてとても楽しかったです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。