リスペクト
タランティーノがまだ何者でもない時、勉強もろくすっぽせず、日の目を見るあてもない脚本を来る日も来る日も書いている姿を目にし、彼の母は皮肉を込めて「お前のやっていることは何の価値もない」という類のことを伝えたそうな。
タランティーノは生涯それを忘れず(まだ死んだ訳ではないけども)、子どもの夢をいともたやすく摘み取る大人に対しては辛辣な態度に出ている。
母親にその時言ったそうだ。「この先僕がこの世界で成功してもあなたにはビタ一文やらない」と。
そしてその言葉を、世界的に成功を収め、それこそ桁違いのマネーを叩き出した今になっても忠実に守っているらしい。
実の親になんて理不尽な仕打ちだと思われる方もいるだろう。赤の他人ではないのだし、子どもの行く末を心配するからこその提言ではないかと、それも親の責任ではないかと言われる方も。
ただ私はタランティーノの気持ちがよく分かる。
親だからこそ、認めてほしいのである。それができないのなら、せめて放っておいてほしい。
「親だから」という理由のみで不問に付さなかった彼を、私は立派だと思うし、自分は決してそんなことはしないという覚悟をも感じる。
人が人の夢をけなしていいわけがない。それが例え血を分けた子でもだ。
子は親の所有物ではない。完全な別人格である。
子をリスペクトできない親が、子から「親なのだから」という一点のみでリスペクトされようというのは、どだい虫が良すぎる話なのである。