新型コロナウイルスの存在証明
(新型コロナウイルスの存在証明はされていない、というツイートに対し)
存在証明って、目に見えるサイズのものでない限りほぼ不可能です。例えばDNAは二本のらせん状だと信じられていますが、それをくっきりはっきり見た人はいないです。電子顕微鏡でさえも。たくさんの「状況証拠」から、らせん状だと考えた方が矛盾がないからそう理解されています。
タンパク質はアミノ酸がつながったヒモ状のものが折りたたまれて立体的になってると信じられていますが、これも直接見た人はいません。X線を結晶に当てて屈折する様子から、あるいは強い磁力を与えて共鳴したエネルギーを探知して、そこから「こんな構造だとすると辻褄が合う」ことから、推察します。
殺人事件と似ています。誰も殺人したその瞬間を目撃していないけど、犯人のアリバイ、コンビニに残ってる映像、刃物を買った記録、供述通りの場所に凶器が発見される、その凶器と傷口が一致している、被害者との人間関係、などの状況証拠を積み重ねて、最も矛盾のない人物を絞り込んでいきます。
ウイルスの発見も「状況証拠」からでした。その未知の病原体を溶いた水は、素焼きの板を通り過ぎ、感染力を示しました。それまでに知られていた最小の病原体、細菌(バクテリア)は素焼きを通れないので、その病原体は細菌よりはるかに小さいと強く「示唆」されました。
ウイルスの単離は今でも難しい技術です。ウイルスは自分自身では増えることができず、感染相手の細胞の中でしか増殖できません。このため、ウイルスはいろんな細胞のゴミに紛れて観察しにくいです。分離するには超遠心機というものを使う必要があります。しかし超遠心機は。
原爆作るのに転用されかねないというので輸出入が厳しく制限されていますし、高額です。しかも操作が極めて面倒くさい(私は学生の頃に使っていましたが、少し重さのバランスが崩れると機械が壊れ、死ぬおそれもある)ものですから、近年は使う人が減っています。
ウイルスはタンパク質と遺伝子(DNAかRNA)の2種類の物質で構成されていることが「経験」からはっきりしてきています。で、遺伝子さえ調べればウイルスを検出し、性質も明らかにできることが「経験」からわかってきたので、今は遺伝子を調べるだけで済ますことも多いです。
ウイルスは種類によりますが、コロナだったらここの遺伝子の配列は共通だよね、という箇所があるので、そこをPCRで増幅します。増幅したサンプルをシーケンサーという機械にかけると、遺伝子の情報(配列)がわかり、さらに詳しい情報が得られます。
ウイルスは遺伝子とタンパク質の組み合わせでしかなく、そのタンパク質も遺伝子の情報から作られるものでしかありませんから、遺伝子さえ調べればかなりのことがわかる病原体です。しかも遺伝子はPCRで増幅可能ですから、ウイルスは遺伝子を調べたら、ほぼ存在証明されたと見なせます。
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