【実践紹介】クレイジーファッションショーの思い出【画像あり】
知的障害特別支援学校では、中学部と高等部で「作業学習」という授業が行われています。
作業活動を学習活動の中心にしながら、児童生徒の働く意欲を培い、将来の職業生活や社会自立に必要な事柄を総合的に学習する指導の形態。この指導は、単に職業・家庭科(高等部は職業科及び家庭科)の内容だけではなく、各教科等の広範囲な内容が扱われる。
出典:文部科学省「知的障害のある児童生徒のための各教科について」平成28年2月22日 教育課程部会特別支援教育部会(第6回)
週2~3回、普段のクラスとは違う学年縦割りのグループで実施しており、実践的・体験的な活動を通して、集中力や持続力、正確性や丁寧さ、挨拶や返事など、働くために必要な様々な力を身に付けることを目指しています。
具体的な学習内容は、こんな感じ。(説明放棄)
作業学習で取り扱われる作業種目は、農耕、園芸、紙工、木工、縫製、織物、金工、窯業、セメント加工、印刷、調理、食品加工、クリーニング、販売、清掃、接客等と多種多様である。また、指導にあたっては、生徒にとって教育的価値の高い作業活動等を含み、それらの活動に取り組む喜びや完成の成就感が味わえることなど、考慮されている。
出典:同上
外部の人材を講師として招くこともありますが、基本的には教員が指導します。未経験の分野の指導を任されることもあり、前任者や先輩にあれこれ聞きながら、生徒に教えられるレベルまでもっていかなければなりません。
私も今まで勤めてきた学校で、いろいろな作業に携わってきました。中でも思い出深いのが、数年前に経験した手芸系の班です。
所属が決まったときは「マジか…」と思いました。子どもの頃から裁縫が大の苦手で、ミシンを使えば針が折れるし、ボビンの糸はグチャグチャに絡まる。中学校の文化祭に展示するエプロンを完成させられず、こっそり家に持ち帰って母に仕上げてもらったこともありました。
ミシンなんて教えられないよ~と憂鬱でたまりませんでしたが、他に得意な先生がいたので、生徒の前で醜態を晒さずに済みました。
代わりに任されたのが、ビーズの携帯ストラップ作りの指導。材料は自由に組み合わせていいと言われたので、まずは担当する生徒の実態に合わせて、作れそうなデザインを考えることに。在庫のデザインが正直アレだったので、リニューアルして売りまくるぞ!と燃えました。
幸い、手先が器用かつ見本通りに作るのが得意な子が揃っていたので、張り切って新しいデザインを量産しました。
S=シングル、一連のストラップってことです。生徒に伝えやすいように、それぞれ名前を付けました。
金具との接続部分は、エッフェル塔をイメージ。ちなみにイタリアも作りました。
個人的にお気に入りのデザイン。余った物を一つだけ買い取って、仕事用のUSBに付けています。
ドルチェ&ガッバーナ~を数年先取り!
こっちはW=ダブル、二連シリーズ。
大量に余っていた微妙な色のビーズを、何とか使おうと考えたデザイン。
美容室で読んだCanCamとかMOREから思いついたような…。
こんな感じで、趣味と実益を兼ねてラインナップを増やし続けていたら、生徒が「次は〇〇を作りたい」と言うことが増えてきました。
指示された作業を忠実にこなすことが重要という考え方もあるかもしれませんが、自分がやりたいことに取り組む方が断然意欲的になると思ったので、主体的な意思表示にはできる限り応えました。
そして迎えた、年に一度の学校祭シーズン。当日は、作業学習で作った製品を生徒自ら販売します。
販売前に各作業班の製品のアピールタイムがあり、歌やダンスなど、それぞれ工夫を凝らしたパフォーマンスを披露していました。
私が所属していた班は、ストラップの他にもシュシュや巾着袋、コースターなどを作っていました。そこで、生徒が製品を身に着けてモデルみたいに歩いたら面白くないか?という流れになりました。(やっとタイトル回収)
どうせなら校内に貼るポスターもファッション誌っぽくしよう!ということになり、男子グループと女子グループに分けて写真を撮りまくりました。
他の先生達もポーズのアイディアを色々出してくれて、オッケーオッケー笑顔いいよ~!などとグラビアのカメラマンばりに声をかけまくったからか、生徒達もノリノリでモデルをやってくれました。
素材が揃ったところで、ポスターのデザインに着手。ティーン向けのファッション誌やアイドル雑誌の画像を参考に、それっぽいレイアウトにして、頭のネジがぶっ飛んだキャッチコピーを入れました。
「いま、きんちゃく袋がアツい。」
「この秋、ビーズで男をアゲる。」
「激カワ♪アイテムで女子力アップ大作戦」
「俺達ウワサのオシャレンジャー!!」(これは他の先生作)
などなど…。よく考えるとジェンダー的にどうなの?というものもあるので、今ではできないなぁと思います。
他にもAKB48のCDジャケット風や、ストリートスナップ風のポスターも作りました。パソコン室にこもって、妙にハイな状態で作業に没頭していたのを覚えています。
大人が本気で遊び、生徒も一生懸命応えてくれたおかげで、ポスターも学校祭当日のファッションショーも大好評でした。
BGMはコレ。k-k-k-kawaii☆
実はその年度は、生徒指導や同僚との人間関係がしんどくて、作業学習は貴重な癒しの時間でした。限界を感じて次の年に異動してしまったのですが、あのときは楽しかったなぁと、今でもしみじみ思い出します。
正直、楽しいことばかりではない仕事ですが、胸が熱くなるような思い出があるからこそ、続けていけるのだと思います。