『7月24日通り』
吉田修一さんの作品です。
この小説を読んでも何も感じない人、あるいはこの主役の女性に嫌悪感を感じるのみの人は、なんて幸せな人生を歩んでらっしゃるのだろう。羨ましい。
私も嫌悪感を感じなくはない。ただその嫌悪感は、自分の内面を合わせ鏡で見せられてしまった、自分の隠してる部分を突きつけられてしまった焦燥感。抉られてしまった疼痛感。
「間違えたくない」って生きてく上で大事な感覚なんだと思う。その感覚のおかげでホモサピエンスは繁栄してきたんだろうし。
でも時には、大局的に見た時に、「間違えないために間違えてみる」というのも必要なんだな。
でもこの一歩がなかなか踏み出せない。それは今までの自分を変えることだから。変えるということは、否定するということに等しいから。
ただこの一歩。読者のほとんどが予想、もしくは期待していたのとは真逆の一歩だったのに、読後残っていたのはある種の痛快さだったのだから、作家って凄いな。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?