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【必見】めまいの謎を徹底解明!耳と脳から見るあなたの健康管理
要旨
めまいは、ふらつきや回転感、浮遊感などさまざまな表現で現れる日常的な症状ですが、その原因は内耳の前庭障害や脳の中枢神経の異常、さらには全身状態や生活習慣にまで及びます。本コラムでは、内耳の異常により生じる末梢性めまい(良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎など)と、脳血管障害や小脳病変に起因する中枢性めまいに焦点を当て、各タイプの特徴、診断のための検査方法、効果的な治療アプローチを具体的に解説しています。また、起立性低血圧や貧血、ストレスなど全身的な要因がめまいに影響を与える点や、セルフチェックのポイント、日常生活での予防策についても紹介。引用文献に基づいた信頼性の高い情報を通じ、読者が自身の症状を正しく認識し、適切な対処法を選択できるようサポートする内容となっています。めまいの原因を理解し、安心して日々を過ごすための一助としてぜひご一読ください。
1. はじめに
「めまい」は人によって感じ方が異なる症状のひとつです。頭がぐるぐる回る感覚、ふわふわ浮くような感覚、体が傾いているように感じるなど、多彩な表現がなされます。めまいを引き起こす要因は、耳(内耳や前庭神経など)の障害によるものと、脳(中枢神経系)に起因するものに大別されます[1,2]。これらはそれぞれ「末梢性めまい(Peripheral Vertigo)」と「中枢性めまい(Central Vertigo)」と呼ばれ、診断や治療方針において明確な区別が重要です[1,2,5]。
一般的に、末梢性めまいは回転感の強いタイプ(ぐるぐる回る)であることが多く、耳鳴りや難聴などの耳症状を伴う場合があります[1,3]。一方、中枢性めまいは脳幹や小脳などの神経系トラブルが原因で起こることが多く、めまい以外にも麻痺や言語障害、複雑な眼球運動異常などが見られるケースがあります[2,5]。本コラムではまず、めまいの主な種類を大まかに整理し、続いて原因疾患や検査方法、セルフケアのポイントなどを解説していきます。
2. めまいの主な種類
めまいは大きく「回転性めまい」「浮動性めまい」「動揺性めまい」「前失神(失神様めまい)」などに分類されます。これはめまいの原因部位や病態だけでなく、患者さんの主観的な感じ方によっても異なる分類ですが、ここでは代表的な症状像を整理します。
2-1. 回転性めまい
周囲がぐるぐる回っているように感じるタイプのめまいで、末梢性(内耳や前庭神経の異常)に多く見られます[1,3]。例として、良性発作性頭位めまい症(BPPV)やメニエール病、前庭神経炎などが挙げられます。頭を動かしたときに強い回転感を覚えたり、吐き気や嘔吐を伴うこともしばしばあります[3]。
2-2. 浮動性めまい
体がふわふわと浮いているように感じたり、地に足がついていないように感じるタイプのめまいです。ストレスや自律神経失調、血圧の乱れ、貧血など、全身状態が影響して起こることが多いとされています。
2-3. 動揺性めまい
足元が揺れている、まっすぐ歩けない、ふらつきが強いといったタイプです。平衡感覚を司る小脳や脊髄の異常、高齢者では加齢による筋力低下や感覚の衰えが関与することがあります[2]。
2-4. 前失神(失神様めまい)
一時的に脳への血流が低下し、意識が遠のくようなめまいです。起立性低血圧や不整脈、心疾患など循環器系の問題によって引き起こされる場合があります。急に立ち上がったときに「くらっ」とする感覚や、目の前が暗くなるような感覚が典型的です。
3. めまいを引き起こす主な原因疾患
ここでは、めまいの原因として代表的な疾患を末梢性と中枢性に分けて解説します。さらに、全身的な要因によるめまいも含めて整理します。
3-1. 末梢性めまい(Peripheral Vertigo)
末梢性めまいは、内耳や前庭神経などの障害により引き起こされるタイプのめまいです[1,3]。比較的急に発症し、激しい回転性めまいを伴うことが多いですが、頭位変換によりめまいの強さや持続時間が変化しやすいという特徴があります。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
頭の向きを変えたときに、強い回転性めまいが数秒から数十秒ほど起こります[3]。耳石が本来の位置からずれて三半規管を刺激することで発症し、Dix-Hallpikeテストなどによって診断されます[1,3]。メニエール病
耳鳴りや難聴を伴う反復性の回転性めまいが特徴です。内リンパ液の循環異常が原因と考えられており、突然のめまい発作により日常生活に支障をきたすことがあります[1,3]。前庭神経炎・内耳炎
ウイルス感染などにより前庭神経が炎症を起こし、急性の回転性めまいが長時間続くことがあります。耳鳴りや難聴が伴う場合には内耳炎の可能性もあり、病初期には平衡機能が大きく乱れることが多いです。
3-2. 中枢性めまい(Central Vertigo)
中枢性めまいは、脳幹や小脳など中枢神経系の異常によって起こるタイプのめまいです[1,2,5]。めまいの性質が多様であり、末梢性と異なり頭位変換で症状が変化しにくいことが特徴的です。神経学的な症状(麻痺、構音障害、複視など)を伴う場合も多いため、精密検査が必要となります[2,5]。
脳血管障害(脳梗塞・脳出血)
小脳や脳幹部の血管障害により、突然めまいが起こります[5]。めまいだけでなく、手足のしびれや言語障害、歩行困難などの神経学的症状が同時に現れることがあり、緊急性が高いケースです。多発性硬化症、脱髄疾患
中枢神経系に生じる脱髄病変によって平衡感覚が乱され、めまいが起こる場合があります。若年層でも発症する可能性があり、視神経症状や運動麻痺などを伴うことが多いです。小脳の変性疾患や腫瘍
小脳は体のバランスを保つ重要な役割を担っています[2]。この部位に腫瘍や変性疾患が生じた場合、ふらつき(動揺性めまい)や失調症状、複雑な眼振などが見られることがあります。
3-3. 血圧や循環器系が原因となるめまい
起立性低血圧
立ち上がったときに急に血圧が下がり、一時的に脳への血流が低下してめまいを感じます。脱水や自律神経障害、降圧薬の影響なども原因となることがあります。不整脈や心疾患
心拍のリズムが乱れると、脳へ十分な血液を送り出せず、前失神様めまいが起こりやすくなります。心臓が原因の場合は、胸痛や動悸を伴うことが少なくありません。
3-4. その他全身状態・生活習慣によるめまい
貧血
酸素運搬能の低下により、頭がくらっとするような前失神様めまいを感じる場合があります。慢性的な貧血や急激な血液量の減少時に起こりやすいです。ストレス・自律神経失調症
心身のストレスやホルモンバランス、自律神経の乱れにより、浮動性のめまいを訴える患者さんが少なくありません。めまい以外にも不眠や動悸などを併発することがあります。頸椎性めまい(首こり・肩こりなど)
頸椎周辺の筋肉の緊張や歪みによって血流や神経伝達が影響を受け、ふわふわとしためまいを感じることがあります。デスクワークやスマートフォンの長時間使用などが原因になりやすいです。片頭痛・前兆を伴うめまい
片頭痛とともにめまいを訴えるケースもあり、特に「vestibular migraine」「めまい性片頭痛」と呼ばれる状態では、頭痛がない場合でも発作的に強いめまいを感じることがあります[4,6]。子どものめまい
子どもが訴えるめまいには、片頭痛関連のものや良性発作性めまいなど、成人とは異なる特徴が見られることがあります[7,9]。子どもの場合、症状を上手く言語化できないこともあるため、保護者は普段の様子や発作のきっかけ、発症時の行動などをよく観察しておくことが大切です[7,9]。
4. めまいを感じたときのセルフチェックポイント
めまいを感じた場合、以下のような点をセルフチェックすることで、原因の手がかりを得やすくなります。
発生時刻・発生状況
朝起きた直後、急に立ち上がったとき、夜間、乗り物に乗ったときなど
どんな姿勢や動作でめまいが強まるか
めまいの性質
ぐるぐる回る(回転性)
ふわふわする(浮動性)
ふらついて歩きにくい(動揺性)
倒れそうになる(前失神様)
随伴症状
耳鳴り・難聴
吐き気・嘔吐
手足のしびれ・言語障害
頭痛・光や音に敏感になる(片頭痛の関連を疑う)
持続時間・頻度
数秒~数分なのか、1時間以上続くのか
発作的に起こるのか、持続的に続くのか
既往症・内服薬
高血圧、糖尿病、心疾患、貧血などの有無
めまいを誘発しうる薬の服用状況
5. 受診のタイミング・必要性
めまいは多くの場合、一過性で大きな病気ではないこともあります。しかし、次のような状況では早めの医療機関受診が推奨されます。
強い回転性めまいが突然発症し、吐き気や嘔吐が続く場合
耳の問題だけでなく、小脳梗塞などの脳血管障害の可能性もあるため緊急受診が望ましい[5]。
めまいに加えて神経学的症状がある場合
片麻痺、しびれ、言語障害、ろれつが回らない、激しい頭痛など
脳梗塞・脳出血の疑いがあるため、救急搬送も検討する。
繰り返しめまいが起こり、日常生活に支障をきたす場合
良性発作性頭位めまい症(BPPV)やメニエール病、前庭神経炎などの可能性を評価する必要がある。
耳鳴りや難聴、片頭痛などの症状を伴う場合
メニエール病や片頭痛性めまい、頭蓋内疾患などの鑑別が必要。
基礎疾患(心疾患、不整脈、高血圧、糖尿病など)がある場合
全身状態に起因するめまいの悪化が懸念されるため、早期に医師の評価を受ける。
6. めまいの検査と治療
6-1. 検査方法
身体所見・神経学的検査
医師が眼振の様子を確認し、平衡機能を評価
めまいのタイプ(末梢性か中枢性か)を大まかに鑑別
耳鼻咽喉科的検査
聴力検査、カロリックテスト、ENG/VNGなど
BPPVが疑われる場合はDix-Hallpikeテストが実施される[1,3]
画像検査
MRIやCTによって脳や内耳の異常を確認
特に急性かつ重度のめまいでは、脳血管障害を除外するためにMRIが重要[5]
血液検査・心電図
貧血や炎症反応、自律神経のバランスなどをチェック
心電図・ホルター心電図で不整脈の有無を評価
6-2. 治療・対処法
末梢性めまい(BPPV・メニエール病など)
BPPV: エプリー法などの頭位治療による耳石の再定位[1,3]
メニエール病: 利尿剤や塩分制限、内リンパ圧を軽減する薬物療法など
中枢性めまい(脳血管障害・小脳障害など)
脳梗塞・脳出血が原因であれば、神経内科または脳神経外科的治療が必要[5]
小脳障害・脱髄疾患の場合は、原因疾患に応じた薬物療法やリハビリテーション
血圧・循環器系によるめまい
起立性低血圧:水分と塩分補給の指導、場合によっては昇圧薬
不整脈や心不全:薬物治療、ペースメーカーの検討など
ストレス・自律神経失調・片頭痛性めまい
休養やストレスマネジメント、必要に応じて精神科的アプローチ
片頭痛性めまい:片頭痛治療薬や生活習慣の見直し
頸椎性めまい
姿勢の改善、首や肩のコリをほぐすストレッチ、理学療法
長時間のスマートフォンやPC使用を避ける工夫
7. 日常生活での予防・セルフケア
めまいは生活習慣や環境要因とも関連が深いため、以下のようなセルフケアによる予防が期待できます。
規則正しい生活リズム
十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動
ストレスを溜め込みすぎないライフスタイルを心がける
水分・塩分のバランス管理
特にメニエール病や起立性低血圧の患者さんでは、塩分や水分の摂取量が重要となる
首・肩周りのストレッチ
血行不良や筋緊張を予防し、頸椎性めまいのリスクを低減
PC作業やスマホ使用が長時間続く場合は、こまめに休憩を取り軽い運動を取り入れる
ゆっくりとした動作
急に立ち上がったり、頭を急に振ったりしない
就寝・起床時は、体を徐々に起こすように心がける
定期的な健康チェック
血圧測定や血液検査などを定期的に受け、貧血や生活習慣病の早期発見につなげる
心疾患や不整脈の疑いがある場合は、専門医での評価を受ける
8. まとめ
めまいは、一時的な耳石のズレや自律神経の乱れなどから起こる軽度のものから、脳血管障害や重篤な内耳疾患に起因する危険なものまで、その原因は多岐にわたります[1-3,5]。末梢性めまいはBPPVやメニエール病などで、回転性の強いめまいや耳症状を伴うことが多く、Dix-Hallpikeテストやエプリー法といった特有の診断・治療法が存在します[1,3]。一方、中枢性めまいは脳幹や小脳の病変が原因となるため、神経学的な症状を併発することが多く、画像検査などによる精密診断が必須となります[2,5]。
また、片頭痛に関連するめまいや、子どもが訴えるめまいの中には良性のものもありますが、原因や特徴を把握せずに放置すると見逃せない疾患を合併している可能性も否定できません[4,6,7,9]。生活習慣の改善やストレスマネジメントによって予防できるめまいもあるため、まずは自身の症状を客観的に把握することが大切です。強い症状や繰り返す症状がある場合には、自己判断に頼らず専門家の診察を受け、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。
引用文献
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