裸でコンドームとカップ麺を持ち運ぶカップル
レジ袋有料化による弊害か、あるいは恩恵か。
ぼくはその日、カップ麺の上にコンドームを載せて歩く男性を見た。
隣には、パートナーであろう女性が男性の袖を掴んで共に歩いていた。
蒸し暑い土曜の夜だった。
ぼくは、友人と軽く飲んだ帰り道、コンビニに寄ってクーリッシュを買った。
今夏、セブンイレブンの紋章がバーコードあたりに貼られたクーリッシュを片手に、自宅までの帰り道を歩くのが、夏の楽しみの一つとなった。
これは、レジ袋有料化の恩恵の一つだと思う。
レジ袋有料化前は、勿体ないくらい小さく収まったクーリッシュをレジ袋の中に入れ、急ぎ足で帰って、家でアイスを楽しんでいた。
レジ袋有料化後は、単品の買い物はシール貼付で済まされることも多く、歩きながらアイスを楽しむという、新しい夏の楽しみを再発見することができた(幼少期を思い出してノスタルジックな気分にもなる)。
さて、土曜夜の帰り道の話に戻る。
ぼくはその日も同じように、クーリッシュを買ってコンビニを出た。
キャップをゴミ箱に捨て、クーリッシュを気持ちいレベルでチューチューするために、手のひらの温もりと外気温で、ほどよく溶けるまで待っていた。
その時、隣を歩く男性が両手で何かを持ち運んでいることにふと気がついた。
カップ麺を両手で持ち、その上に、0.02と書かれた黒い箱。
カップ麺の上に、コンドームが載っていた。
その光景を見た瞬間、
「すごいなあ」という感想と、「いいなあ」という羨ましい気持ちが、ちょうど半分半分、50%50%の割合で、心の中を占めた。
男性は、「これからぼくたち、やるんすよ。とはいえその前に、ちょっとお互いお腹空いてるんで、二人で蒙古タンメン中本いっちゃうんすよ」みたいな、中途半端な態度ではなかった。
むしろ、「今までもずっとこうやって持ち運んでいました」という威厳に充ち満ちた態度だった。
隣を歩く女性も、「ケチってレジ袋断らなきゃよかった」という後悔をする様子は全くなく、男性が何も持ち運んでいないが如く、男性の袖を少し引っ張っては、そのふたりの中で慣習となっているような独特の掛け合い(ふたりの中の”ノリ”)をしていた。
「いいなあ」という羨ましい気持ちが、「すごいなあ」を少し上回った。
甘い香りのバニラが少し、手まで零れていた。
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