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編集とデッサンは似ている?
デッサンをするときはどこを目立たせて、どこを大人しくさせるかを意識します。
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これによって、絵を見た人の意識を促し、絵の中で見てほしいところを際立たせます。
一度、全体を描いた後、大人しくさせたいところを練り消しで薄くします。
本を作る際にも、似たような作業はあるでしょうか。
想定よりも原稿量が相当に多くなることが、これまで何度もありました。
出版社側としては、ページ数が増えて印刷代がかさむことも心配です。
ただ、もっと気になるところは他にあります。
もっとも気になるのは、あれもこれも触れているので、伝えたい内容がぼんやりとすることです。
著者は、全てを、正確に、伝えないと正しく読んでくれないのではと不安になるかもしれません。
ただ、内容を盛り込みすぎ、かえって大事な点が読者に伝わりづらくなるのも事実。
その場合、原稿を削る作業が必要になります。
いかに削るかは、常に悩ましいところです。
過去に、金融の歴史の本を担当したことがあります。
その際、原稿量が想定よりあまりにオーバーしていたので、著者に削るよう相談をしました。
するとその著者は、「原稿は自分の子どもみたいなもの。削るなんで忍びない、できない」とのこと。
代わりに私が削り、削った原稿を著者に確認してもらう。
このように推敲を重ねて完成にいたったことがあります。
このときは削る作業に、非常に神経を使って注意しながら行った記憶があります。
他人の原稿に手を入れるのは、私自身したくなかったですが、仕方ありません。
ただこの作業によって、大事な箇所が際立ったことは大きなメリットでした。
私がよく気づくのは、目次作りのときです。
目次作りの際、特定の章が他章に比べ、特別長くなっていることがあります。
つまり、見出しの数がやけに多くなっている。
この現象は、あれもこれも、多くの話題に触れている一つの証。
強調したい話題を軸に、整理する必要があります。