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放射能陰謀論者の仰天発言~誰が風評加害を生み出すのか~


悪趣味な風刺画


今回解説するのは東日本大震災以後に雨後の筍の如く現れた放射能陰謀論者について語っていく。彼らの質が悪いのは自らの拡散した陰謀論を「表現の自由」や「世間に対する啓蒙」と棚に上げて国や自民党の責任を叫ぶからだ。

今回は主に処理水のトリチウム生体濃縮や福島鼻血騒動等の原子力発電所関連の陰謀論の他に、農業系陰謀論者も関わった放射線育成種であるアキタコマチRに関する陰謀論も語っていく




陰謀論①~ALPS処理水内のトリチウムは生物濃縮する!?~



まずは、社会学者で左派として知られている宮台真司氏が自民党政権憎しからなのか「トリチウムを含んだ汚染水を海に放出すると生物濃縮するので危険!と言う陰謀論を拡散してしまう。

それに対して有識者が「トリチウムは体内では水として排出されると発言をしているが、宮台氏は全然関係ない有機水銀が原因である水俣病の事例を当てはめて正当化する等醜態を晒していた



宮台氏が参考にしたのは選挙ウォッチャーちだいなる投稿者の動画で、具体的な内容としては風呂場のバスタブを海に入浴剤を処理水として捉えて如何に福島第一原子力発電所の海洋放出が危険なのかを語っていた。

この動画は好意的な反応をしたXアカウントの投稿に「希釈前の段階で十分安全な数値で、海水で希釈するのは汚染水でなくALPSで除去された処理水。海の総量を無視した非科学な投稿で、海水にも太古より放射線は存在していた。とコミュニティーノートが着くなどかなり問題のある動画だった。

他にもちだい氏は「福島県で奇形児が誕生しても役所は出生届を受理しない!」や「福島県産の梨を使ったキリン『氷結・和梨』は果汁が1.2%と超微量。梨という特性上、僅かにセシウムが入っている!等とデマ発言を行っていた



そんなちだい氏が応援していたれいわ新選組党首の山本太郎議員も、放射能陰謀論を積極的に拡散していた。例えば、ある動画では国会で配られた弁当に対して「ベクレてんねやろなぁと言う東北地方を愚弄する失言が流された。



また、オフィシャルブログにて「国が土壌調査を行わないのは農業、漁業者、移動する人々への 補償・賠償をする事になるからだ!」や「東日本の食材を僕は食べないのは危険物質をバラ撒き続け、2年経っても汚染地域を明確にしないからだ!」と福島県に対する不信感を煽る発言が多々あった。



今回のトリチウム生物濃縮陰謀論にも絡んでおり、「国際原子力機関は原発推進なのでお墨付きをもらっても意味はない!」とのことだそうだ。

更に支持者も「海産物に濃縮された放射能が国民全体を蝕む」、「風評被害は自民党、日本政府、大手メディアが危険性を隠蔽する為のプロパガンダ」、「唯一の被爆国自らが放射能を放出、生体濃縮している」等と党首に負けず劣らずの暴論が多数見られた


陰謀論②~福島の物を食べると鼻血が出る!?~



次に紹介するのがグルメ漫画家にしてエッセイストだが、反農薬や反添加物論者としても知られている雁屋哲氏で、彼は主人公である山岡士郎を使って自らの思想を代弁する事がしばしばある



問題となったのは「福島の真実編 その22」にて福島第一原発取材後の山岡士郎と海原雄山が倦怠感や鼻血の症状が現れた際に井戸川克隆前双葉町町長が「鼻血は被曝によるもの」「福島では大勢出ているがだれも言わないだけ」と発言したことだ



当然の事だが、福島県双葉町から「現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません」と井戸川前市長の発言を否定した上で、双葉町民と福島県民への差別を助長させとると非難した。

ビッグコミックスピリッツ編集部は「綿密な取材に基づき、作者の表現を尊重して掲載させていただきましたと弁明したが、責任逃れをしていると解釈されバッシングの対象となった



因みに井戸川元町長は美味しんぼ鼻血騒動前の2013年頃から、「東日本大震災は人工地震で日本政府は知っていた!」なる突っ込み処満載の陰謀論を拡散していたようだ。その様な人物の発言の主張を載せておいて「綿密な取材」はどうかと私は思った



また、その次の号でも「大阪で受け入れたガレキを処理する焼却場の近隣住民1000人程を対象にお母さん達が調査したら、放射線の影響と断定はできませんが、眼や呼吸器系の症状が出ている」と岐阜県環境医学研究所所長の松井英介氏が発言した。

これまた当然の事だが、大阪府から「作中の記述にあるような状況は認められず、災害廃棄物の処理は全て安全に終了しています」と抗議した。因みにその「お母さん達」は大阪おかんの会と呼ばれる市民団体で、会長は松井氏だったりする。



この様な批判対して雁屋氏はブログにて「ある程度の反発は折り込み済みだったが、ここまで騒ぎになるとは思わなかった」、「真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか」、「『福島は安全』『福島は大丈夫』『福島の復興は前進している』などと書けばみんな喜んだのかも知れないと自己弁護している。 



また、自身に寄せられた意見への反論本である「美味しんぼ『鼻血問題』に答える」を出版したが、Amazonのレビューを見ると科学的根拠の薄いと言う酷評と反原発陰謀論者からの賞賛の声に二分されていた



余談だが、最近になって🅜🅐🅣🅢🅤🅚🅘 ​ 🅚🅐🅜🅞🅢🅗🅘🅣🅐(以下鴨下)なる人物が似た様な陰謀論をXでポストした。当然の事だが、多くの人から批判を受けることとなり、雁室氏と同等かそれ以上に自己正当化していた



因みに鴨下氏の別のポストでは、福島の農家を「チェルノブイリ以上に汚染された地域」「(セシウム基準越えが発覚した際は)東京の農家にはそういう汚染の賠償をするのに」と明らかに福島の作物を嗜めている発言をしている


陰謀論③~放射能育成種の作物は危険!?~



ここからは原発ではなく、最近できた放射能育成種のあきたこまちRに関するデマについて語っていく。そもそも植物は自然放射線の作用によっても突然変異が起こることがあり、放射能育成種はそれを放射線やイオンビームで人工的に再現する為に1950年から初めている

そして世界初の放射能育成種の米は日本生まれで、耐冷性品種であるフジミノリの欠点だった草丈が高く倒れやすい部分をなくしたレイメイだ。また、1989年に放射線育種で開発された系統を利用した「キヌヒカリ」、米ではなく日本梨ではナシ黒斑病抵抗性を持つ「ゴールド二十世紀」等が育成されている。



アキタコマチRはコシヒカリ環1号と言う品種生まれた。この米最大の特徴はカドミウムを吸収しない事だ。カドミウムは土壌や水、銅や亜鉛等の鉱石に広く存在しており、日本では鉱山の採掘や金属の精錬時にカドミウムが高濃度で排出された結果公害が発生しており、最古の物だと1910年に発生していた
 

国は玄米中の含有するカドミウム量を1mg/kg(1kg中1mg未満)と定め0.4mg/kg以上1mg/kg未満の米は国が買い上げ工業用糊の原料等に用いる事にした。更に2011年には、「玄米及び精米中にカドミウムとして0.4mg/kgを超えて含有してはならないとする基準を施行した。

他にも、客土や農家に対して稲の栽培管理の指導やカドミウムの検査が行われているが、客土はコストが掛かりカドミウムを吸収させない栽培は水管理の細かい調整が必要な為高齢化が進む生産者にとっては大きな負担となる

根本的な解決策として、カドミウムの吸収やコメへの蓄積を抑えた新しい品種が必要と感じ、コシヒカリの種子にイオンビームを照射してそれを栽培及び収穫した種子をカドミウム濃度が高い土壌で1個体ずつ栽培しできた米を分析した。

その中で、カドミウムを殆ど含んでいない種子を栽培し収穫して得られた種子を更に栽培する・・・と言う選別を少なくとも6世代以上行い、生産力等の性質を調べる試験を行い良い系統の選抜を続け安全上の懸念がないことも確認し国に対して新品種として登録を申請したのがコシヒカリ環1号だ。



あきたこまちRは、コシヒカリ環1号を親にして更なる交配と選抜を繰り返して育成された品種となっている。また、それらのコシヒカリ環1号はカドミウムとトレードオフの関係で、発癌性や遺伝毒性が有ると懸念されている無機砒素対策がしやすくなる可能性もある。

ただ、コシヒカリ環1号はカドミウムをほぼ吸収しないのと同時にマンガンを吸収する力が低くなっている関係で、ごま葉枯病という病気にかかりやすい。その為、マンガンを肥料として与えれることで病気の発生を防止している。



今回の放射線育成種のデマを広めたのは、有機・無添加食品、ミールキットの通信販売を行う企業オイシックス・ラ・大地の元会長藤田和芳氏で、かなり政治的に尖った人物でもある。過去には日本赤軍のメンバーがイスラエルの民間人を虐殺したテルアビブ乱射事件の犯人を賛美している発言をXでポストし顰蹙を買った



藤田元会長はあきたこまちRに対して「イオンビーム照射の安全性に不安!」「遺伝子特許が取られ自家採種できない!」「日本中の米が放射線育種になり多様性が失われ急激な環境変化に耐えられない!」と不安を煽り多くの放射能陰謀論者や農作物系陰謀論者もそれに便乗した



ただ、藤田元会長の農業の偏見はこれが初めてではく、ある日Xにて「ニッポンは農薬・食品添加物・水道水の塩素濃度・放射能汚染・遺伝子組み換え作物の輸出入・電磁波の浴びる量が世界一で危険!」なるポストを投稿していた。それにしても電磁波の浴びる量と放射能や農薬や遺伝子組み換え作物と同列に語るのは如何なものかと私は思う



この陰謀論に対する反論としては、前述した通り放射能育成種は1950年から初めている他、なんとオイシックス自らが「にこまる」「つがるロマン」「キヌヒカリ」といった放射能育成種を売っていたことが発覚した。自社で売っている米を間接的にネガキャンしてしまった為か、藤田元会長はこのポストを消してしまった



その後藤田元会長は2024年2月12日にXにて「東京電力は、福島原発の放射能汚染水を海に流し始めた等と投稿した。それが福島の風評被害に繋がるとして批判され、後日訂正した。その後、20日に開いた懲罰委員会で藤田氏は3月末まで停職処分となったが、22日には会長自らが辞任を宣言した。



それでも相変わらずあきたこまちRに対する風評被害は続いており社民党の福島瑞穂議員や参政党やれいわ新撰組等の一部野党やOKシードプロジェクトと言った市民団体が陰謀論を拡散させている。中には生産を指示する農家に対して強迫や直接暴力を振るう人も出てきた始末だ。


おまけ~福島を蝕んだEM菌~



今回のおまけは東日本大震災後に現地で突如として爆発的に流行った疑似科学EM菌に関してだ。EMは有用微生物群の略称で、開発者は琉球大学名誉教授で名桜⼤学付属国際EM技術研究所所⻑でもある比嘉照夫氏だ。



EM菌は本来農業用の堆肥として開発していたが、次第に「放射線物質の除染!」「海や川の水質を浄化!」「癌、肝臓病、アトピー、パーキンソン病を治療!」等の誇大広告を持て囃す様になった。恐ろしい事に東日本大震災後の福島では自然派団体がこの様な怪しい物質を「布教」していた



まず、「EM菌には光合成微生物が含まれている」と言われいるが、サイエンスライターの片瀬久美子氏が実際にメタゲノム分析と言う方法で分析してみた処、なんと雑菌は多かったのに対して光合成細菌は欠片も含まれていなかった

一応前々から含まれていない事は指摘されていたが、比嘉氏は「EM・1は強酸性下だがら、光合成細菌はシストで休眠していている」「施用後暫くは乳酸菌や酵母等はが著しく増強するが、糖蜜等で培養し太陽に当てると赤くなり、この時点で調べると光合成細菌は多数検出される」「それでもダメならメタゲノム分析をしてください」と強気の態度を示した。


片瀬氏がメタゲノム分析で調べた細菌


そして片瀬氏がEM1を糖蜜で太陽に当てながら培養したものを実際にメタゲノム分析をしてみた結果、乳酸菌(ただしEM菌業者が標榜していた植物性乳酸菌とは別種の乳酸菌)や酵母や酢酸菌や糸状菌は見つかったが、光合成細菌の類いは遂に見つからなかった



また、片瀬氏は水質浄化を理由にEM菌が含まれた泥団子や培養液を川に放出する様な環境教育を批判した。何故なら有機物の塊を投入する事で汚濁が発生してむしろ水質が悪化するのは勿論の事、EM菌は沖縄県で開発された国内外来種なので福島の河川の生態系に悪影響を与え兼ねないからだ。



更には、EM菌を地面に撒くと放射性セシウムが生物に吸収され易くなることを1997年にEM研究機構が発表していたが、東日本大震災以後は一転して前述した通り放射能を除染できると騙っている。また、この手の生物除染は内部被曝の原因となる懸念がある



比嘉氏は福「福島県民は江戸時代の人民と同じで、お上に対して『へへぇ~』と媚びへつらっているから原子力発電所ができる!」「EM批判をした人は全員訴訟対象になる!」「国民は一回 全部 公務員になって 国家のために働く義務化をするべき!」等と過激な発言をする事でも知られている。



そもそもの話EM菌は世界救世教なる新興宗教が積極的に広めていた他、悪名高い偽科学である水からの伝言に対してもリスペクトしてるからなのか、「EMの波動作用」等と言ったオカルト界隈での合体事故を起こしている



しかも質が悪い事になんと、アメリカ・ヨーロッパ諸国、アジア・中南米・中近東・アフリカ諸国等世界中にEM菌が「輸出」されている。例えば韓国では2024年3月17日にEM菌の問題がTVニュースになってしまった韓国にEM菌を持ち込んだのは件の世界救世教で、金建希大統領夫人まで巻き込んだ事件となった


最近だとNHKの番組クローズアップ現代にて、ハワイでの持続可能な観光の一環としてEM菌団子でアラワイ運河のヘドロを浄化するシーンを肯定的に流してしまった問題のEM菌団子を流した団体Genki ala waiは2019年からその活動を行っているようだ。

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