
「頑張れ」と言わない関わり方 〜親の期待と子どもの想い〜
ありがたいことに、最近は地元以外の地域からも講演のご依頼をいただくことが増えました。講演の中では、保護者の方々からさまざまなご相談をいただきます。その中で、あるお母さんからこんな言葉をかけられました。
「頑張ってできているところは『頑張っているね』と言えます。でも、できていないところや、もっと頑張ってほしいことには、そうは言えません。」
この言葉は、私が講演でお伝えしている 「『頑張れ、頑張れ』とは言わずに、『頑張っているね』『頑張っていることを見ているよ』と伝えてほしい」 という話に対する率直な疑問でした。
親から見て「頑張れていない」と思う部分
そのお母さんのお子さんは、学校にも通い、部活も頑張り、友達とも良好な関係を築いているそうです。でも、勉強だけは苦手で、親としては「もっと頑張ってほしい」と感じているとのことでした。
確かに、勉強が苦手な子どもに対して、「もっと頑張らないとダメ」と言いたくなる気持ちはよくわかります。しかし、親が「頑張って」と期待することと、子どもが「頑張りたい」と感じることにはギャップがあることが多い のです。
私自身もかつては、「できていることは当たり前」「できていないところを直さないと」と思い、子どもを責めてしまうこともありました。でも、それが子どもの気持ちを追い詰め、結果的に大切な部分を見落としてしまっていたことに、後から気づきました。
子どもの「頑張り」をどう受け止めるか
勉強が苦手な子でも、毎日学校に行って、部活を頑張って、友達と関わっている。それだけでも、本当はすごいことです。「親が期待する頑張り方」だけが、頑張る方法ではない のです。
私がそのお母さんにお伝えしたのは、
✔️ まず、親子で「これからどう進んでいきたいか」を話してみる
✔️ お子さんの考えを否定せずに、じっくり聴く
✔️ その上で、親として心配していることを伝え、お互いが歩み寄れる方法を一緒に探す
ということでした。
「完璧」を求めることが悩みの種に
親としては、どうしても「子どもに完璧を求めてしまう」ことがあります。「勉強もできて、友達関係もよくて、部活も頑張って、将来も安定した道に進んでほしい」と。
でも、その「完璧」を目指すことが、子どもを苦しめてしまうこともあります。
不登校の支援をしてきた立場から言うと、こうした親の期待が子どもにとって 「プレッシャー」になりすぎると、心の負担が大きくなり、学校に行けなくなることもある のです。
今から、軌道修正の1歩を
私は今、多くの保護者や教育関係者にお話しする機会をいただいています。その中で、一番お伝えしたいのは 「今からでも関わり方を見直せば、軌道修正はできる」ということ です。
私が講演を続ける理由のひとつは、不登校になる子どもを少しでも減らしたいから。不登校になってから支援するのではなく、不登校になる前に、親子の関わり方を変えていくことが大切 だと思っています。
「子どもが困っているときに、どんな声をかけたらいいのかわからない」と悩んでいる親御さんもいるでしょう。そんなときは、まずは 「頑張っているね」と子どもの努力を認めることから始めてみませんか?
そして、勉強や将来のことが心配なときは、「なんでやらないの?」と責めるのではなく、「どうしたらやりやすくなる?」と一緒に考える対話を大切にすること。
子どもとの対話を続けることで、「親は自分のことをちゃんと見てくれている」と子どもが実感できます。そうすれば、もし学校に行き渋ることがあっても、親がそっと背中を押してあげることができるのではないでしょうか。
子どもに「もっと頑張れ」と言いたくなったときこそ、「今、どんな気持ちでいる?」と寄り添う姿勢を忘れずにいたい ですね。