阿山慎耶Shinya_Ayama

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最近の記事

幽人の軌跡 #34

「潜伏の裏に潜む真実」第33話 時は遡る……影天部隊本拠地、平場宮殿地下室。 影天部隊長、熊谷景虎(くまがい かげとら)の厳しい声が響く。  「今回のメンバー構成を発表する。東部四軍には篠原副官を含めた4名が潜伏する。各自、潜伏先は副官に任せる。そして、私と共に西軍四軍に入る4名は今から打合せを行う。この任務は今後の平場国の命運を握るやもしれん。心してかかれ!」 別室で尊を含めた3名と景虎が対面する。 景虎「今回の重要任務だが、最も重要な潜伏先である七番隊には……那

    • 幽刃の軌跡 #32

      第32話「闇に潜む影」 平場国東部一番隊駐屯地 東部の朝は静かで、どこか張り詰めた空気が漂っていた。一番隊の駐屯地内では、整然とした統制が行き届いており、全員が規律正しく行動している。 影天部隊の琴太は、駐屯地内を歩きながら、心の中で考えていた。 「やはり、東部部隊に動きはなさそうだ。特にこの一番隊は統制が軍内でも随一だ。平家家系内でもエリート出身の朝光様のまじめで実直さが軍隊に統一されている感じだ...」 琴太が見上げる先に、一番隊長の朝光が、兵士たちを前にして厳か

      • 幽刃の軌跡 #31

        第31話: 「影天の密命」 平場国西部での軍国会議が終わった直後、総大将は静かに席を立ち、影天部隊の隊員たちを招き入れた。会議場は重厚な沈黙に包まれ、闇に紛れるように姿を現したのは、影天部隊の精鋭たち。黒装束に身を包み、冷徹な表情で総大将を見つめる彼らの姿は、まさに影に生きる者たちそのものであった。 総大将: 「見ておったか…どうや? あの中に怪しい人間はいるか?」 影天部隊隊員1: 「いいえ、まだ明確にはわかりません。しかし、やはり七番隊長の吉常が…」 影天部隊

        • 幽刃の軌跡 #30

          第30話: 軍国会議と密告の影 平場国軍の本陣。厳格な雰囲気の中、八人の隊長たちがそれぞれの席に着き、総大将である平真男を見据えている。会議の開始を告げる鐘の音が鳴り響く。 総大将・平真男は険しい表情で口を開いた。 「皆の者、最近の大和国の動きが影天部隊より報告されている。彼らは戦力を着実に強化しており、国境での警備を強化せねばならん。」 真男の言葉に、隊長たちの間で緊張が走る。しかし、その静寂を破ったのは、七番隊長である牛若吉常だった。 牛若吉常(うしかわ よしつね

          幽刃の軌跡 #29

          29話 - 霊域家の運命と平家の内乱の影 平場国には三大名家が存在する。霊域家、平家、藤原家。それぞれが深い歴史と強力な霊域を持ち、国の中心を支えてきた。しかし、そのバランスが崩れ始めている。 霊域家は、かつて「霊域の元祖」と称され、国一つを支える力を持つ家系だった。だが、ここ半世紀にわたり、霊域家には男子が生まれておらず、霊域家の血筋は絶えようとしていた。現在、霊域家の最後の後継者は静香であり、その運命は彼女に委ねられている。 静香は藤原家の真彦と結婚し、二人の間に娘

          幽刃の軌跡 #28

          第28話 「平場国時代」 物語は20数年前に遡る――。 ここは、八洲の地にかつて存在した平場国(へいじょうこく)。今では平安国と呼ばれるこの地も、かつては平 政丸(たいらの まさまる)が王として君臨し、平 真男(たいらの まお)が左大臣兼軍の総大将として1万の兵を率いていた。 平場国軍は8つの部隊に分かれ、1番隊から8番隊まで、精鋭たちがそれぞれの役割を果たしていた。総勢1万の兵力は、八洲の地でも屈指の強さを誇っていたが、時代の波と内外の敵による圧力が次第にその力を削っ

          幽刃の軌跡 #27

          第27話「平安国将軍!!」 明菜が振り向くと、瀬戸内海上から突如として猛スピードで現れた一人の剣士が、刀を構えたまま彼女に迫ってきていた。その男は四国軍のエース、平琴太(たいらの ことた)。金色に輝くその刃は、まるで空気を切り裂くように彼女を狙っていた。 「明菜殿!!!危ない!!!!」 那須がその動きを察知したが、反応が遅すぎた。明菜自身もその動きに気づいたが、既に避ける間もなく、琴太の太刀が彼女に振り下ろされる。間一髪――その瞬間、閃光のような何かが二人の間に現れた。

          幽刃の軌跡 #26

          第26話「天狗捕縛」 霊域解放…白狐顕現(びゃっこけいげん)! 封式…稲荷天縛(いなりてんばく)!! 空気が張り詰め、一瞬で場の雰囲気が変わった。天から白い光が舞い降り、まるで神の威光が地上に降臨したかのように、その場にいた者すべてがその光に引き寄せられた。美しくも荘厳な声が響く先に、白い衣を纏った一人の女性が静かに立っていた。 彼女は冷然たる眼差しで天狗を見据え、その姿はまるでこの世の全てを見透かすかのような威厳を放っていた。 「母上…」明菜はその姿を見て、驚きと敬

          幽刃の軌跡 #25

          第25話「瀬戸内の静寂と霊域の叫び」 静かな海の上、四国軍の最後尾に陣を敷く総帥・平 真男(たいらの まお)は、戦局を見つめながら、海の向こうに広がる平安の大地に目を凝らしていた。彼の隣には、四国軍のエースである平 琴太(たいらの ことた)が立ち、静かに指示を待っている。風が船を揺らし、帆の音が遠くから聞こえてくる。 真男「相当な戦力を平安王は隠しておったということやな。あんな妖力使いは久方ぶりに見たわ。土佐族の小童二人も相当な手練れだと思っておったが、そろそろ出番ではな

          幽刃の軌跡 #24

          第24話「妖力の支配」 夜叉ノ闇が解放され、天狗の妖力が戦場を覆い尽くす。竜馬はその圧倒的な力に圧倒され、ほとんど防戦一方となっている。 竜馬「…これが妖力っちゅうやつか…こんなもん、防げるはずないわ。何も見えん…くそっ!」 竜馬は必死に天狗の攻撃を防ぐが、攻撃の手は止まらない。天狗の凶悪な笑い声が戦場に響き渡る。 天狗「ほう、弐式憑依を使ったお前でもこれが限界か。笑えるな!どうだ、小僧、わしの力を目の当たりにして…恐ろしかろう?」 竜馬は汗をかきながら防御を続ける

          幽刃の軌跡 #23

          第23話「暴走する天狗」 天狗に憑依された朱留は、凄まじいエネルギーを解き放ちながら、竜馬に次々と攻撃を仕掛ける。朱留の身体を支配する天狗は、まるで自分の新しい力を試すかのように、竜馬を翻弄していた。 天狗「お前…弱いなぁ、クククッ。」 天狗の声は、朱留の口から冷たく響く。竜馬はその圧倒的な力に苦しめられていた。弐式憑依の状態でも、防戦一方になってしまう。 竜馬「…あかん、こいつの斬撃、弾くのが精いっぱいじゃ…」 竜馬は歯を食いしばり、天狗の攻撃に必死に耐えていたが

          幽刃の軌跡 #22

          第22話「天狗の意志」 朱留の身体が崩れかけ、意識が薄れた瞬間、心の奥底で交わした天狗との契約が現実のものとなる。朱留の身体がピクリと反応し、空気が一変した。霊域とは異なる、凄まじいエネルギーが身体中に広がり、黒い煙のようなオーラが朱留を覆い始める。 天狗「ククク…これで久しぶりにこの世に出てこれたわ!ようやくこの“シャバ”の空気を味わえる!」 天狗の声は朱留の身体を通じて響き渡り、周囲を包む。霊域の力とは異なる、その圧倒的な存在感に場の空気が一瞬で張り詰めた。 竜馬

          幽刃の軌跡 #21

          第21話「天狗との対話」 朱留の意識は闇の中を漂っている。全身に感じていた痛みも、徐々に薄れ、意識すら遠ざかっていく。虚無の中、朱留はただ終わりを受け入れようとしていた。しかし、この暗闇は現実ではなく、朱留の心の中に広がるものだった。 朱留「もう…終わりか…。これで、楽になるんだろうか…。俺は、帰りたいんだよ…」 朱留の心の中に、不意に響く低い声。冷ややかで、不気味な響きを持つ声が、心の奥底から沸き上がるように響く。 天狗「終わるのか…弱いのう。お前はこのまま、何もせ

          幽刃の軌跡 #20

          第20話: 絶望感 竜馬が「霊域解放・弐式・憑依」を発動すると、今まで刀に宿っていた土佐犬の精霊が竜馬の体に憑依し、その瞬間、竜馬の全身が霊域のオーラに包まれた。彼の筋肉がさらに膨れ上がり、目には土佐犬の獰猛な光が宿る。その圧倒的な力とスピードの上昇は、周囲の空気さえも振動させ、戦場の空気が重々しく変わった。 朱留は立ち尽くし、その膨大な霊域の波動に息を呑んだ。 竜馬の目が朱留に向けられると、瞬く間に距離を詰め、無数の斬撃を放ち始めた。斬撃は鋭く、風を切り裂く音と共に空

          幽刃の軌跡 #19

          第19話: 竜馬の霊域解放「弐式・憑依」 戦場に張り詰めた緊張感が一瞬で変わる。竜馬が静かに呟いた「弐式…憑依」の言葉とともに、その霊域が一気に膨れ上がり、まるで嵐が巻き起こったかのように空気が変わった。 竜馬の体が光りに包まれ、まるで闘刀の牙そのものが彼の肉体に宿ったかのようだった。その姿は人間離れし、圧倒的な威圧感を漂わせている。 朱留はその霊域の膨大さに言葉を失う。「なんだ・・・この・・・膨大な量の霊域は・・・」唖然としながらも、全身に感じる圧力は計り知れない。

          幽刃の軌跡 #18

          第18話: 逆転への兆し 戦場は、激しい攻防が繰り広げられていた。朱留と竜馬の戦いは互いに霊域を駆使し、一瞬の油断も許さない。一方で、大森、那須、明菜の三者の戦いも、戦場の中心で壮絶な戦いを繰り広げていた。 竜馬と朱留は、互いの霊域を激しくぶつけ合っていたが、その戦いには妙な均衡が保たれていた。竜馬は冷静そのもので、どこか朱留との戦いを楽しむかのように振る舞っている。しかし、その顔に笑みはない。ただ冷徹な眼差しで朱留を見据え、その動きを完璧に捉えていた。 朱留は全力で竜