阿山慎耶Shinya_Ayama

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最近の記事

幽刃の軌跡 #58

第58話:「動乱の予兆」 翌朝―― 平安国宮殿の大会議室には、平安国軍の軍隊長たちが各地から招集されていた。 会議室の正面では、玉座に座る平安王・藤原真彦、その右隣に参謀総長・熊谷景虎、左隣には新たに篠原景秋の後任として任命された藤原明清が控えている。彼らを囲むように配置された左右の座席には、軍隊長たちが向かい合う形で座っていた。 右側最前には、平安国将軍であり第一軍軍隊長の源尊。その向かいには、第二軍軍隊長の飯伏綾人。続いて第三軍軍隊長・宇都宮影治、第四軍軍隊長・那

    • 幽刃の軌跡 #57

      第57話:交錯する世界、深化する力 朱留は京都の実家に帰宅すると、明日には香川県高松市に戻ることを両親に伝えた。家族で囲む最後の夕食は、彼の大好物である母の京おでんだった。湯気が立ち上る鍋を囲み、家族の温かい笑い声とともに、日本酒と共に味わうおでんの味は、彼にとって格別だった。家族との時間を大切に感じながらも、朱留の心はどこか落ち着かなかった。 翌朝早々に実家を後にした朱留は、3時間ほどかけて高松市の自宅に戻った。長時間の運転で疲労が溜まっていた彼は、荷物を置くとすぐに温

      • 幽刃の軌跡 #56

        第56話:交差する世界 神戸市灘区、長峰霊園を後にした朱留は、京都の実家へと帰宅するとすぐにスマホを手に取った。 「真言密教、天狗、鞍馬寺か……」 次々と検索を続け、深夜になる頃には布団に潜り込んだまま、スマホを握りしめて眠りについていた。 翌朝、朝日が寝室を明るく照らし、目を覚ますと時計の針はすでに9時を指していた。 リビングでは母が用意した朝食が並び、家族3人がにテーブルを囲む。温かな空間の中、朱留は一人で鞍馬寺へ向かうことを決めた。父には別の予定があるらしい。

        • 幽刃の軌跡 #55

          第55話:真夜中家、祖父との対話 朱留は京都から、祖父のお墓がある六甲山麓の霊園へと向けて車を走らせていた。助手席には父の守(まもる)、後部座席には母の真理子(まりこ)が座り、三人だけにしては広すぎるワンボックスカーでゆったりと進む。もともとこの車は朱留の姉のために購入されたものだった。姉は東京に嫁ぎ、今では年に三度ほどしか帰省しないが、最近孫も生まれて一家で帰省することが多くなったため、両親はいつでもみんなで移動できるよう、この車を選んだらしい。守は「俺も孫の顔が見たいか

          幽刃の軌跡 #54

          第54話「京の記憶、祖父の残像」 朱留は数時間の眠りから目を覚ました。天井をぼんやりと見つめ、意識が現実に戻ってくるのを待ちながら、ふと幼少期の記憶が脳裏をよぎる。そういえば、父親から祖父の話を聞いたことがあった。昔、神戸で祖父は何かの研究員をしていたらしい。その研究内容を具体的に知ることはなかったが、今こうして異世界に関わる自分の立場を考えると、もしかしたらあれも関係しているのではないか――そんな気がしてならない。魔王坊が自分を宿主に選んだのにも、何かしらの理由がありそう

          幽刃の軌跡 #53

          第53話「名を持つモノたち」 朱留の目の前で、天狗が悶え苦しみ、震える体が静まりかけたとき、傍らにひとりの男が姿を現した。 その男は、白い肌に切れ長の目を持つ美しい顔立ちの青年。涼やかな視線で朱留を見つめ、かすかな微笑を浮かべていた。 「あなたは一体……」朱留はその男を見つめ、疑問を飲み込むように言葉を漏らした。 男は朱留の様子を優しい表情で見つめ、穏やかに口を開く。「君が彼をここまで追い込むとは……よくぞ、恐怖や困惑を乗り越え、耐え抜いたね」 言葉をかみしめながら

          幽刃の軌跡 #52

          第52話: 鞍馬寺 本殿地下「魔王堂」 翌朝、朱留が眠気をこすりながら本堂に現れると、牛若と弁景は既に準備を整え、彼の到着を待っていた。 「よく寝れたか?」牛若が問いかける。 「はい、おかげさまで」と朱留は返事をする。 牛若が頷き、「それでは、ついてこい」と言い、本堂の端にある地下へと続く階段を下り始めた。 地下は暗闇に包まれ、窓は無く、ただ所々に置かれた灯篭だけがほのかな光を放っている。階段を降りた先には広い空間が広がっていた。空気はひんやりと冷たく、静寂に包まれたそ

          幽刃の軌跡 #51

          第51話「隠れし英雄の教え」 藤原皇后の背後の扉が静かに開く。影のように忍び寄るその男の登場に、静華が声をかけた。 「終わりましたか……」 その問いに、男が深く頷く。 「はい。平安国が無事に四国軍の侵攻を阻止しました。流石、源尊です。彼は本当に成長しました。」 静華は一瞬うつむき、言葉を探すようにしてから口を開いた。 「……あなた様が軍に戻れば、平安国はすぐにでも西国統一が叶うと思いますが……」 男は静かながらも鋭い眼差しを向けて答えた。 「いえ、あれ以来、私

          幽刃の軌跡 #50

          第50話「封じられし妖力の継承者」 時は少し遡る・・・ 瀬戸内の乱にて、朱留は霊域静華(れいいきしずか)により捕らえられ、王都近郊の山岳部にある暗く湿った牢屋に幽閉されていた。冷たい鉄の封印によって手足を固められ、意識が戻りかけた朱留は、ぼんやりとした視界の中で暗闇を見つめ、呟いた。 「ここは・・・どこだ・・・」 返事はない。だが牢の外には、一人の女性が座っていた。月明かりが差し込み、静かな白い光が彼女の髪に煌めいている。その美しさと気高さには威厳があり、ただ者でない

          幽刃の軌跡 #49

          49話:「瀬戸内の乱、終焉」 平真男の敗北が各戦場に伝わると、四国軍の戦意は一気に崩れ去った。兵士たちは真男の不在に動揺し、誰もが戦いを続ける意味を失ったかのように次々と手を止める。同じ頃、淡島南部にも「四国軍敗退」の報が届いた。 「真男様が……」 琳守は絶望に沈むように呟く。 「真男様のいない今、この戦に何の意味がある?」と、茂道も戦況を悟る。 一方で、那須昇治と篠原景秋もこの知らせを受け、周囲に戦の終結を告げた。平安軍が四国軍に終戦の通達をするなか、四国の各部隊

          幽刃の軌跡 #48

          第48話「決戦の刃、神々の領域へ」 四国軍の優勢は揺るぎなく、その勢いの中心には四国軍総帥・平真男の姿があった。この圧倒的な流れを覆すべく、平安の王、藤原真彦は自らの側近、熊谷景虎を従え、戦場へと降り立つ。 一方で、平安軍の将軍・源尊と四国軍の猛将・平琴太の対決も、熾烈を極める。その戦場には緊張が張り詰め、互いの剣が火花を散らしていた。 源尊は琴太の放つ讃岐流「極意金剛坊」からの無尽蔵の斬撃を巧みにかわし、心の中で静かに決意する。 「やるしかない…!」源尊の目に闘志の火

          幽刃の軌跡 #47

          第47話「四国軍総帥の真髄!!」 戦場に緊張が走る中、真男はその場を圧倒する大声で叫ぶ。 真男:「もうええやろ!!遊びは終わりや!!!」 その言葉は雷のように響き渡り、彼の姿が一瞬で変わる。彼は両腕を広げ、天地を揺るがすように力を解放する。 真男:「霊域解放……真魂(しんごん)!!水界明王(すいかいみょうおう)!!!!」 すると、空気が急激に重くなり、真男の周囲には冷たく青い光が集まり始めた。彼は両手を合わせ、力強く真言を唱え始める。 真男:「ノウマク サマンダ 

          幽刃の軌跡 #46

          第46話:「四国の咆哮、平真男の猛攻」 四国軍総帥である平 真男が、ついに平安国の要所である備前港へ上陸した。艶やかな深い青の甲冑を着た真男の姿が、静かな海風の中に現れると、彼に続いて四国軍の精鋭たちが次々と波打つように上陸し、平安国の防衛線を突破していく。彼らの勢いは止まることを知らず、真男の登場を合図に戦況は一気に四国軍へと傾き始めた。 真男「久しぶりの我が平場国よ!」 眼前に広がる平安国の大地を見据え、雄々しく吼えた。その声は嵐のように響き渡る。敵味方の兵士たちの

          幽刃の軌跡 #45

          第45話「渦巻湾の激闘と新たなる脅威」 同時刻、淡島南部にて―― 激しい戦いが渦巻く渦巻湾(うずまきわん)。平安国の第二軍隊員と第三軍隊員、総勢8千人が四国軍別動隊約2千人を海峡にて迎え撃っている。戦場の海は荒れ狂い、渦潮が渦を巻く中、激戦が繰り広げられていた。 平安国 第二軍隊員A「絶対に淡島上陸を許すな!! 飯伏軍隊長からの厳命だ!!!」 声を張り上げる隊員の言葉に応じるように、周囲の兵士たちが陣を固めていく。 第二軍隊員B「こんな激流の渦巻湾を選んでくるとは、

          幽刃の軌跡 #44

          第44話「将軍とエース」 平安国第二軍隊長、飯伏綾人と第三軍隊長、宇都宮影治の参戦によって、備前港での戦局は一気に動き始めた。平安国将軍・源尊と四国軍のエース・平琴太の戦いは、今や頂点を極めるほどの激闘となっていた。 尊「お前に一つ問いたい……。」 琴太「なんや?」 二人は刃を交えながら、互いの斬撃を躱し、鋭い目で相手の動きを見極め続ける。 尊「なぜ……今、この時に戦いを仕掛けた?お前たちの意図がわからん……。」 琴太は不敵な笑みを浮かべながら答える。 琴太「そ

          幽刃の軌跡 #43

          第43話 「備前港の死闘」 時は戻り・・・・現在! 平安国、備前港では「瀬戸内の乱」が激化していた。平安国と四国軍の激しい衝突が続く中、戦局は予断を許さない状況にあった。 中央では、平安国の将軍、源尊と、四国軍のエース平琴太が激しい刃の応酬を繰り広げていた。 琴太「いつぶりやろか。20年は経つか…平家がまだこの平安を納めてた頃やな。」 尊「その頃のことはもう関係ない…お前が今、平安に仇なす敵であることには変わらない。」 琴太「それはそうやな…。なら、本気でいかせて