俳句日記②
愛別離苦たんぽぽされど風を待つ
早春の野のまだ肌寒い空気の中に、黄色い花弁を凛と広げていたたんぽぽが、もうすっかり綿毛に変わっている。
中には、綿毛まですっかり飛ばし終えて、頭は丸坊主になってしまい、細い茎だけが風に寂しく吹かれているものもちらほら見られる。
春も終わろうとしているのだ。
綿毛はどこまで飛んだのだろうか。
まだ、旅の途中なのだろうか。
綿毛を飛ばし終えたたんぽぽは、綿毛のことを思っているのだろうか。
そんなことを書けば、擬人法が過ぎると言われてしまうだろうか。
けれども幼い頃、あのたんぽぽの細い茎を折り、中から乳色の液体が流れ出たとき、たんぽぽは母親なのだと思ったことがあった。
花には花のたましいがあり、そこには深くて優しい夢が静かに静かに流れているのだ。
そんなことを思いながら、今年も春は過ぎてゆく。