読書 ネタバレ大いにあり ブギーポップは呪われる、を読んで
本を読んだ。
だが難しい本ではなく、
ライトノベルのブギーポップ!!!!📕
ブギーポップシリーズを読んだ。
読んだのは、「ブギーポップは呪われる」。
前回に続き、凄く面白かった。
何が面白かったというと話は長くなる。
まず懐かしい初期の頃のお話で、懐かしい名前がたくさん出てきて、歳をとった私でも話についていけたことが大きい。
あ!直子ちゃん!呆気なく死んじゃったけど良い子だったよなぁ。
あ!百合子ちゃん!すぐに死んじゃって知らない子だったけど、こんな子だったんだ。
お馴染みの末真に、新刻、そして、
このシリーズのラスボスであり、ブギーポップの天敵でもあり対極にあるとされる天下の世界の敵!!!!!水乃星透子!!!!!!
時系列的に、既にブギーポップに始末されたらしく、他界してる設定だけど時折、残像のような存在感で出て来て、どこまで行っても貫禄たっぷりだった。
穂波顕子とかエンブリオで懐かしい水乃星透子の取り巻きも出て来て、おおー!何があったかどんな戦いがあったのかますます気になる。
少しネタバレだけどブギーポップの正体である宮下藤花、そしてその彼氏である竹田くんも今回沢山出てきて、しかも怪我までして!
しかもそこまでブギーポップそこまで看破してるし。
とても興味深く読ませていただきました。
ブギーポップがたくさん出てくるのが嬉しかった。
読んでてここ凄い良いなあと思った箇所がありまして、それがこんなセリフ。
「いや、そうじゃなくて、君は単に”いいひと”なんだよ。そう思うけどね」
「は?なんのこと?」
「君はあの危なっかしい二人なことが心配なんだよ。でもそんなこと言ったら変な顔されるし、自分には忠告する資格がないと思ってる。だからせめて当たりこすりでも言って、彼らに少しでも慎重な行動と判断を求めているのさ」
「いや、その宮下藤花の顔で、そんなん言われても困るんだけど…ていうか、ぜんぜん的外れよ、それ。心配?なんで?私が?」
「君の、数々の悪口っていうのも、ほとんどそれなんじゃないかな」
「いやいやいや、待って待って。なんか変なこと言い出してるね、あんた。いくらあんなが適当で無意味なことを言ってるのが面白いからって、それは笑えないよ」
「ぼくは最初から、まったく笑わないけどね」
黒帽子は相変わらず、淡々とした口調で、ふざけているのか真面目なのか、その区別をつけることはできない。
「そもそも、君がぼくと出会ったとき、君はどうして、車道に転がっている尖った石を拾っていたんだい?」
「そ、それは…」
「車が踏んで、パンクでもしたら危ない、と、そう思ったんじゃないのかな。だから反射的に動いていた。君はそういう人なんだよ。誰も見ていないところで、誰にも感謝されないのに、誰かのために行動する、そして、あの攻撃が悪質なのは」
黒帽子の陰で、その半ば隠れた眼に昏い炎が灯ったような気がした。
「そういう対象に狙いをつけているところだ。この”敵”は人間という存在を嘲笑っている。”未来”そのものを呪っているのかも知れない」
その横顔は、とても不機嫌そうに見えて、私はすこし絶句してしまった。目をそらして、うつむいて、しばらく無言で歩いた後で、
「う、うーん、でもさ…」
と私が振り向くと、そこには黒帽子の姿はなかった。いつものように、どこへともなく消えてしまっていた。
というブギーポップと南野の会話があって。
これ結構本質を感じたというか。
悪口が警告や発せられる発端である場合が一理あると思ったところがあって。悪口って心配から来てるところ多少なりともある場合あるなあって。それがすごく鋭い感じがした。
でも、悪口までいかないんだけど、悪口だと思い込んでる感じ?それを自分が嫌だと思っていて自己嫌悪に陥っていたりもして。
私もそういう時が中学生くらいの時あって、中途半端というか、やっぱり粋がってる年頃というか、弾みでそんなふうになってしまうとこあったなぁと、
しかもそれを後から後悔したり恥じていて、いまだに引きずってたりしたものだから、このブギーポップというか作者の指摘にちょっと救われました。
ブギーポップでは、以前にも、歪曲王で、
喧嘩別れした友達が事故で死んでしまって、その時酷いことを言った自分を責めていた子が、死んだ友達が出て来てその子が自分は酷いことをしたのに自分に対してとても優しかったと。
そしたら、ブギーポップが、その死んだ子が優しかったというなら、君は長い間自分の優しさを歪ませていたことになる、と。その子が優しく歪曲王のなって化けて出て来たのなら、君はそれだけ優しかったことになるわけで、それがら黄金でないとするなら、何が輝けるというのかと問われる。
ちょっと記憶違いで違うところもあるかも知れないけど、まさにそんな感じのシーンがあり。
その際ブギーポップはタイトルに反して、その子に珍しくにっこり笑いかけるのだけど。
私はとにかくそのシーンが好きで。
なんか今回もそれと似たあたたかい良い感じの気持ちになれたと言うか。
あと、もう一つ。
これも鋭い指摘だなあと感じたセリフがありまして。
「前から思っていたんだけど、生成くんは、強い言葉を使いたいだけなんじゃないの。ちょっとウケようとしてるよね、呪いとか言いふらして、みんなの上に立とうとしてる気がする」
「な、なんだよ……強い言葉って、ずいぶん曖昧な表現だな?」
なんとかそう言い返すと、末真はふう、と息を一つついて、
「曖昧にしてるのは、生成くんでしょ。呪いって言葉をわざと違う風に使ってる。みんなは呪いを恐ろしいものだと思っているのに、あなたはそれを単なる”不注意”みたいなものとして使ってる。気をつければいい、って。そのズレがかなり深刻だと思う」
末真は淡々と、当然だろう、的な感じで言ってくるが、言われてる生成には何が何だかさっぱりわからない。
「おいおい、話がズレてるのはそっちだろう。なにを難癖つけてるんだ。呪いだからってそんなに怖がるな、って言ってるんだぜ、こっちは」
「その言い方が強がってるのよ、既に。あなたはみんなが呪いって言うと、そんな馬鹿なって思いながらも多少は怖がることを前提にしてその言葉を使ってる。自分は怖がっていないけれどね、って念を押しながら。でも
……気づいてないのかも知れないけど、あなた、そんなに強くないよ。無理してるだけだと思う」
末真の推察は面白かった。末真というか、作者かも知れないけど。
ここでは、単に、呪いを気をつけてどうにかなるものだと当事者が判断している時点での、ズレの「危うさ」に関して、足元を掬われないようにという警告から、末真は注意してたのかも、わからんけど。
あとは個人的に、水乃星透子様のセリフ、
臼杵への切り捨てっぷりが豪快で好みだった。
「あ、あのう、その呪いの話って、私にはよくわからないんだけど……どうすれば意識できるようになるのかな?」
と訊いてきた。これに透子は、
「ああ、臼杵さん。いや、無理よ、あなたには」
と素っ気なく突き放した。末真が眼を丸くして、
「い、いや水乃星さん。そんなことないでしょ。彼女だってちょっと話が気になっただけで、ごめんね、臼杵さん」
「ーーーーー」
少女は顔を青ざめている。そこに透子はさらに、
「あなたはもう手遅れ。呪いは完成してしまっている。できることと言ったらせいぜい、死神に見つからないように気をつけるくらい……」
と宣告した。
これ、臼杵の側からの視点を加えるとまた違った見方が出来るので、それが最後に出てくる。
そこまで見終えて振り返ると、臼杵が最悪な奴だから、水乃星透子にバッサリ言われてるところを見ると、共感するというか言われてやんのって感じですごく気持ちが良い。
あと最後に、呪いとは、についてブギーポップが語ってるところがあり、それが本当にその通りだよなあと思う哲学的な解釈だった。
「呪いとはなんなのか、それを定義するのは意味がない。なぜならおそらく、生命というものがすべて呪いだからだ。この世に生まれ出てきた、それ自体が呪いなのさ。生まれたからには、いつか死ななければならないーーーその苦痛を、ずっと味わい続けるのが生きるということだ。君たちは呪われるために生きているし、その苦痛を他に押しつけることで憂さ晴らしをしている。それはすなわち、自分以外の何かを呪っているということだ。呪いは循環しているし、それが途切れるときは世界が終わるときだ」
黒帽子の声はあくまで平静で、そこに乱れがない。そして、真剣みも薄い。異様なことを言っているのに、そこには押しつけがましい”圧”が薄い。そもそも何を言っているのか、いまいち理解できないし。
「せ、世界ってーーーあんた、その敵がどうとか、さっき言ってたじゃない」
なんとか言い返してみせる。これに黒帽子がうなずいて、
「そうだ。だからぼくは、ある意味では呪いの流れが終わらないように、続くように動いているとも言える」
「……は?」
「呪いは一つではない。さっき君を襲った呪いは、ぼくにとって敵だが、それは別の呪いの味方をしているということでもあるんだ」
「……呪いと呪いがぶつかり合って、戦っているっていうの?ううう、混乱する……」
私が思わず頭を抱えていると、黒帽子は、
「君は、いつも他人の悪口を言っているだろう。あれは呪いをかけているんだ。世界は悪いもので満ちている汚いものだと定義しようとする試みであり、同時に、自分はその汚濁とは切り離された、純粋な存在であろうとする呪いだ。君だけではない。みんなそういうことを生活の中で繰り返しているんだよ」
やはり、落ち着いた口調で飄々と告げる。しかしーーーそれを聞いて、私は、
「……」
絶句してしまう。しかし黒帽子はそれを責めるでもなく、といって許すでもなく、あくまで他人事のように、
「ただーーー今回のこれは、少し度が外れているようだ。裏にいるのはおそらく、”影を喰うもの”だ」
仏陀が人生は苦である、と問いたそうだが。
もはや人生哲学である。
死神に言われるともっともにも思うし面白い。
こういうところがすごく好きだ。
ブギーポップたり得る感じで、いかにも単純さはないところが捻りが効いていて、でも難解すぎないところが非常に良い。
ブギーポップの変なところも好き。
で、作者のあとがきのラストに、マイクオールドフィールドのtubular bells part1 がBGMと書いてあって。呪いらしくて、いいなと思いました。