幽刃の軌跡 #37
第37話「森羅万象の罠」
場面は平場宮殿会議室。
牛若と平琳守は、朝光と対峙している。静寂の中、空気は張り詰め、戦いの行方を左右する瞬間が迫っていた。
朝光は不敵に笑みを浮かべ、静かに口を開く。
朝光
「面白いものを見せてやろう…」
牛若はその表情に違和感を覚え、警戒を強める。次の瞬間、朝光は低い声で呟く。
朝光
「森羅万象……洗脳支配(ラバジェン・セべグロ)……」
その言葉と共に、朝光の瞳が鋭く光り、琳守は膝を崩して倒れる。驚愕する牛若は反射的に後方へ跳び、距離を取る。
牛若
「何だ……!? 何をした……?」
周囲を警戒しながら、朝光の異様な力を見極めようとする牛若。
場面:那須・茂道 VS 九国スパイ
那須と茂道は、九国のスパイと激しい戦いを繰り広げていたが、朝光の異変に気付く。那須は驚愕の表情を浮かべる。
那須
「なぜだ……奴が……九国の技を……!」
驚きつつも、戦わなければならない状況に直面している。
茂道は怒りに震え、朝光を睨む。
茂道
「貴様……! 全てを九国に捧げたのか……! 見損なったぞ、朝光!!」
茂道もまた、朝光の術に捕らえられたように倒れ込む。
場面:真彦・綾香・明清
真彦、藤原綾香、そして藤原明清も戦況を見守っていた。彼らも朝光の異様な力を感じ取り、焦りを覚える。
綾香
「まずい……何か……妙な感覚が……!」
明清はすぐさま霊域を解放する。
明清
「霊域解放!影縫の刃(かげぬいのやいば)!!」
影の刃が空間を裂き、朝光に向かって放たれる。空間には亀裂が走り、明清は戦況を一時的に有利に運んだように見えたが、朝光は微動だにせず、笑みを深める。
明清
「空間に亀裂を入れた。これで朝光の術は届かんだろう。」
真彦は明清の行動を称賛する。
真彦
「さすがだな、明清。」
再び牛若サイドへ
牛若は琳守が倒れたことに焦りつつ、朝光の目的を探ろうとする。
牛若
「朝光……何が目的だ……?」
朝光は不敵な笑みを浮かべた時・・・・
琳守が起き上がり、朝光を見つめている。何かが違う。その瞳には、かつての仲間としての信頼が宿っていない。牛若は焦りを抑え、落ち着いて朝光に問いかける。
「朝光……なにをした?」
その問いに、朝光はニヤリと笑う。彼の視線は冷たく、何もかもを見透かしているかのようだった。
「琳守殿、どうやら牛若が本性を出しおったのだ。私に力を貸してくれんか?」
琳守が状況を見回しながら、ゆっくりと頷いた。
「朝光殿……これはいったいどういうことです?」
牛若は叫んだ。「琳守!!どうした!?お前が彼の言葉に従うはずがないだろう!」
だが琳守は牛若を冷淡に見つめ、静かに告げた。
「どうしたやあらへん……牛若……見損なったわ……」
牛若は驚愕し、歯を食いしばる。自分の仲間が洗脳されてしまったことを悟り、冷たい汗が背中を伝った。
「まさか……朝光の『森羅万象』の効果か……!」
琳守は剣を構え、牛若に向かって突進する。
「行くぞ、牛若!!!」
牛若は覚悟を決めた。「言葉はもう通用しないのか……」
二人は激しく斬り合い、牛若はかつての仲間と戦うことを余儀なくされた。だが、朝光の冷笑が二人の戦いを見守っていた。
那須・茂道サイド
那須と茂道もまた、九国スパイとの戦いに巻き込まれていた。茂道は混乱しながら額を押さえた。
「頭が痛い……朝光殿が二人?何がどうなっている……」
九国スパイは冷たく茂道を見つめながら、低い声で囁いた。
「茂道殿、平家の名誉と国の未来のために全てを捧げよ……」
茂道は動揺しつつも、その言葉に引き込まれる。
「朝光殿の新しい霊域か……遂に九国が仕掛けてきたというのか!?」
那須は焦りを隠さず叫ぶ。
「そんなわけないでしょ!!茂道殿、いい加減にしてください!!」
だが、茂道はその言葉に耳を貸さず、朝光の影響を受けたまま、九国スパイと共に那須へと向かってきた。牛若の警告通り、言葉はもう通じないのだ。
那須はため息をつき、覚悟を決めた。
「どうやら戦うしかないようですね……」
那須は雷鳴の槍を構え、茂道と九国スパイに立ち向かう。
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