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書評:プーシキン『大尉の娘』

数多のロシアの文豪に愛されるプーシキンの魅力とは?

今回ご紹介するのは、ロシア文学よりプーシキン『太尉の娘』。

プーシキンは、数多のロシアの文豪に敬愛される詩人・作家である。ドストエフスキーを始め、登場人物達がプーシキンを語るといったシーンは本当に沢山目にすることができる。

恐らく、ロシア人(特に民衆)の「精神性」を高らかに謳い上げ、ロシア人の「誇り」を表現したのがプーシキンだというのが、文豪達の一致する見解だったのかもしれない。

では『太尉の娘』について。

本作は、史実である「プガチョフの叛乱」を題材に、主人公ピョートル・アンドレーイチ・グリニョフの数奇な運命を描いた物語である。

流石はロシア文学、人間模様の描写が秀逸だと思った。

・主人公の忠義・正義感・愛
・プガチョフの驕り・快活さ、それに反する不安・焦燥
・仇敵シヴァーブリンの嫉妬・虚勢・卑屈さ

等々。

文豪らによるプーシキンへの多くの賛美が示すように、人間に、民衆に、そしてその生活に立脚した作品だと思われる。

しかし何故プーシキンがこれほどまでにロシアの文豪を惹きつけるのだろうか。その答えは私の中でも明確ではない。

恐らくは、厳格な帝政、厳寒の環境、染み付いた農奴制、西欧への劣等感、中央アジアを巡るモンゴルそれからトルコの脅威など、数多の厳しさが逆巻く環境にありながら、およそそこに息づく人々の魂に焦点が当てられてこなかったロシアにおいて、民衆の存在、その生活、その魂を高らかに宣揚したのがプーシキンだったからではないかと考えている。

プーシキンを読む時、恐らくはそれを読んだ彼以降のロシア人達が、「あぁ、私達がここにいる!」と高揚したのではなかろうかと、想像が膨らむ(ただこのことをより説得力を持って発信するには、プーシキン以前のロシア文学にも精通していかなければならないだろう。それは私の課題だ)。

短編で読みやすく、また読み応えもあるので、一般に難しいイメージのあるロシア文学の入り口としては、プーシキンなどから始めてみるのも一つの手かもしれない。

読了難易度:★☆☆☆☆
いよいよ本格的にロシア文学攻めてる感ある度:★★★★☆
初めのうちは「プーシキン」か「プーキシン」か混乱するのでそういう時は「シーチキン」を思い出して最後が「キン」だと覚えれば良い度:★★★★☆
トータルオススメ度:★★★★☆

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