日本初のプロトタイピング専門スクールに入学してプロトタイプの筋肉の動かし方がわかってきた気がする。
2021年4月14日に日本初のプロトタイピング専門スクールであるProtoOut Studio(プロトアウトスタジオ)に入学して2ヵ月が経ちました。9回の授業と1回のハッカソンを終えて、卒業制作に入った今のタイミングで自分がどのように変わったか振り返ってみます。
何も作れないSE、プロトタイプの道具を手に入れる
システムエンジニアとして10年以上働いているのですが、正直なところ「自分ひとりで何か作れ」と言われても何も作れないことにコンプレックスを持っていました。仕事が長らくWindowsサーバーの保守運用やプロマネ業務なので、プログラミングとは接点がなかったというのも理由の1つです。
プロトアウトスタジオの方針は(のびすけ校長のnoteを引用すると)「美味しいカレーを作るためにスパイスの勉強に時間を掛けるのでは無く、カレールーを買ってきてサクッと作って家族にカレーを振舞ってみる。フィードバックをもらってそこから改善していこう。」です。公開されているコードとコードをつなぎ合わせて自分がやりたいものを作って「(どうして動いているのか細かいことはわからないけれど)動いているからヨシ!」が正解の文化です。
個人的には基礎から学びたい性格なのですが、何か作ろうと思ったときに必要な技術要素はJavaScript、HTML、CSS、IoT、通信プロトコル、と膨大な範囲に及んでしまうのでこれをすべて基礎から学ぶのは無理があります。1度も作ったことがないのに、それを作る学び方なんて気持ちが続きません。なので、見様見真似で一回作って動く楽しさを覚えて、その後で自発的に「この部品はなんだろう?」と調べていく。そうすれば学習が続いていくように思います。
入学前は「何か自分がやりたいものを1つ作る」という課題はかなり高い壁のように感じていました。まず何をしていいかわからないし、やれるだけのプログラミング知識の自信もありません。プロトアウトスタジオでは「他の人が再利用していいよ、とコードを公開しているサイト」や、簡単に無料で使えるデータベース、LINE APIや様々なAPIの使い方・探し方を教えていただけました。そうです、こういうのをずっと知りたかったのです。(しかし探し方がわからなかったのです)。これでプロトタイプする道具を手に入れることが出来ました。
自由にしていいよが苦手なSE、課題を見つける「型」を覚える。
次に精神面の話です。プロトアウトスタジオでは「〇〇の技術凄いからやってみた」は基本褒められません(なくはないですが)。「〇〇が困っているからやる!」「△△が楽しいからもっと楽しくする!」という、そのプロダクトを作るための説得力ある理由が必要とされます。
仕事でいえば「上にやれ、と言われたからやる」ことが当たり前な私にとって「自由に課題をみつけてね☆」というのは何していいのか全然わかりません。そういえば学生の頃から「自由に絵をかいていいよ」とかが苦手でした。
プロトアウトスタジオでは週1回、午後13時~17時30分が授業なのですが最後に「今日学んだ技術のサンプルコード等の山から自分が作りたいものを見つけて、くっつけたり改造したりして何か作ってみよっか。なんで作りたかったのか理由つけて発表してね。」タイムがあります。タイムリミットは20分~40分です。いやいやいや!? 時間少なすぎません!?
また、授業は水曜日なのですが日曜日の23:59までに提出すべき宿題が出ます。これはさきほどの授業ラストと似たお題なのですが、違う目的・制作物のほうが望ましい、とされています。
つまりこの2ヵ月間で最低でも18個のプロダクトを考えさせられています。これだけやれば慣れるもので、だいぶフットワーク軽く「あ、この課題に対応してみよう」と思って「じゃああの部品がいいかな」と見つけて「おりゃっ」とくっつけて「こんな理由でこんなん作りましたー(作ろうと思ったけど時間切れでしたー)」と発表できるようになりました。
これはもう運動競技における「型」みたいなものなのかな、と思います。何度も何度もやることで体に覚えこませる的な。逆にいうとその訓練をしていなければ何も思いつけないのは当たり前のような気がしています。(生来課題をみつけてなんとかするぜ!って人もいるとは思うのですがそういう人は普通のサラリーマンをしていない気がします)
他人の反応が怖いSE、他人からのフィードバックに慣れてくる。
他人の反応が怖いです。休み明けのメールチェックをするまでは、休んでいる間に何か自分に対する怒りメールが届いているんじゃないかと思って不安になります。(実際そんなに怒られるような仕事はしてないので気にしすぎだとわかっているんですが、なんでか月曜の朝は緊張します)
プロトアウトスタジオでは「フィードバックを受ける」ことを重要視しています。自分ががんばって作ったものを他人に批評される場に出すのは怖いことです。いっそ出さずに自分だけが自分の作品に満足していればいいとすら思いますが、それではダメだ、というのです。未完成で不格好なものを見せたくない、という気持ちはわかるが、短期的な恥を恐れてフィードバックをもらわないのは長期的なリスクになる、という考えです。仕事で言うと顧客のフィードバックが怖いから避け続けて、完成してから納品したら顧客が望むものと全く違ってた、直す時間ももうない、みたいな話です。
プロトアウトスタジオでは週の宿題が3つくらいあり、そのすべてに動画でフィードバックされるのでリアルタイムもしくは録画でその動画を見ることになります。まあこれが怖い怖い。怒られたりすることはないのですが、やはり自分が力をかけて作ったものが褒められるのかイマイチと言われるのかはハラハラします。思えば社会人になってからこういう機会はほぼありませんでした。
というわけでざっくり計算ですが3つ×9回=27個のフィードバックを受けてフィードバックに慣れてきました。豆腐メンタルが高野豆腐メンタルくらいにはなれた気がします。
記事を読む専SE、記事を発信するのが楽しくなる。
プロトアウトスタジオでは全てに発信が求められます。技術的な宿題の目的と成果物を1記事とそれに至る技術記事2本をQiitaに、卒業制作につながるアイディアをnoteに、そしてそれらすべての投稿はTwitterで告知、という具合です。
こんな頻度でネットに記事をあげるなんて、ホームページビルダーでhtmlファイル作って手打ちでタグ修正してFFFTPでアップロードする生活をしてた大学生時代以来ですな。(同世代へ刺され)
社会人となってからはとんと発信をしなくなりました。自分の技術力に自信がないから書く内容の価値のなさが辛いし、そうなると文章を書く時間がもったいなく思えてくるからだったと思います。そもそも普通に仕事をこなしていると「書きたい」と思えることもそうない気がします。そうして記事を読む一方の生活をしていました。
プロトアウトスタジオで無理やりにでも発信させられると、自分の技術力は変わっていないのに見ず知らずの方に「LGTM(いいね)」をもらったり、記事を「ストック(あとで読む)」してもらえました。
そうなると楽しくなってくるのが人間というもので、課題として言われていない製作過程の試行錯誤なども自発的に記事化してしまっていたりします。
非コミュSE、いいねをもらう。
プロトアウトスタジオで一番苦手だったのが「自分のファンを作れ」「アカウントを育てろ」という課題でした。これは卒業制作はクラウドファンディングで実際にお金を払っていただく、であることに絡みます。”クラウドファンディングは理性的なお金の使い方ではない”ので理性を超えたところにある”共感”が必要、”共感”してくれる支援者を作っておけ、というロジックで、それは納得できるのですが「じゃあやれ」と言われると苦手中の苦手ジャンルでした。そんなコミュ力があったらSEなんてやってませんよ(暴論)。
プロトアウトスタジオ同期は「育児」だったり「ガンダム」だったり「ハムスター」だったりでアカウントを育てていました。そういう熱量があるジャンルが私にはありません。困りました。
ここで「その制作物自体には興味はないけど”がんばってるから応援してやるか”」という感じでクラウドファンディング締め切りギリギリで支援をもらってSUCCESS(成立)したパターンの話を伺いました。ちょうどTwitterでプログラミング初心者やエンジニア初心者が仲間を募集しているタグを見つけたのでここで試行錯誤の状況をリアルタイムで発信してみることにしました。これが功を奏して長い試行錯誤を超えて成功したときには39人の方に「いいね」をもらえました。
この方々がそのままクラウドファンディングの支援者になっていただけるかはわかりませんが、「いいね」をもらえて嬉しかったのでこのやり方をやって良かったと思っています。
まとめ
長くなってしまいましたがタイトルにした通り、プロトタイピングの筋肉の動かし方がわかってきた、というのが実感です。もともと持ってはいたけれど使い方がわからなかったのでうまく動かせていなかった筋肉です。
プロトタイピングというと何か特別な発見、行動のように思いますが、のびすけ校長によればプロトタイピングはITに限りません。「引っ越しのために新しい間取りを計測して、それに合った家具を買う」のもプロトタイピングですし、「過去のレシピを参考に、自分の好みのアレンジを加えて美味しい料理を作ってみる」のプロトタイピングです。そう思うとわりと日々の生活はプロトタイピングに満ちているのだと思います。
これからは卒業制作フェーズです。7月7日(水)にクラウドファンディングの発表、7月20日(火) にDEMODAY(発表会)して、7月21日(水) にクラウドファンディング終了となります。
制作過程はnoteやTwitterで報告しておりますので応援いただけると嬉しいです。
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