＜島根・東京＞森鴎外没後100年、津和野から鴎外忌の谷根千散歩
2022年は森鴎外没後100年でした。山陰の山に囲まれた町に生まれて明治大正という日本がまだ国際的に小さな存在だった時代に世界を股にかけて活躍した鴎外は興味深い歴史人物です。津和野の鴎外生家、そして鴎外忌（７月９日）に文京区立森鴎外記念館を訪ねました。
津和野町歩き
津和野は“山陰の小京都”と呼ばれる城下町。堀割に錦鯉が泳ぐメインストリート殿町通りには藩校養老館跡、郡庁跡、家老宅、カトリック教会などの史跡がたち並んでいます。城下町を散策するのならば徒歩で十分なのですが、森鴎外旧宅からさらに津和野城跡、太鼓谷稲成神社まで足を延ばすとなると一日では厳しいものがあります。津和野駅前にあるレンタサイクル店で電動アシスト自転車をレンタルしました。
津和野で真っ先に思い浮かべるのは鷺舞。それは重さ12kgある鷺羽を身につけて町内９ヶ所で舞う、弥栄神社に400年伝わる古典芸能神事です。町のほぼ中央、殿町通りと高岡通りが交わる津和野川のほとりに鷺舞の像がありました。ここから、チャリのスピードをあげて森鴎外旧宅へ。
森鴎外（林太郎）は代々津和野藩主亀井家の御典医をつとめる家に1862年に生まれました。石見国鹿足郡津和野町で暮らしたのは上京するまでの10年間、その後再び故郷に戻ることはありませんでしたが、遺書に残した「余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス」という言葉から故郷に対する思いが感じられます。
津和野の絶景ポイントへ
城下町を見下ろす霊亀山頂に聳える津和野城の城跡、城の鬼門に建てられた願いごとがよく叶うという噂の太鼓谷稲成神社も外せない津和野観光スポットです。自転車を駐輪して、津和野城跡観光リフトに乗ってあがります。リフトには、くまちゃんも乗って、お仕事していました。
リフトを下りてからもけっこう歩かなければなりませんが、津和野城跡から見る風景は絶景！歩いたかいがありました。
太鼓谷稲成神社、本来ならば表参道千本鳥居から徒歩であがってこその大願成就なのでしょうが、津和野城跡観光リフトから近かったのでありがたく石段を上る苦労を省略させていただきました。特製御朱印帳は津和野ならではの錦鯉やＳＬが描かれています。
津和野銘菓
津和野城跡と太鼓谷稲成神社まで踏破した津和野散策の〆は甘党だった森鴎外にちなんだスイーツかなと、スマホで調べてみると、白飯の上にお饅頭を乗せて熱い煎茶をかけた饅頭茶漬けとか…。容易に食べられるものではなさそうだったので、この日は有名な源氏巻と津和野焼きアイスをいただきました。餡をカステラ状の生地で巻いた源氏巻、その由来は江戸元禄時代に指導役の吉良上野介からいじめを受けていた藩主亀井茲親を救うため、家老多胡真蔭が上野介のご機嫌を取るために贈ったお菓子。このお菓子によって津和野藩は赤穂事件のような大事に至らなかったと言えるかもしれません。
津和野焼きアイスは、熱々ブリオッシュに冷たいアイスをはさんだスイーツです。
鴎外忌の谷根千散歩
森鴎外は10歳で上京してから、向島、千住、根岸、池之端、向丘と都内を転々とし、1892年30歳で文京区千駄木に居を構えて亡くなるまで30年間家族と共に暮らしました。団子坂の上に位置し、そこから東京湾が見えたことから、観潮楼と名付けたと言います。団子坂の由来は団子屋があったからとか、道悪のせいで転ぶと団子のようになるからとか。現在よりもずっと狭くて急な坂だったようです。この坂の上には森鴎外以外にも、夏目漱石や高村光太郎、近所には正岡子規も住んでいました。観潮楼は永井荷風、芥川龍之介、石川啄木、齋藤茂吉など多くの文人が訪れ、文人たちの社交場となりました。日清戦争戦地で出会った正岡子規とは互いに家を行き来して文学を以て交流しました。
観潮楼跡地に建てられたのが文京区立森鴎外記念館です。７月９日鴎外忌に訪れたので、森鴎外生誕160年没後100年開館10周年記念ステッカーをいただきました。
館内カフェMORIKINE CAFEでティータイム。鴎外だからか紅茶はドイツのロンネフェルト社製。シュネッケンと白ワインをオーダーしました。シュネッケンとは、ヘーゼルナッツとシナモンを含んだ生地を巻いたドイツの一般的なデニッシュです。添えられたバニラアイスにマンゴーソースがかけられていました。白ワインもドイツ製かなと想像しながらいただきました。
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