これからお父さんになる男性に知っておいてほしいこと
拙著子育て本を購読しようという人はほとんどが女性であろうという想定から、掲載を見送りましたが、本当はどうしても男性に伝えたいことがありました。それは「育児の不眠と孤独と疲労はシャレにならん!」ということをぜひぜひ理解してほしいということです。
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出産の疲労が全然癒せていないのに、3時間おきの授乳が始まります。初めての出産だと、お母さんもおっぱいを上げるのが初めてだし、赤ちゃんも吸うのがへたくそで力もない。途中で吸うのに疲れて眠ることも。すると3時間を待たずに腹減ったと泣く羽目に。眠れません。
そんな中でも女性は、よき妻、よき母親であろうと努める人が多いです。しかし極度の睡眠不足では、とても家事を回せるものではありません。たまる洗濯物、洗い物を見て、多くのお母さんが自分を責めます。「もっと頑張って家事をしなきゃいけないのに」精神的に追い詰められ、余計に余裕を失います。
そこで男性にお願い。夫婦で次のことをコンセンサスとして、出産前から合意形成しておいてください。「笑顔で育児すること。その余裕を奪うなら、たとえ必要な家事であろうと徹底して手を抜く。そして人間なんだから、「楽しむ」ことを決して放棄しないこと」。
頑是ない子どものやることを笑顔で受けとめるには、親の側に余裕が必要です。女性はよき母親であろうという思いが強い方が多いので、頑張ろうとしすぎて、でも不眠で疲労困憊のために頑張りたくても頑張れなくて、自分を責める人がとても多いです。頑張りやさんがとても多い。
お母さんが笑顔でいるためには、力こぶの入れどころを、これまでとは全く違う形にしなければなりません。それは「笑顔でいるために、どれだけ手を抜くか」を徹底して追求することです。整理整頓、家事を怠ったことのない頑張りやさんの女性が経験したことのない方向での努力が求められます。
しかしそれには、一緒に暮らす男性とコンセンサスを共有している必要があります。頑張りやさんの女性の中には、男性が洗い物や洗濯など、家事をするのを嫌う方もいます。「私は(育児休暇で)ずっと家にいるのに、家事ができないなんて」と自分を無言で責めているように感じるようです。
そんなことにならないよう、夫婦であらかじめ相談しておいてください。「出産後の女性は極度の睡眠不足になるのだから、家事の遂行はそもそも困難。家事を女性が全部こなそうという発想そのものに無理がある」ということがあらかじめ合意できていれば、男性が家事をしても自分を責めずにすむでしょう。
また女性は、男性が家事をする場合、自分のやり方通りにさせるのを諦めてください。上司が部下に仕事を任せたら、なるべく口を出さないようにした方が働きやすいのと同じ。男性のやり方はヘタクソに見えるかもしれませんが、仕方がない、育つまで待つしかないと、長い目で見る余裕をお持ちください。
不眠を軽減するためにも、ミルク併用を検討してみてください。子どもにもよりますが、母乳を好むようになると、ミルクをうけつけなくなることがあります。そうなると、栄養と水分補給ができるのは母乳のみとなり、お母さんは解放されることがありません。これはキツい。
初めての出産で驚くのは、「24時間ひとときも気を抜けない」という生活がずっと続くという現実。話に聞くのと実体験するのとでは大違い。仕事していたときの方がずっと楽だったと思い知るでしょう。仕事は自分のペースでできますが、育児は子どものペース。これがシャレになりません。
拷問で一番きついのは眠らせないことだと言います。出産したばかりの女性が味わうのは、まさにこの拷問に相当する不眠です。睡眠が細切れになり、しかも短い。もう、ヘロヘロに疲労困憊します。
ミルク併用にすれば、男性に授乳する作業を任せることができます。夫以外の親類、あるいは親しい人に世話をお願いすることも可能になります。そうすることで、お母さんはひとときの安らぎを確保することが可能になります。
泣いている時は「眠ってよ」と疲労困憊、静かに眠っているときは「息してる?」と不安になり、寝息を確認せずにいられない。まともな睡眠をとれないなかで、か弱き生命をつながなければという緊張感が24時間、毎日続くので、女性はヘロヘロに疲労困憊。
男性は、女性がその状況に置かれることを予見し、理解しておいてください。そして夫婦で、どのように乗りきるかをあらかじめ相談しておいてください。そうすれば、「これがウワサのヤツか」と、夫婦で落ち着いて乗りきれるでしょう。
西原理恵子さんのこの文章、夫婦で読まれることを強くお勧めします。
お母さんが、そしてお父さんが笑顔で育児を楽しめるようにすることに優ることはありません。笑顔を確保するためなら、家事でもなんでも手を抜くことをあらかじめ相談しておいてください。
そして、「お母さん自身が息抜きすること」を重視してください。頑張りやのお母さんは、「育児休暇でずっと家にいるのに、家事もできない。そんな私が遊びにいってよいはずがない」と自分を追い詰めることがあります。違います。睡眠不足なんだから家事ができなくて当たり前。そして何より。
人間は息抜きを必須とする生き物です。もしお母さんが息抜きを拒否すれば、そのしわ寄せは育児に向かいます。育児を(なるべくでよいのですが)笑顔で実施できるようにするためにも、意識的に「息抜き」を導入しなければなりません。人間なのだから、自分を人間として扱ってください。
息抜きは、パートナーである男性ときちんと相談できている必要があります。男性は、自分の奥さんに息抜きが不足していると感じたら、「無理しちゃいけないよ、息抜きしておいでよ」と伝えることが必要です。パートナーから言ってもらえたら、ずいぶん気が楽になりますから。
私たち夫婦は、年を取ってから結婚し、育児することになったので、あらかじめ育児の大変さについて心準備し、備えていたことが功を奏しました。また、自分達がトシなので、もうムリが利かないというのも、逆説的ですが助けになりました。ムリをするのを最初から諦めていましたから。
そんな私たちでも、嫁さんを追い詰め、泣かせてしまったことがありました。
それには次の記事に詳しく書きましたが、女性は本当に頑張りやさんが多く、もうこれ以上頑張れないところまで自分を追い詰めているのに、さらに頑張ろうとしてしまうからです。
でも私たちは「人間」なんです。睡眠もとらなきゃいけないし、休憩もしなきゃいけないし、息抜きも気晴らしもなければ、笑顔を失ってしまう生き物なんです。笑顔で育児をするには、人間としての弱さを受け入れ、自分に優しくすることが大切です。そのためにも、夫婦でよくよく話し合ってください。
最後に、西原理恵子さんの記事にもあるように、育児の大変なところは未来永劫続くわけではなく、いつか終わりが来るものです。首が座ったら少し外出できるし、ハイハイするなら育児支援室、歩けば手を引いて散歩できます。成長すれば子育ては途端に楽になります。
私の本を、男性はほとんど読まないでしょう。それで結構。ただ、この一連の書き込みを読んで、夫婦でよく話し合ってください。子育てはお母さんだけがするものではなく、お父さんになるあなたも一緒になってするもの。一緒に笑顔で楽しむにはどうしたらよいか、あらかじめ思考実験を始めてください。
疲労困憊しやすい、極度の睡眠不足に陥りがちの最初の数ヵ月間を、受けとめ可能なレベルに疲労を抑える。そのために、徹底して手を抜けるところを抜く。お母さん自身の余裕をどう確保するか、パートナーであるお父さんはそのために何ができるか。夫婦でよく話し合ってください。
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