出口はどこ? もうすぐ? まだ?
出口の見えないトンネルをさまよっているような
「出口の見えないトンネルの中にいるみたいで、どこに向かっているのか、出口が近いのか、まだまだ遠いのかすら分からなくなってしまいました...」
そうつぶやくお母さん方の声を、私はこれまで何度も聞いてきました。もしかすると、出口を探し求めるうちに、気づかないうちに自分にとって都合の良い「出口」を求め続けてしまっているようにも見えます。
不登校についてたくさんの本を読み、親の会や支援団体、占いやスピリチュアルに頼り、最終的には宗教を勧められるといった事例も少なくありません。令和の時代の親御さんは、それに加えスマホでSNSなどのネットを通じて大量の情報を求め、安心できる「答え」を探して彷徨っているように感じます。
確証バイアスとは、「自分が見たいものだけを写す眼鏡」のようなもの
そんな時、「確証バイアス」というアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)が私たちの行動を支配してしまうことがあります。これは、自分の考えや思い込みに合った情報ばかりを集め、逆にそれに反する情報は無意識に排除してしまうという心理傾向です。
最初の思い込みが強ければ強いほど、どれだけ多様な情報があっても、自分の考えを裏付けるものだけが目に留まり、他の情報を見逃してしまうのです。
たとえば、「不登校はダメなことだ」という思い込みがあるとします。そうすると、親はつい「不登校は直さなくてはいけない」という考えに合った情報ばかりを集め、目にするものや聞くものも「やっぱり直すべきだ」と確信を強める内容ばかりになってしまいます。反対に、「不登校を受け入れる」という考え方や「個性の一部」という考え方には、なかなか目が向かなくなってしまうのです。
確かに、人は誰でも自分にとって都合の良い情報に安心を覚えます。しかし、「自分が正しい」と強く思い込み過ぎることは、本当はとても危険なことです。「自分は本当に正しいのか?」と振り返る習慣がなければ、いつの間にか自分を無意識の思い込みが支配してしまうのです。
えがおの会の活動の中で伝えていること
Omimiかふぇにいらっしゃる親御さんたちにも、「子どもを変えることはできなくても、ご自身が変わることをお手伝いできるかもしれません」とお伝えしています。「自分の捉え方を変えるのは容易ではありませんが、ここで他の親御さんの話を聞いたり、自分の思いを話したりする中で、ご自身の持つ『捉え方の癖』や『思い込み』に気づくきっかけになるかもしれません」と。
お子さんの不登校がきっかけで、自分の捉え方の癖に気づけるとしたら、それは決して不幸ではないということ。お子さんが見せてくれたこの現象を受け止め、ご自身の人生を振り返るきっかけにしてほしいと願っています。
本当に自分の考えは正しいの?と振り返りの時間を持ちましょう。
そうは言っても、ひとりで振り返るのは難しく感じる人もいます。
えがおの会のomimiかふぇでは「思い込みの眼鏡」を外して、お子さんが見ている世界に目を向けてみるお手伝いをしたいと思っています。たとえ見慣れない景色がそこに広がっていたとしても、それを新しい視点として取り入れることで、「出口の見えないトンネル」の中から抜け出すヒントになるかもしれません。