「0か100か」の白黒思考に振り回されないために
Omimiかふぇで話題になることの多いテーマのひとつに、お子さんの「0か100か」で考える白黒思考があります。親御さんたちが悩む様子を伺うと、日々の生活の中でさまざまな場面でこの考え方に振り回されているようです。
白黒思考のエピソード
あるお子さんは家族で楽しい1日を過ごした後、家に帰ってちょっとした嫌なことがあると、「今日は最悪な1日だった!何も楽しいことなんてなかった!」と言い出します。親御さんは「楽しかった時間もあったはずなのに・・」「あんなに笑顔で楽しいと言っていたのに・・」と困惑し、振り回されてしまうことがあるとのことでした。
他にも、中学生のお子さんは「明日は学校に行こう!」と決意したものの、朝起きられないかもしれない不安から、結局徹夜して学校へ行くなど、自分を追い込みすぎてしまうこともあるようでした。
こうした「0か100か」の思考は、「良いか」「悪いか」「できるか」「できないか」といった二極化した判断基準で物事を捉える特徴があり、これを白黒思考と呼びます。この傾向は、発達障がいの特性として現れる場合もありますが、診断がなくても白黒思考が強く出る子どもはいます。
白黒思考がもたらす困難
白黒思考の特徴は次のような形で表れます
人間関係での困難:友達と一度嫌なことがあると「もう仲良くできない」と思い込んでしまう。
グループへの抵抗感:仲良しグループに新しい子が入ると、そのグループ自体が嫌になってしまう。
自己否定感:1つミスをすると「自分はダメな人間だ」と極端に思い込む。
こうした思考に囚われると、子どもは日常生活で強いストレスを抱え、さらに視野が狭くなりがちです。「0か100か」で測れるわけではないのですから、そのことばかりが気になるのですから・・。
そして、親もその対応に疲弊し、「どうしてそんなことを考えるの!」と感情的に叱ってしまうことも多くなってしまいます。
親が気づき、学んだこと
親御さんたちとの対話の中で、気づいたお母さんがいました。
「なんでそんなこと言うの!」
「グズグズ言わないで!」
「仕方ないでしょ!」
こうした叱責が増え、癇癪を起こした子どもに対して、親もイライラを抑えられず感情的になってしまったと振り返っていました。そして、今、冷静になって考えてみると、「自分が言った言葉で、子どもをひどく傷つけてしまったかもしれない」と気づきました。
私自身も振り返ると、叱咤激励のつもりで
「自業自得」
「あなたが選んだことでしょ!」
「もう、お母さんは知りませんよ」
という言葉を発していた頃がありました。
大人ならば「自分で選んでやったこと。仕方ない」と思えることでも、厳しい言葉は、子どもにとっては立ち直るきっかけを奪い、自信を失わせてしまうこともあります。特に将来を心配するあまり、嫌がることを無理にやらせてしまうと、「どうせ無理だ」「もう頑張れない」という心境に陥らせる可能性もあります。
親が安全基地であるために
子どもが白黒思考に囚われて困ったとき、親として一番大切なのは「安全基地」としての役割を果たすことが大切です。「困ったときは必ず助けてもらえる」と子どもが安心できる環境があれば、子どもは少しずつ柔軟な考え方を身につけていけます。
また、私たち親自身が「~ねばならない」という固定観念を手放すことも重要です。「みんなと同じでなくてもいい」「子どもの力を信じる」という姿勢を持つことで、子どもの成長を見守り、サポートする余裕が生まれます。
考え方を広げる手助けを
保護者の方々には、白黒思考に寄り添いながら、少しずつ考え方を広げられるよう、次のようなアプローチを試してみては?とお話ししています。
中間の選択肢を示す:例えば、「全部最悪だった?」と聞いて楽しい出来事を一緒に振り返り、楽しいことを思い出してバランスの取れた視点を持つことをサポートしましょう。
選択肢を増やす練習:「AかBしかない」と考えているときに、「CやDもあるかもね」と一緒に考え、新たな視点を持つアイデアを一緒に考えましょう。
親が見本を示す:「今日は疲れたけど、あの瞬間は楽しかったよね」と柔軟な捉え方を見せることで、子どもが自分の感情を複雑なまま受け止める練習につながります。
私たち親も完璧である必要はありません。子どもに寄り添い、安心感を与えつつ、小さな一歩をともに歩んでいくことが、何よりの支えになるのです。
私たち親自身も、自分自身の中にある白黒思考を手放して一緒に成長していきましょう。子どもたちにも、私たちにも大きな可能性があるのですから。