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グランタブローでNetFlix【阿修羅のごとく】を読む

NetFlix配信ドラマ 向田邦子脚本をリメイクした是枝裕和監督作【阿修羅のごとく】をテーマに36枚のカードを並べるグランタブローを読み動画を作りました。動画リンクとナレーションテキストを掲載します。
【動画再生時間 12分18秒】

ナレーションテキスト


こんにちは、ルノルマンカードを読むひと、織瑛です。
本日はNetFlixオリジナルドラマ向田邦子脚本をリメイクした是枝裕和監督作【阿修羅のごとく】全7話をテーマに36枚のカードを並べるグランタブローで読んでいきます。
1979年の東京で始まる、竹沢家の四姉妹、綱子・巻子・滝子・咲子の物語。
四姉妹や周囲を取り巻く人々を演じる役者がそれぞれ魅力的なのに加えて、1979年の日本の町や店や家や室内のさまざまな小物の再現っぷり、収集っぷりにも感嘆する作品です。

グランタブローを図にしたものがこちら(タイトル画像)です。黄色のカードに注目して読んでいきます。
淑女と紳士に誰が現れるかは、ルノルマンカードに任せました。その結果女性たちと男性たちの統合されたイメージが現れてきました。

手紙から始まる


まず手紙のカードが面白かったです。グランタブローの一番上の列の一番左に手紙のカードがあります。ことの発端のような位置ですね。
ドラマの幕開けとなる出来事は四姉妹の70歳の父、竹沢恒太郎に愛人がいるという興信所の調査結果の書類と写真でした。手紙のカードはそれを指していると思います。手紙のカードの下には船のカードがあります。海を泳ぐクジラを船が追いかけているような絵柄ですね。このクジラが父・恒太郎だと思いました。
船のカードは四姉妹にとっては非日常的な世界への冒険が始まったことを示しています。手紙の右にはコウノトリ。その下に樹。コウノトリのカードは二羽が巣の上にいる絵柄。夫婦のようですね。樹は長く続いてきたことと考え長年連れ添った夫婦、竹沢夫婦と考えます。手紙は竹沢夫婦の非日常な世界に関する書類となります。

女性たちの日常


淑女のカードを見てみましょう。ドラマの中に登場する女性たち全体のイメージが現れていると思いました。淑女の頭の上には鳥のカード。この鳥は止まっておらず飛んでいますね。常にだれかと喋っているような、情報を探しに行っているような、忙しそうなようすです。鳥の右には鞭、左には鎌。ルールを守り要不要の取捨選択もする、しっかり者の鳥ですね。
淑女の右には庭、左には塔。庭は近所、塔は会社、世間ですね。世間体といってもいいのかもしれない。「阿修羅のごとく」の女性たちは時代のせいか、結婚後も姉妹や親との距離が近く、家を行き来し、相談事項があれば家族会議に集まったりする。姉妹の夫や恋人もその輪に参加します。普通のことのように日中に父が働く会社や夫が働く会社を訪ねたりします。
淑女の下、目に見えない世界のラインに並ぶのは蛇、キツネ、雲です。癖がある不穏な感じのするカードですね。
蛇はたまごをしっかり抱いています。たまごはこどもの意味だけではなく、夫や家庭そのものも含まれているのかもしれません。蛇は妬みも意味しますが、妬みというより女性たちが今所有しているものへの執着を示しているように思います。
蛇が見ているのは左側の錨のカードです。錨は義務・仕事です。蛇が守ろうとしているのは夫婦の義務、家族の義務ではないかと連想させます。長女・綱子の綱という字、次女・巻子の巻という字も、なんだか蛇を連想させます。
キツネは手の届かないところにあるぶどうを取ろうといらだっているようすです。背伸びをして何かを手に入れようとしている四女・咲子を連想させます。雲は不安感です。

男たちの目の前にいるのは


紳士のカードを見てみます。淑女と視線が向かい合っていますが、少し距離がありますね。紳士の上には樹のカード。樹は人から見て安心感のある健全なイメージですね。妻子を守り家を建て真面目に仕事をこなし、ちょっと茶目っ気やとぼけた部分がある夫のイメージは樹のカードが似合います。四姉妹の父・恒太郎、巻子の夫・鷹男、滝子の恋人・勝又が思い浮かびます。でも左右のカードを見ると樹の平和さがかき消されますね。
紳士の右、紳士が見ているのは熊のカード。この熊はキツネと同じく、いらだっているようすで頭の上に山が乗っかり、下にはネズミがあるからものすごく荒れていますね。
熊は阿修羅になった状態の女たちだと思います。ネズミのカードの絵柄は、夫・鷹男に愛人がいるのではないかと悩んでいた巻子が、近所のスーパーで無意識に果物の缶詰を万引きし店員にとがめられたシーンを思い起させます。
紳士の左の列には船・指輪・星。指輪は契約。この紳士は結婚しています。船があるから、結婚という大冒険に出た。下に星があるので結婚に理想や夢を抱いていた。しかし。
星のカードの右、紳士のカードの下には騎手・ライダーのカードがあります。ライダーが目指す先はネズミのカードです。ネズミの下には錨・夫婦の義務。それがネズミに損なわれています。紳士の下のライダーは、結婚=人との絆に見た夢、その夢の消化をするためにネズミ=不倫に向かいます。

太陽と月、夫と妻


太陽と月が同じ列、上から二列目に出てきました。陰陽の対比を感じました。
太陽は「阿修羅のごとく」における夫というもの・月は妻というものだと思います。「阿修羅のごとく」は夫と妻の物語といってもいいかもしれません。
太陽の上には犬のカードがあります。犬は部下のカードです。誰かの部下として働く夫ですね。太陽の下にはクローバー。日々の幸せが夫の心の土台となっています。太陽の左には魚=お金のカード。収入を得ています。
この魚のカードは人魚が真珠を数えているような絵柄です。魚の下にあるのは十字架=逃れられない宿命なので、家族と見ると、人魚は妻で夫が稼いできたお金を妻に数えられているようですね。編み物の編み目を数えていた巻子の姿も連想させます。
魚の上には棺のカード。棺と魚=お金で貯蓄のことかもしれません。しかしこの棺のカードは蓋があき、怪しいものが顔をのぞかせていますね。棺の左に百合のカードがありますので、棺は性愛に関する隠し事を現わしているのかもしれません。隠し事はばれる、ということでしょうか。

四姉妹を現わすカード


月のカードを見てみましょう。月の上には家のカード。家に属する・家庭に属する妻というイメージです。家のカードはグランタブローの一番上の列に出ているので家自体のイメージはありません。家のイメージは妻で決まります。家の右には道、左には花束。家の華やかさ=花束も、家の方向性=道も、妻で決まるものという感じですね。月の左には山。大きなトラブルをのりこえていきます。四姉妹の母の名前は「ふじ」なので富士山っぽく名前を示すカードとして山が出てきたのかもしれません。月は母を示すカードでもありますね。月の右には本。秘密ですね。秘密にしておくこともあります。
この本のカードは四冊の本が描かれています。四冊の本は四姉妹を現わしているように思いました。
母のそばにいる四姉妹の下には鳥のカードがあり、四姉妹の心は穏やかではなく気ぜわしく飛んでいるようです。情報処理にも忙しそうです。四姉妹の上には道のカード。岐路に立ち、自分の行く先に迷っているようすです。四姉妹の右にはハートのカード。ハートの上には百合のカード。姉妹は恋愛ごとの隣にいます。未亡人の長女・綱子、三女・滝子と四女・咲子の恋愛模様を連想しますね。

女たちの情報戦に参加している子ども


最後に子どものカードを見てみましょう。子どものカードの上には十字架。誰かと血のつながった子どもであることを示します。「阿修羅のごとく」の中で印象の強かった子どもは巻子と鷹男の娘・洋子でした。子どもの右には鍵のカード。鍵の上にはクローバーのカード。日常生活の中から鍵を見つける、鍵を拾うような子どもです。洋子は自宅の二階に続く階段の途中に座り父・鷹男と母・巻子の会話に耳を傾けている娘です。そして母・巻子の不安定さに気づく娘です。子どもの目が大人が気づかないことを見抜くことがあることを示されているようでした。
このカードの子どもは小鳥をつかんでいます。
淑女の上にも四姉妹(本)の下にも鳥があることから、女たちが忙しく情報の中を行き交う、その情報のカケラ=小鳥を子どもは手にし、子どもも女たちの情報戦に参加しているかのようです。

以上「阿修羅のごとく」をテーマにグランタブローで読んでみました。
女優たちが濃く輝くドラマですが、男性の俳優たちも飾らず美化せず、なのに憎めない魅力を持っていて、俳優を観る楽しみが思う存分味わえるドラマでした。




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