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日本の美徳「謙遜」が子どもを傷つける? 私たち親にできる新しい選択

日本人の美徳として語られる「謙遜」。
辞書には「自分の能力・価値などを低く評価すること。控え目に振る舞うこと(大辞林)」とあります。
確かに、私たちは対人関係において、自らを低く表現することで円滑なコミュニケーションを図ることを経験的に学んできました。

しかし、この「謙遜」が子どもを傷つけていることがあるのを私たち親は知る必要があると思います。
例えば、次のような場面を想像してみてください。


子どもの前で無意識に使っている「謙遜」の例

  • 友人に子どもの成績を褒められたとき
    「そんなことないですよ。宿題なんて全然やらないし、テストの点が良かったのはまぐれなんです」
    「スポーツはちっともできないし、○○ちゃんの方が本当に優秀ですよね」

  • 子どもの身体的な特徴を話題にされたとき
    「いやいや、うちの子は身体だけが大きくて、中身は空っぽなんですよ」


これらのやり取り、無意識にしていませんか?
相手に対して「謙遜」として言っているつもりでも、実際に聞いている子どもはどう感じるでしょうか?


子どもには謙遜が「認めてもらえていない」と映る

親は謙遜しているつもりでも、聴いている子どもはそれをそのまま受け取ってしまい、「親に認められていない」と感じ、傷ついてしまいます。
特に発達特性のある子どもにとっては、謙遜のニュアンスや意図を理解することが難しい場合があります。
その結果、親の言葉が子どもの自己肯定感を下げてしまう恐れがあるのです。


大人自身も謙遜で損をしている?

大人の間でも、「謙遜」が生むネガティブな影響があります。
私自身、かつて夫が同僚に私を「うちの愚妻です」と紹介したときに感じたことがあります。

私は「あなたは、自分の妻を軽んじるだけでなく、結婚相手を選んだ自分自身の判断力をも否定していることになりますよ」と注意しました。

外国人のように「ハニー」と言うのは躊躇されますが、ただ「妻です」でよかったのでは?と思ったのです。

謙遜のつもりだったのかもしれませんが、ネガティブな言葉で自分や他者を表現することは、周囲との信頼関係を損なうリスクもありますよね。


「謙遜」ではなく「謙虚」を子どもに伝える

それでは、相手から子どもについて褒められたとき、どのように返すと良いのでしょうか?
以下は、謙虚な受け答えの例です。

  • 「成績が良いですね」と言われたとき
    「ありがとうございます。本人なりに頑張っているようです。お褒めいただいたことを子どもに伝えますね。きっと喜びます」

  • 「スポーツが得意ですね」と言われたとき
    「ありがとうございます。身体を動かすのが好きみたいで、これからも応援していきたいと思っています。今日いただいたお言葉も子どもに伝えますね」

このように返すことで、相手に感謝の気持ちを伝えつつ、子どもにも親が自分を認めてくれているという安心感を与えることができます。

これは子どもが一緒にいる場合も同じです。「ありがとうございます。」と感謝を伝え、子どもにも「よかったね。」「嬉しいね。」と伝えましょう。


謙虚が生む信頼と自己肯定感

謙虚な人は、感謝の気持ちを自然に表し、周囲との信頼関係を築くことができます。感謝の気持を表すことで、相手を肯定することにもなりますし、お互いに心地よさを感じられるのではないかと思います。
さらには、自分の成果が自身の力だけで達成されたものではないことを理解感謝と謝罪を素直に表現することできます。そして相手の立場を尊重していることを伝えることができます。その結果として周囲との信頼関係を築き、良い成果を生み出しやすくなるのです。

子どもにとって、親が謙虚な態度で接してくれることは、自尊感情を育む大きな要因となります。

親として、「謙遜」ではなく「謙虚」を心がけることで、子どもとの関係がより良いものになるでしょう。
それは、子ども自身が自己肯定感を持ち、成長していくための基盤となるのです。

謙遜の美徳を疑うことから、子どもへの本当の愛情が見えてくるのかもしれません。

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