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ビジネス#2 | いまさら聞けない持株会社

最近の仕事ではよくHDを耳にする。調べてみたら、起源は英語の”holdings”で、日本語では持株会社、もしくはホールディングス。

HDって普通の企業と何が違うのか。また、なぜ企業がある段階に来たら持株会社に移行するのか、疑問をたくさん抱えてたので、色々考察して纏めてみた。

■ 実は子会社を作ること

経理やITなど、会社の間接的部門をSSC化し、全社(持株会社の場合は本社や子会社を対象に)にマネジメントサービスを提供し、そのコストを運営費などで回収するようなやり方は、昨今の会社では少なくない。また、分社化の流れの中で、SSCも一つの子会社として設立するケースもある。

今回のお題のHD移行は、間接部門だけでなく、中核部門(もしくは中核事業)も本体から切り離して子会社化し、切り残された本体はHDと呼ばれる。例えば、販売機能を分離し、販売会社として独立させ、本体は持株会社に移る。もしくは、とある事業の製造・販売等に関する一切の業容を分離し、新しい会社として承継し、本体は持株会社に移る。

■ 持株会社へ移行した事例

日本では1997年に純粋持株会社が解禁され、21世紀の最初の10数年、沢山の企業が持株会社に移行した。

注:1947年設定された独占禁止法は、複数の企業が繋がりを強め事業支配の及ぶ範囲を広げて競争制限的な影響を及ぼすことを防止するために「企業結合規制」を定める。

花王や、松屋、ヤマダ電機などよく知られている企業は基本持株会社へ移行済。昨年末、パナソニックも2022年4月に持ち株会社体制へ移行し、社名を「パナソニックホールディングス」に変更すると発表した。

パナソニックの持株会社移行

■ 持株会社体制にする一番のメリット

間接的部門を子会社にした場合は、機能を統合し、バックオフィスコストを削減し、コストシナジーを創出する効果が得られるだろう。また、中核部門を子会社にした場合は、本社から子会社に裁量や権限を委譲し、子会社の自律的な経営、意思決定のスピード化・品質向上、モチベーション付けなどに資することが可能で、グループ全体から見ると、リスクの分散、節税効果などが得られると色々言われている。

組織の発展段階の中では、概ね機能別組織  → 社内カンパニー → 事業持ち株会社 → 純粋持ち株会社といったステージがある。後にいくほど、事業の独立性を高め、経営責任を明確にし、より大きな裁量や権限を与えて意思決定スピードを速め、その結果、その事業を推進することが可能と考えられる。

なお、上記の効果だと事業部制、社内カンパニー制もある程度実現できるので、会社を分割させる程度には至らないのでは、と疑問をもっていた。

色々読んで自分のなかで納得した観点としては、以下2つある。

①キャッシュの流れを拡大すること。

分社の結果、今まで自社の製造した商品しか販売してない営業部門は、仕入原価を抑えるため、他社が製造した安い商品を仕入れて、販売し、利益を稼ぐ。今まで自社の営業部門を通って市場に投入した製造部門は、営業部門以外の他社にも買われるため、製造原価を抑え、品質を向上させるような循環に繋がる。同じ社内の事業部、もしくは社内カンパニーでは、あくまでは、一つの会社の中の別の部門なので、そこまでの効果が得られにくいだろう。

②M&Aや事業再生をしやすくすること。

会社経営の中では、黒字事業をどんどん伸ばし、赤字事業に対して損切り決断を行うことが一般的な考え。同じ会社の中にある場合、社内取引が見えなかったり、見える化しても完全に自律的な運営を行うのが難しい。持株会社へ移行することにより、内部事業の採算性が見え、ある程度M&Aや事業再生の決断に資するのだろう。会社自体が分かれているのであれば、M&Aや事業再生の手続きやオペレーション上の負荷もある程度抑さえられると推測。

■ 持株会社から逆戻りするリクルート

なお、たくさんの会社が持株会社へ移行するなか、その流れに逆行し、一度作ったホールディングス体制を改めて統合する会社もある。

例えば、2021年4月1日付で孫会社7社を統合するリクルート。今までは「HR テクノロジー」、「メディア&ソリューション」、「人材派遣」といった3本の柱で事業を推進してきた。今回統合されたのは、かつて「メディア&ソリューション」の領域で中核事業会社・機能会社として設置された以下7社。

・株式会社リクルートキャリア
・株式会社リクルートジョブズ
・株式会社リクルート住まいカンパニー
・株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
・株式会社リクルートライフスタイル
・株式会社リクルートコミュニケーションズ
・株式会社リクルートテクノロジーズ

これら各中核事業会社・機能会社が培ってきた事業運営ノウハウや多様な人的資産をリクルートに集約し、更なる提供価値の向上と、新しい価値の創造による社会への貢献を目指すために、本吸収合併によって、中核事業会社・機能会社をリクルートに統合することが最適であるという判断に至りました。
(リクルートHP
https://www.recruit.co.jp/newsroom/notification/2021/0105_18937.html)

この動きによって、恐らくHotpepperなどで蓄積された顧客データベースのグループ内共有や、人材の最適配置、ベストプラクティスの横展開などが狙い目ではないかと思料。特にライフスタイルや、コミュニケーション系のサービスに関して、ビッグデータの蓄積で勝負する事業となるため、逆行するように見えるが、実は時代の流れに順応している。

まあ、グループ経営の議題は昔から存在し、古くて新しい。企業の発展ステージ、事業特性により、グループからみた最適な姿も変わっていく。時代の荒波の中で泳いでいる企業たちの姿をウォッチするのも実にオモシロイね。

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