寄り添いたいと願うとき
見守る親の苦悩
毎日、家に引きこもっているわが子を見ていると、親として胸が締めつけられるような思いに駆られます。窓の外には、楽しそうに学校へ通う子どもたちの姿が見えるのに、どうしてわが子だけがこんなふうになってしまったのだろうと、ふと涙がこぼれます。親御さんの中には、「一体何がいけなかったのか?」と自分を責め、夜も眠れず不安で押しつぶされそうな思いを抱えている親御さんのお話を相談の中でたくさん聴いてきました。
理由を尋ねることの難しさ
不登校になった理由を子どもに尋ねても、「行きたくない」とは言えても、何がどうつらくて行きたくないのか、はっきりと説明できる子は少ないものです。ちょうど、寒い冬に手足がかじかんで動かなくなるように、朝、学校へ行く時間が近づくと体が重くなり、頭やお腹が痛くなってしまいます。夜に「明日は行く」と親と約束したのに、朝になると心が重く、ベッドから出られなくなってしまうのです。そんな子どもに対して、「昨日、学校に行くって言ったじゃない!」と問い詰めることが、逆に子どもを自分でもどうしようもない「動けない自分」へと追い詰めてしまうこともあります。
「嘘をついている」と思い込む前に
「子どもは嘘ばかり言う」「昨日の言葉を信じた自分が馬鹿だった」。そんな声もOmimiかふぇにいらっしゃる親御さんからよく伺います。ですが、そのような時私は、「子どもは嘘をついているわけではないと思いますよ」とお伝えしています。子どもも決して親をだまそうとしているのではなく、「学校に行かなくてはいけない」と自覚しているのです。ただ、例えるなら、頭ではわかっていても重たい荷物をたくさん抱えている時のように体が思うように動かない、ということもあります。このもどかしさに、子ども自身が最も悩んでいるのです。
子どもの気持ちを理解し、寄り添う
子どもにとっても、自分の状況がうまく説明できないことや、親の期待に応えられないことは、負担でしかありません。そのため、まず「学校に行きたくない」という子どもの正直な気持ちを認めてあげることが大切です。「行かなくては」と思う一方で動けないその理由は、人間関係の問題だったり、勉強のプレッシャーだったり、実にさまざまです。子どもが言葉を選びながら少しずつ話し始めた時、私たち親がその言葉を否定せず、受け止めることがどれほど子どもに安心感を与えるでしょうか。
アンコンシャス・バイアスを外して聴く姿勢
こうした心の声を聴く際、私が親御さんにお伝えしているのが「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」を外して聴く姿勢です。つたない言葉でも子どもが話し始めたのなら、「それはね……」や「そんなことで……」といった、つい親が口にしがちな否定の言葉ではなく、ただ「そうなんだね」と共感し、まずは静かに受け止めることで、子どもも自分の気持ちに少しずつ向き合えるようになります。せっかく話してくれた思いや言葉を「やっぱり話さなきゃよかった」と落胆させないように、たとえ遠回りに思えても、その信頼の積み重ねが次第に子どもの自信につながります。
子どもと共に歩むために、親自身が変わること
「子どもの気持ちを理解し寄り添いたい」と思うなら、親である私たちが今までとは違う聴き方を意識する必要があります。たとえるなら、親がこれまで握っていた舵をそっと緩め、子ども自身が自分のペースで進む道を見守るような感覚です。私が「まず、私たち親が変わりましょう」とお伝えしているのも、そうした意味を込めているのです。子どもの声を尊重し、親としての心の余裕と変化を持てた時、きっと子どももその愛情と理解を感じ取ってくれるはずです。