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幽刃の軌跡 #42

第42話「王の決断」

弁景は、自らの心の内で感じていた。これ以上、真男を拘束するのはもはや不可能だと――。

外苑は極度の混乱状態に陥り、兵士たちは互いに入り乱れ、もはや誰が味方で誰が敵か、分からぬほどの混沌に包まれていた。緊張感は最高潮に達し、戦いは次の局面を迎えようとしていた。


突如として、宮殿の扉が開かれ、一人の男が静かに外苑へと歩み出た。その姿は神々しく、同時に厳格でもあった。彼の登場は、戦場にいるすべての者たちに圧倒的な存在感を示し、混乱の中でもその声が響いた。


「皆の者!!!!よく聞け!!!!!」

真彦であった。


「この戦いは無意味だ!!!!今すぐ全軍、手を止めよ!!!!」


兵士たちは一瞬にして戦いを止め、その声に耳を傾けた。真彦の言葉は力強く、迷いのないものであった。そして、彼は一息つき、さらに大きな声で言葉を続けた。


「こちらを見ろ!!!!!!!!!!!!」


真彦の言葉と同時に、外苑の各地で異様なオーラが放たれた。それは那須昇治、綾香、そして明清であった。彼らはそれぞれが霊域の力を解放し、兵士たちを牽制していた。その威圧感は、戦いに身を投じていた全員を一瞬で沈黙させた。


全員が真彦の方向、すなわち宮殿の前へと視線を向ける。そこには、国王平場王が立っていた。


「皆!!!わしの話を聞け!!!!」


平場王の声が響き渡る。その威厳に満ちた姿に、誰一人として口を開く者はいなかった。


「この度の真の反逆者は……一番隊、隊長である平朝光である!!!!」


その言葉が告げられた瞬間、今まで外苑に渦巻いていた混乱は一転して、静けさが訪れた。誰もがその場に立ちすくみ、動きを止めていた。国王の口から語られる真実に驚愕し、誰一人として言葉を発せなかった。


続けて、国王はこれまでの経緯を静かに、だが力強く語り始めた。真男すらも、この突然の展開には驚きを隠せず、ただ黙って耳を傾けていた。


「よって……この度の不祥事は、すべてわしの責任である……」

国王の声は徐々に低くなり、その言葉の一つ一つが重く響く。


「今、この場には各隊長、影天部隊、そして各隊員たちが揃っている……」


そう言いながら、国王は一瞬だけ目を閉じた。そして、再び静かに呼吸を整えると、決意を込めた声で言った。


「今ここで、わしの首でこの場を納める!!!!以後、この件について何人たりとも口出しは許さん!!!!」


その言葉が場に響いた瞬間、全員が凍りついたかのように沈黙した。国王は自身の命をもってこの騒乱を終わらせる決断をしたのだ。誰一人、反論する者はいなかった。


平場王は、宮殿の中央に立ち、全員の視線を受け止めながら、静かにこう言い残した。


「また……総大将である真男と、その反乱に加担した者は、四国への島流しとする!!!!異論のある者は、この場で反論せよ!!!!」


国王の覚悟は、その場にいる全ての者に重く圧し掛かり、誰も口を開くことができなかった。真男ですら、その場で黙り込んでいた。


真彦はその様子を見つめながら、静かに涙を流していた。


「国王……本当に、それで良いのですか……」


真彦は、胸の内で問いかけたが、国王は何も言わず、ただ彼に向かって静かにうなずいた。


「……ああ、真彦……あとは頼んだ……」


そして、真彦はその言葉を最後に、涙をぬぐい、覚悟を決めて剣を抜いた。


「国王!!」


その叫びと共に、真彦は剣を振り下ろし、国王の首が静かに地面に落ちた。全員の前で、平場王はその命を絶ったのであった。


その後、影天部隊の隊長である熊谷景虎、副官の篠原景秋、元隊長の奥洲弁景によって、より高度な封印術が施され、反逆者である平真男は四国へと島流しとなった。

真男は怒りの声を上げながら、激しく抵抗した。


「貴様らのやったことに対して、全く同意しておらん!!!!必ず呪い殺してやる!!!!」


怒号を叫びながら、真男は無理やり四国へ送られていった。真男に加担した平琳守、平茂道、そして平琴太も同様に島流しとなり、彼らの反乱は終わりを告げた。


その後、真彦は平場王の意志を継ぎ、新たな王として即位する。そして、平場国は新たな名を得ることとなった。真彦は、全国民に向けて誓いの言葉を発する。


「皆の者!!!我ら勇敢な平家の王として、そして安定した国家を築くため、平場国を改め、平安国とする!!!!」


これが「平家の乱」として後に語り継がれる戦いの終結であり、平場国編の幕引きであった。



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