おすすめの展覧会 ~東京編#10~ フェリックス・ヴァロットン─黒と白 @三菱一号館美術館 | 2022.10.29-2023.1.29
こんにちは!Webデザイナーのしいのきです。
2022年の目標の一つ「見る目を鍛える」べく
月一で展覧会に行くを目標にしています。
今回は第10回目、2022年10月30日に見に行った「ヴァロットン─黒と白」をレポしていきます。
拙い文章ですが、お付き合いいただけますと幸いです😊
▼展覧会情報
「ヴァロットン─黒と白」
三菱一号館美術館(JR山手線 有楽町駅から徒歩5分)
2022.10.29-2023.1.29
大人1名:1900円
事前予約制
01 | 展覧会紹介
いつもは会期ギリギリに行くのですが、
今回は開催の翌日に行くことができました。
というのも、私が密かに「師匠」と慕っている方(会ったこともない方ですが、師匠が行く展覧会をいつも参考にしています。)が、
この展覧会を1年前から楽しみにしていて「ついにこの日が来た・・!!」とインスタグラムで仰っていて、師匠がこんなにも興奮しているなら何か凄い発見があるに違いない!と思いすぐに見に行きました。
場所はJR有楽町駅から徒歩5分ほどの三菱一号館美術館です。
フェリックス・ヴァロットンは大体130年前ごろにフランスで活躍した画家ですが、特に黒一色の「木版画」で名声を得ました。
初期の作品は線が細く書き込みが多いのですが、
徐々に「無駄なものを極力排除して見せたいものを強調する」という手法にうつり、その表現は「卓越したデザインセンス」と評されるほどで、「黒と白のコントラストを巧みに操るデザイン感覚」がヴァロットンの革新性だと言われています。
02 | 膨大な数の作品数
上記は1フロアの一角のみに撮影を許された箇所の作品になりますが、その一角だけでも結構な量の作品が展示されています。
挿絵や風刺画も行なっていたので、
風刺の作品はとても皮肉めいてて面白いです。
いやしかし、とにかく残した作品の量よ・・!!
最後はもう集中力が切れてぼーっと見ていたのですが、
撮影不可の部分にこそヴァンロットの真骨頂とも言える「ほぼ黒」なのにものすごく情景とその裏にある思惑が表現された作品がたくさん展示されているのでぜひ見ていただきたいです。
1896年以降はもう余分なものが削ぎ落とされまくって「シンプル」でありつつ表現された部分はすごく細かい装飾が施されていたりと、膨大な量の作品を手がけたことで磨きあげられ研ぎ澄まされた「技術」と「感性」に感嘆の吐息が漏れると思います。
03 | 「希少価値」を担保するために作品を壊す
限定部数で刷られる版画は、希少性を保つためにそれ以上刷りができないように木版を廃棄してしまうそうです。
上の作品は「版木廃棄証明のための刷り」で、物理的に切断した上で断片を組み合わせて「希少性の証」とした証明書。
こうすることで版画の価値が圧倒的に上がるんだろうけど、
「もったいない。。」と思ってしまう。
この作品は「証明」という域を超えて一つの芸術作品になっていて、そのデザイン性もさることながら「希少価値のために自分の作品を壊す」という諸行無常な背景に想いを馳せる人も多く、人気が高いのだと思いました。
04 | 行き詰まった西洋芸術に光明をさす
19世紀半ば以降に「日本の浮世絵」がヨーロッパに紹介されたので、
ちょうどヴァロットンが活躍した時代とかぶっています。
写実主義に行き詰まっていた西洋芸術にとって喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重、写楽などの浮世絵に見られる「平面的」「簡素化された線」「大胆な構図」「極度の俯瞰的視線」といった特徴が新たな表現のきっかけとなったのは有名な話ですが、この特徴はまさに「木版画」にとっても新たな可能性を見出したと、今回の展覧会で知ることができました。
ヴァロットンも日本芸術に影響を受けたと思われる作品がいくつかあり、浮世絵を知る前と知った後とでは明らかに作品の表現方法が変わっているので、「いいインプットがいいアウトプットを産む」を体現している作品をたくさん見ることができました。
ヴァロットンが吸収した技術や表現方法をたくさんアウトプットすることで自分のものにしていることもよく分かったし、「そこに目をつけるか!」という着眼点の鋭さが個性として出ていて、行動力と情熱と個性こそが実力であると感じられた展覧会でした。
05 | まとめと結論
私は西洋芸術や日本芸術があまり好きではなく、これまでも現代アートか服飾関係の展覧会が多かったのですが、今回初めて西洋芸術の中でも近代に近い作家にじっくりと触れて、新しい発見がありました。
ヨーロッパの歴史は戦争と分断と宗教の歴史だと思っていて、
その中での写実的な絵画作品は、ひねくれていて人間臭い私には「だからなんだ?」とあまりピンと来なかったのですが、(特にパトロンに媚びへつらった作品は同情的な感情になってしまう。自分の感情を剥き出しにしている作品の方が好き。)
その中でヴァロットンの「超客観的に群衆(人間)を表現する」という作品のスタイルはすごく自分に刺さりました。
自分の中で「人間的な欲望との葛藤」「死から感じる生」というのを表した表現が好きなことは分かっているのですが、それはグロとかの意味でなく、精神的な意味で現実的に表現されている作品が好きで、上記で書いたように今回の「自殺」が一番その思考に当てはまっていて、死は身近にあるのに人々は自分とは違うものとして見ているという皮肉った表現が秀逸だと感じました。(いい意味で性格が悪いところがいい。)
「余白に不穏な空気を持たせる」という空間の使い方も勉強になりました。
「ほとんど黒」=「ほとんどが彫られていない」ということになるので、物理的に時間はかからない作品ですが「どこを黒く残すか」という感覚的なセンスは圧巻です。
感想を書いていて気づいたのですが、これまでの現代アートの作品ではこんなにも感想が出なかったなと。
多分現代アートの「作者が何かを伝えている」ことが明らかだとそれに対して共感をするから「好き」であっても「感想」はあまりないのかもしれない。分析も意味がないように感じるので、現代アートが与えてくれる「気づき」を私は楽しんでいるのかもしれません。
この10ヶ月で一人の人にこんなにも感情移入して分析してまとめを書いたことがなかったので「作者が何かを伝えているかもしれない」の方が考察したり分析するのが楽しく、はるか昔の人なので「何を言っても正解は分からない」という状態もあれこれ言いやすいとかもあるかも。
自己分析につながる何か新たな気づきにつながるような気がします。
もう一度西洋芸術を見にいったらもっと根幹の部分が何か分かるかしら🤔
今回は考えながら書いてしまったので、だらだらと語りが多いレポになってしまいましたが、単純に卓越したデザインセンスに圧倒されに行くだけでも面白い展覧会だと思いました!題材も街の人がほとんどなので、感情移入して見られると思います。
有楽町という土地柄的にも休日のデートに最適なんじゃないかと思います♡
今回の展覧会レポはいかがでしたでしょうか!?
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最後までご覧頂きありがとうございました!
また次回の展覧会でお会いできますと幸いです。