Back in The U. S. S. R.

嘗て皇帝は冬将軍を前に撤退したらしい。

幾つもの大寒波が押し寄せている。
日本海側では歴史的降雪量を記録している。
冬将軍の到来だ。

吐く息が白くない、霜柱を未だ見ない。
翻ってこれが今季の都内の冬景色だ。
乾燥した晴れが続く。

冬将軍の正体はシベリア寒気団と言うものらしい。
シベリアで発生した低温で乾燥した空気の塊のことだ。
それが日本上陸する際に日本海や東シナ海を通過する。
通過する際、海面から熱や水が供給され積乱雲となる。
中央分水嶺に阻まれた重い湿った空気が日本海側に雪を齎す。
そのため、太平洋側は乾燥した冬晴れとなるのだと言う。

寒い寒いと言っても、明らかに今季の都内は暖かい。
暖かいと言っては語弊があるが、例年に比べ寒さが弱い。

第一統領のサン=ベルナール峠を越えたのは何時のことだったか。
冬将軍は中央分水嶺を越えられないでいる様だ。
そうは謂えども冬真只中、将軍が峠を越すのはこれからだろう。
しかし私は彼を待たず、また歓迎もしない。
冬将軍には踵を返して欲しい。

嘗て皇帝がそうした様に。

いいなと思ったら応援しよう!