ボソッと口にする言葉の効き目
「ボソッと本音を漏らす」作戦って、かなり有効。
知人の家に行くとランドセル問題が。子どもの選んだ色が奇抜すぎて、本人の性格も考えると「買い替えて」と早々に言い出す確率が高いということで悩んでいた。
私はYouMeさんと雑談する格好で「最初はいいけどすぐに薄汚く感じる色ってあるよね」。
YouMeさんも「そうそう、地味な色って時間が経つほど味が出てきたりね」。そのまま別の話題にシフトしたけど、子どもがオモチャで遊びながらも大人の会話に耳をそばだててるなあ、とは感じていた。
その後、本人も家族も納得の色のランドセルに落ち着いたというお礼の電話があった。
また、別の話。
「みんな塾に行ってる。(塾に通っていない)僕が勉強できないのは仕方ないよ」と知人の子どもがぼやいていた。
私はYouMeさんに話しかける形で「でも、塾に通わずに勉強できるって一番カッコいいよね」「そうよね」とやりとりすると、その子はエッという反応、そして目がキラーン。
その後、その子が自発的に勉強を始めたという連絡をもらった。
こうしたの、本人を説得するかのように語りかけると大して効果がないんだけど、世間話、一般論として話題に上げ、近くにいるその子が聞いてるとは思わず、ただ会話を楽しんでるだけ、という格好だと、著効を示す。
本人を説得しようとしてしまうと、「オレを意のままに操ろうとしている」と反発される。しかし本人がどう受け止めようと知ったことか、スルーしても何とも思わない、という感じで話してすぐ話題を変えると、一般論として語られただけに説得力を子どもは感じるらしい。
子どもらはお箸の持ち方が変でたまに持ち方を教えはしたけど、「無理をしなくていい」と伝えていた。「手が小さい間は無理。まあ、中学生くらいに体が大きくなったらできるんじゃない?」と言って放置。
そしたら、何とか中学生になるまでに箸の持ち方を覚えようとたびたび挑戦し、できるように。
もし、箸の持ち方をしつこく教えていたら、子どもはムキになって覚えようとしなかったかもしれない。私がまさにそれで、母親にたびたび変だと言われたからムキになって直そうとしなかった。中学生になってようやく恥ずかしくなって直したけど。言われれば言われるほどやらないのが子ども。
うちの子どもは好き嫌いが多かった。私とYouMeさんは「子どもは本能的に自分に必要な栄養素を知っているのでは?」「トシをとれば味覚が変わるのでは?」という仮説をとり、無理に食べさせることはしなかった。その代わり、「ま、大人になったら食べられるよ。小さな間はしゃあない」とつぶやいてた。
すると、もう小さな子どもではない、日々成長し大人に近づいていることを証明したいのか、苦手なものも「挑戦してみる」と何度も食べてみて、少しずつ苦手を克服。2人とも苦手はあるものの、いろんなものを食べられるようになった。
もし「残さず食べなさい!」「好き嫌い言っちゃダメ!」と強制していたら、食べず嫌いが固定化して、何を言っても食べようとしなくなっていたかもしれない。「まずい、なんて言ったら一所懸命に作ってくれた人に失礼、苦手と言うように」だけ注意してた。すると挑戦しては「まだ苦手」と言いつつも、
食べられるかも、と思うと挑戦をすることをやめなくなり、苦手を克服していった。強制し、本格的に嫌い、拒絶に追い込まなければ、子どもは「大人になりつつある証拠」を示そうと、挑戦をやめなくなるらしい。
「大人になったら食べられるよ」という言葉のデザインは、君はまだ子どもだから幼くてできないんだよ、という裏メッセージになる。このため、「親の想定を超えて苦手を早く克服してやる」というもくろみが生まれるらしい。
子どもは大人の「意外」に出るのが大好き。何をすると意外になるのか、言葉をうまくデザインすると、子どもは何とか早くに意外に出ようと目論む。親が子どもを急き立てて何かさせる必要はない。親がゆったり構えているからこそ、子どもはその裏をかこうとする。親が急くと子どもは動かなくなる。
子どもは基本、アマノジャク。真正面から言葉をぶつけると、かえって動かない。まさか動くはずがないと思ってるけどね、なんてデザインの言葉を、子どもに語りかけるのではなく、大人同士の会話の中でたまたま出た感じだと、子どもは思いのほか耳をそば立て、「意外」に出ようとするようだ。