バッドジーニアス

【右脳めし】何度観ても飽きない要因を分析してみた|バッド・ジーニアス(映画)

2019年最初の映画は【雑記帳】2018年に観た映画で心に残った映画 私的ベスト1にも挙げた「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」にしました。
昨年分と合わせて4回目の鑑賞です。

本編だけで130分(上映予告を入れると150分くらい)という上映時間の長い映画ですが、今回も最初から最後まで飽きることなく楽しめました。
ただ楽しむだけでなく、テクニカルな分析を始めましたが、気がつくとのめり込んでしまっています。

この映画のジャンルは「クライム・サスペンス」。犯罪事件を扱い、スリリングな展開が繰り広げられる映画のことです(カンニングは刑事罰にはなりませんが)
同じジャンルの映画としては「オーシャンズ11」があります。
実際、この映画は「高校生版オーシャンズ11」と評されています。

ストーリー

【引用:バッド・ジーニアス公式サイト】

小学生の頃からずっと成績はオールA、さらに中学時代は首席と天才的な頭脳を持つ女子高生リン。裕福とは言えない父子家庭で育った彼女は、その明晰な頭脳を見込まれ、晴れて進学校に特待奨学生として転入を果たす。新しい学校で最初に友人となったグレースを、リンはテストの最中に“ある方法”で救った。その噂を聞きつけたグレースの彼氏・パットは、リンに“ビジネス”をもちかけるのだった。

それは、より高度な方法でカンニングを行い、答えと引き換えに代金をもらう──というもの。“リン先生”の元には、瞬く間に学生たちが殺到した。リンが編み出したのは、“ピアノ・レッスン”方式。指の動きを暗号化して多くの生徒を高得点に導いたリンは、クラスメートから賞賛され、報酬も貯まっていく。しかし、奨学金を得て大学進学を目指す生真面目な苦学生・バンクはそれをよく思わず…。そして、ビジネスの集大成として、アメリカの大学に留学するため世界各国で行われる大学統一入試<STIC>を舞台に、最後の、最大のトリックを仕掛けようとするリンたちは、バンクを仲間に引き入れようとするが…。

今回は、何度観ても飽きない要因を分析してみました。
結果、3つのポイントが見つかっています。

ポイント1:BGMの使い方

BGMは大きく2種類あります。
「メロディアスな曲」と、パターンの反復で構成された「ミニマルな曲」です。
バッド・ジーニアスでは、ミニマルな曲が多く使われていました。
特にスリリングなシーンで多く使われています。

どちらかというと、映画音楽は「メロディアスな曲」が使われます。
「ミニマルな曲」がよく使われるのはゲーム音楽です。
それには理由があります。

映画の場合は、映画の展開と音楽の展開が合うように編集できますが、ゲームの場合はプレイ時間の長さがプレイヤーによって異なる為、状況に合わせてメロディをのせることができないのです。
だから、ゲームの場合は、限定的な雰囲気のミニマルな曲を流し、展開が変わると別の曲に切り替えます。

例えば、穏やかな曲が流れていて、そこからボスステージに映るとスリリングな曲に入れ替わる。
ボスを倒すまでの時間は人それぞれなので、ボスステージでは、スリリングな雰囲気を維持したまま一定の長さで繰り返される曲が流れ続ける。
といった感じです。

「バッド・ジーニアス」のスリリングなシーンの場合は、観客がこれからどんな展開になるのか、ドキドキしながら見守ることになります。
このドキドキしたシーンが、メロディアスな曲で、わかりやすく転調し、その調べに合わせた展開を意図的に見せられると、予測不能なドキドキ感がなくなってしまいます。

だから、スリリングな雰囲気の曲を短いパターンで繰り返し、いつその雰囲気が別の展開になるのか、観客はドキドキしながら見守ることができるのです。
で、展開が変わると曲を切ったり、別の曲に変えたりします。

だから、スリリングなシーンが多い「バッド・ジーニアス」では、シーンに合わせたミニマルな曲が何曲も用意されていました。
スリリングな展開を壊さず、観客のドキドキ感を維持させるミニマルな曲が、この映画を飽きさせないポイントの1つとなっています。

ポイント2:総合力の高さ

「バッド・ジーニアス」は“スタイリッシュな映画”と称されています。
かといって、凝ったカメラアングルにしているわけでもなく、アーティスティックな映像になるよう加工しているわけでもありません。
どちらかというと、対照をわかりやすい画角で的確に取らえた映像です。

テンポ良い映像のつなぎ方で、編集が優れているという点はあります。
しかし、よく見直すと、優れているのは編集だけではありませんでした。
役者の演技、カメラワーク、BGMと効果音、それらを組み合わせる編集の4つが見事にマッチしているのです。
その総合力の高さが、「バッド・ジーニアス」の映像をスタイリッシュにしていると感じました。

例えば、この映画では筆記試験のシーンが何度も描かれるので、紙をめくったり、鉛筆を走らせる効果音が、とても印象的です。
筆記試験は主人公を含む数十人で受けますが、紙と鉛筆の効果音を全員分流すことは、ほとんどありません。
全員一斉に試験を始めた時のショット以外は、画面に映る主人公の分の効果音しか流れません。周りに映る人が音が出そうなアクションをしていたとしてもです。

それを不自然にさせないのは、主人公が観客の目を逸らさない演技をしていることと、先に挙げたミニマルな曲をさりげなく重ねて「他の音がない」印象を消しているからです。
こうした総合力の高さが、飽きることなく、また疲れることなく、映画に没頭させてくれています。

ポイント3:豊富な感情表現

この映画の登場人物は、4人の主人公と生徒、先生、家族だけで、そう多くありません。なのに、人間が持つ様々な感情が表現されています。

緊張、安堵、羨望、悲観、楽観、信頼、裏切り、正義感、狡猾、苦悩、軽薄、嘲笑、絶望、恋心、渇望、狂気、軽蔑、叱咤、失望、孤独、親子愛、拒絶、恫喝、期待、恐怖、焦り、憔悴、興奮、パニック、呆然、後悔....。

たぶん、主人公が高校生で、感情を表に出しやすいからでしょう。
「オーシャンズ11」のように大人ばかりだったら、ここまで感情豊かにはならなかったと思います。
こうした豊富な感情表現がストーリーのスパイスになっていることに加え、キャラクターを身近に感じ、愛着を持ちやすくしています。

だから、何度見ても面白い!

Blu-rayが出たら必ず購入すると思いますが、その前に劇場で観られるだけ観ておこうと思います。
現在、東京では新宿武蔵野館や下高井戸シネマで上映中。東京以外でも上映中の映画館がありますので、ご覧になっていない方は是非どうぞ!

サウンドトラックも発売して欲しいなあ。

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