高校を卒業したら死のうと思っていた

高校を卒業したら死のうと思っていた。
別に冗談でもなんでもなく。

高校を卒業したら死のうと思っていた。
“やることがなかった”からだ。

結局、今は生きている。
しかもそこにストーリーがあったわけでもなんでもない。

死のうと思っていた人間が「やっぱり生きよう」と思うまでには大体なにかしらストーリーがあるものだが。

僕にはそれがない。

ほとんど全てがなんとなく。というなんの面白みもない理由。
そう、僕はなんとなく生きることにした。

高校三年生の僕がなんとなく生きることにしただけだった。

それが20年も続いてしまっている。

人間には"やる気"という概念がない。という話に実感がある。

なんとなく生きることにした僕は、なんとなく受験勉強を始めた。
なんとなくだったし塾も予備校も通っていない。

独学で普通に勉強して、普通に合格した。
志も何もない。

でもそのなんとなくのみで、一日10時間くらいの勉強ならできてしまう。

なんとなく友達もできた。
なんとなくバイトもできた。
なんとなく恋人もできた。

なんとなく大学を卒業した。
なんとなくバンドを組んで、なんとなくCDをリリースした。

なんとなく好きなアーティストにもほとんど会えたし、
なんとなくオールナイトニッポンをやれたりもした。

なんとなく音楽フェスにも出演した。

考えてみてほしい。
あなたが感動する時ってどんな時だろうか。

ずっと見たいと思っていたものを見られたとか。
願って願って願って、やっと叶ったとか。

そういうのが感動する時じゃないだろうか。

だとすれば僕の人生にはどう考えても感動が少ないはずだ。
何故なら、僕は人生のほとんどがなんとなくなのだから。

なんとなく始めたことが、それなりに上手くいったりしてしまう。
そんな人生に面白みがあるだろうか。

想像してみてほしい。

僕があの日、高校を卒業したら死のうと思っていたのは、それがどうしようもなく合理的だったからではないだろうか。

こう思わずにはいられない夜があるのも、当然のことじゃないだろうか。

こんな人生がいつまで続くのかもわからない。

けど、きっと死ぬ時もなんとなく死ぬのではないだろうか。

そしてそれで困る人なんて自分も含め誰もいないのではないだろうか。


THURSDAY'S YOUTH
篠山浩生

いいなと思ったら応援しよう!

篠山浩生 / 椎 / シイ。
良ければサポートをお願いします。良くなかったら大丈夫です。

この記事が参加している募集