「聴く」ということ
本当に子どもの話を聴けていますか?
「子どもの話をちゃんときいています」、「どうしたいのかを、子どもにきいています」と言う親御さんは多いです。
ですが、この「きく」という行動には、実は無意識の偏見や思い込み、つまりアンコンシャス・バイアスが大きく関わっていると感じることがあります。
「聞く」と「聴く」
「きく」には「聞く」と「聴く」の二種類の漢字を思う人が多いと思います。辞書で調べると、「聞く」は「音や声を耳で感じとること」で、「聴く」は「心を集中させてしっかりと耳に入れること」です。子どもと向き合うとき、表面的に「聞く」だけではなく、本当の意味で「聴く」ということが求められます。
多くの育児書でも「子どもの目を見て話を聴きましょう」と書かれています。しかし、いくら目を見ていても、こちら側にバイアスや思い込みがあると、ただ聞こえているだけで、本当に子どもの声を「聴けている」かどうかは疑問です。
このことは、誰に対してでも大切なこと。相手の言葉をきちんと受け止めている?と、一度、自分に問いかけてみましょう。
子どもの言葉をそのまま受け止めること
例えば、子どもが「クラスに苦手な子がいる」と話してきたとします。その時あなたはなんと応えますか?
例えば、「そんなこと言わずに、その子のいいところを見つけて仲良くしなさい」や「気にしないで他の子と遊びなさい」と応えると、子どもの気持ちを無意識に否定していることになります。
子どもが欲しいのは「解決策」ではなく、「そう思っているんだね」という共感や理解。まずは、「そっか、苦手に感じているんだね」と子どもの言葉をそのまま受け止めることで、子どもは自分の気持ちを否定されず、安心して本当の気持ちを伝えやすくなるのです。
これは私たちも同じですよね?
「わからない」と言われたときの対応
また、「子どもに、どうしたい?と質問しても『わからない』と言われるだけで・・」という相談をよく受けます。
こういったとき、自分自身が期待する答えを求めてしまっていないか、振り返ってみることの大切さをお話しします。
よく、自分が聞きたい答えを引き出そうとして「なぜそう思うの?」「どうしてそんなことしたの?」と詰めるように尋ねたり、期待する答えが出るまで問い続けたり、無意識に聞いてしまうことがあります。そうした対応が積み重なると、子どもは「こう言ったら怒られるかもしれない」「正直に話しても無駄かもしれない」と感じ、思ったことを素直に話すのが難しくなることもあります。
バイアスを取り払い、受け入れる姿勢を持つ
子どもの気持ちをすぐに受け入れがたいこともあるでしょう。でも、まずは親としてその気持ちを一旦受け止めることが、子どもとの信頼関係を築くための大切なコミュニケーションです。
親の価値観を押し付けず、「あなたがそう感じているのね」とまずは理解を示すことで、子どもは自分の気持ちに対する安心感を感じ、関係がより深まります。
子どもとの対話で「聴く」ということを大切にすると、互いの信頼と理解が広がり、家族としての絆もより強くなっていきます。