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未成年一般人女性の呟き

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#小説

恋の序章

恋の序章

高校生までの恋は甘酸っぱかった。

それこそ王道だけれどback numberや西野カナが似合うような、どこか小っ恥ずかしくて、それでも帰り道にスキップしてしまうような恋だった。

中学生までの恋はソフトなクッキーみたいなものだった。

コストコで配られている試食のような、少し気になってはいるけれども本気で買おうと思っているわけではない、そんな感じの恋だった。言うなればお試し。それがなければ買わな

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舞台を観るより、舞台に立つ側の人生の方がいい

舞台を観るより、舞台に立つ側の人生の方がいい

大人になって、舞台を観に行く機会が増えた。

朝眠い目をこすって起きて、毎日同じ時間の電車に乗って、同じデスクに座って、誰がやっても同じ結果になるような仕事をして。また同じ沿線の電車に乗って、隣の部屋の人とそう変わらないような、けれど一生懸命心地よくさせた1Rの部屋に帰って、そしてまた眠って、起きる。

せっかく就職できた会社で働く、いまの暮らしに大きな不満があるわけじゃなかった。けれど「なんとな

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夏の終わりのぼくとかこ。

夏の終わりのぼくとかこ。

19:30の河川敷。
ぼくらは行儀よく体育座りをして、その光が打ち上がるのを待った。

ドンッ。パッ。という規則正しく、乱れるリズムが大きく響く。
眩しく花を開いた光たちを見て、河川敷にいる人たちは一斉に声をあげた。

「きれー」という女の子の声が聞こえ、静寂が包む川沿いを眺めながら、ぼくは缶ビールを口にする。
まだほんのり冷えている缶ビールは水滴で覆われ、右手の指先に水のバトンを渡す。

「のり

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年上ヒモ男との短命な恋

一つ前の記事で、運命の出会いを果たしたと思い込んだ私。

当時大阪に住んでいた彼と京都在住の私は、お互いの拠点を行き来して数回のデートを重ね、晴れて付き合うことになった。

彼とtinderでマッチした時でさえ「鈴虫寺効果だ!」と思っていた私は、付き合うとなるとより一層「鈴虫寺本当にすごい!お地蔵様まじでありがとう」と一人舞い上がっていた。
(鈴虫寺に関しては一つ前の記事参照)

しかし、恋人とい

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東京を寝かさない女はバンドマンじゃなくて良かったと。

東京を寝かさない女はバンドマンじゃなくて良かったと。

バンドマンじゃなくてよかった。本当に。
もし私がバンドマンだったら、過去好きだった人とか愛した人に向けた曲を20曲作ってる。私は片想いしてた人が多かったので27曲とかかもしれない。
過去に向けて愛を叫ぶのってなんて美しくていじらしいんだろう。
過去なんて変えられないし、消えていく一方で消えていく過去が惜しくて人は美化していくだけのものなのに。
あの日、笑ったあの子の笑顔の可愛さとか、意外に短いまつ

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