NEWTリリース一周年、グロース戦略の要諦をまとめてみたよ
どうもこんにちは! あたらしい旅行をデザインしていきたい令和トラベル篠塚です。これはアドベントカレンダー最終日の企画です。ここまでつないでくれたバトンを、ファイナル記事として投稿です。
その他もたくさんの良い記事がありますので、ぜひ!
さてさて突然ですが、CEOの皆さま、事業を担当している皆さま「あなたの事業KGIはなんですか?」と聞かれて自信を持って、解像度の高いKGIを即答することはできますか? もしも即答することができないならば、実はそれはあまり良くないシグナルかもしれません。そして、この記事がほんの少しだけお役に立つかもしれません。
今回の記事では、「NEWT(ニュート)がいかにしてPMFを実現し、グロースしているか」「経営戦略とKGIは、なぜ密接に紐付いているべきなのか」なんてことを書いてみたいなと思いました。こんなにたくさん内部情報を書いてしまって怒られないかちょっと気になっています。
こんな方に、とてもおすすめの記事です。
・スタートアップCEOや大企業の新規事業のグロースを担当している方
・BtoC、BtoBなり創業期で、ゼロイチで何かを構築している方
・KGIがうまく策定されず、モヤモヤしている方
NEWT(ニュート)をまだ見ていない方、ぜひご覧あれ!
前段:スタートアップ経営の壁について
以前にまとめたNoteですが、未だになお多くの方に読んで頂いております。スタートアップ経営にはいくつか重大な壁がありますが、我々は以下で言う3つ目の壁である「PMFの壁」と真っ向から対峙してきた1年となりました。今日はその観点でのお話しです。
そして、社内でもひたすら、PMF、PMFと呪文のようにしつこく唱え続けて、半年前にもこんな記事を書いていたりしました。
その結果として、「第一次PMFはしたのでは?」と言えるような状態にまでなんとかこぎつけることができたと思っております。予約データは開示していないのですが、初月から数千万円以上の流通額があり、QtoQの平均成長率は@176%で進捗しており、昨月の2023年3月には過去最高の単月流通額を叩き出し、すでに数億円/月の予約が発生するサービスになっております。C向けサービスのキングであるメルカリ社の初年度流通額の勢いにはちょっと追いつかなかったのですが(勝手にベンチマークしていた。笑)、海外旅行マーケットがまだ1/3しか復活していないマーケット環境であるため、控えめに言ってもかなり良いペースで伸びていると思います。
PMFとはつまるところなんなのか?
「カスタマーに必要とされ(無いと不便)、日々適切な予約流通が発生している状態」と捉えておりますが、その状態変数にも数次のステップが存在するなということも思っています。それは、一次:探索期、二次:高成長、三次:収益化 というものです。
それぞれ難易度もやるべきことも変わってきますが、我々にはNEWTツアーと、NEWTホテルというプロダクトがありますので以下のように設定をしていました。
グロース戦略を司る3つのポイント
以下が、徹底的にやったポイントです。書いてみると至極当然なことなのですが、多くの会社を見ているとレベル感が様々バラバラであり、色々と話していると1点〜99点くらいまでの解像度があるなと思っています。(0点や100点は無い)
以下が、その3つのポイントになります。重要です。
1:カスタマーの離脱ポイントを明確にすること
2:KGIを策定し全員をフォーカスさせること
3:KGIを立体的に捉え直し、経営戦略に落とし込むこと
我々はこのポイントを絞り込む作業だけで、全員一丸となって2ヶ月以上かけてやっており、なるべく解像度を上げきることを大切にしています。それでは早速、1つづつ説明してみたいと思います。
1:カスタマーの離脱ポイントを明確にする
今なお色々アドバイスをくださる尊敬するリクルート時代の大先輩らとお話しをしていると、ただひたすらこの問いを聞かれ続けます。「なぜ、カスタマーはNEWTを使わず離脱するの?」です。徹底的に追い詰められます。夢にも何度も出てきました。笑 これは、離脱する原因を徹底的に調査しきって、優先順位を決めて、離脱する原因を無くしていけばサービスは絶対に伸びるだろというロジックであり、至極当然です。
では、NEWTの離脱原因とはなんなのでしょうか?
現在の数値感でいうと、100人のアクセスがあると、約2人しか予約をしてくれず、98人はいなくなってしまいます。なぜ、98人はいなくなるのでしょうか? 仮説は沢山思いつきます。
・旅行の計画はそもそもなかった。ただふらりと見に来たから?
・価格が高く、他のサイトで予約をしたくなったから?
・アプリのUXが使いづらく、面倒くさかったから??
・会員登録しないと見られないし、それも面倒??
・大手企業他社のほうが安心感があり、予約をするのが不安だったから?
・行きたい方面のツアーが存在しなかったから?
などなど、いくつも重大な離脱理由が思いついてきます。これらをロジカルに分析しなおし、各因子に対する離脱人数(%)などを大規模調査やデータ分析によって1つ1つ明らかにしていきます。そして、その因子が高いものから順にカバーしていくことができれば、結果的に離脱は減るという当たり前すぎる考え方です。私のYouTubeチャンネルでもこれをきちんとやっていたら、流行っていた可能性が高いです。
例えばここでは、「NEWTで行きたい方面のツアーが存在しなかったからでは?」という問いを考えてみたいと思います。まずマクロな統計データから、日本人出国数と出国先を全て細かく出みてみます。NEWTが対応していたエリアはリリース当時はわずかハワイのみであり、半年前でもまだ10都市となっています。統計データと我々が持つデータとをクロスさせると、「行きたいエリアが無いからいなくなっている」層はおよそ50%近くいたことがわかりました。
以下の図のようなイメージで、全エリア分析します。調整後カバレッジとは、例えば1本だけツアーを出しても全員カバーできませんので、どれくらいの人数をカバーするに足るツアーがあるか? を検討したものです。
つまり半年前は、NEWTに足を運んでくれた旅行を検討してくれるカスタマーのうち50%の人たちは「なんだよ、バンコクのツアーまだ無いじゃん。」「なんだセブ島のツアー無いじゃん。」と言った具合でそのまま離脱していくわけです。当たり前ですよね、行きたいエリアのツアーが無いんだから。買いたい商品が無いスーパーマーケットのようなものです。
細かくは割愛しますがシンプルにこの問題の解決策を言えば、行きたいエリアのツアーがある状態を作ってあげれば良いので、ツアー企画におけるエリアプライオリティが決まっていく。ということになります。
NEWTは現状でおよそ20エリア、3,000ツアーがあり、また海外ホテル予約サービスでは70万軒のホテルから予約することができる状態です。今日では「行きたいエリアが無い」と感じて離脱する人は、ツアーでは20%以下に抑制できており、またホテルに至ってはほぼゼロにまで低減させることができている状態となりました。しかしまだ20%もあるので、これはこれで順次叩き潰していきます。こうして、ある特定の離脱原因を解消するような打ち手を全社一丸となり愚直に取り組んでいった結果、1年目で相当な規模まで成長することができたと思っています。(それでもまだなお、多くの離脱理由が残されています。1つ1つ退治していくわけです。)
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2:KGIを策定し全員をフォーカスさせること
さて、離脱するポイントは見えてきましたが、これを闇雲に問題解決していても、打ち手が解決してくれるKPIの方向性がとんでもなくバラバラになってしまい、向かうべき方向がずれる可能性があります。ここで、次なる重大な問いは「KGI(最も重要な経営指標)はなんなの?」です。この何度も繰り返される問いには半年近くも苦しめられ続け、なかなか定まらずに誤った打ち手などを打ってしまったこともしばしばです。しかしようやく見つかって、徹底的にそれを改善してグロースが実現し始めました。見つかると「なんだそんなの当たり前じゃん」と言われるような指標なんですが、見つけるまでは大きな深いジャングルに迷い込んだ状態になってしまいます。
なにより、このKGIの策定こそが、創業初期CEOの仕事の全てであり経営戦略の全てと言っても過言ではなく、ここを適切に定めてリソースを集中させることができるかどうかでグロース速度・傾きが大きく変わってきます。(また創業CEOというのは、プロジェクトの責任者と捉えても大丈夫です。)
なぜKGIの策定が有効なのか、かつてソフトバンクの大先輩にお聞きした逸話をケースとして紹介してみたいと思います。
※注意:なお数値は正確に覚えていませんが、そこはあまり重要じゃないので話半分でご覧くださいませ。
ケース:ソフトバンクが家庭用インターネット通信事業に参入
ソフトバンクがかつて駅前でADSLモデムを配っていたことは皆さまご存知と思いますが、その時のKGIは「導入世帯数」でした。1年以内に3,000万世帯に入れる!!!と孫さんを中心としたメンバーたちは鼻息を荒げ(※多分、正確には孫さんだけが鼻息が荒かったのではと思う。笑)、シンプルながらパワフルな大号令をかけていきます。このKGIに至るまでの検討過程は存じ上げませんが、一度実装されたら乗り換えが全く行われないこと、つまり出遅れは致命的なダメージになることなどなどからここの設定に至ったものと思います。
なぜ、KGI策定が大切なのでしょうか?
当然ながら、今日のアセットでは絶対に無理だし、お金も足りません。多くのメンバーからは、「??? ムリでしょそんな数値」「バカなの?」と言われることでしょう。しかしKGIを定めて戦略を集中させなければ線形成長しか望めません。このADSLモデムのばらまきケースで言えば、通常通りに見積もったら年間数百万世帯への導入程度が限界なはずですが、アセットを集中させることでのみ10倍成長が実現するわけです。
なおこれは、ADSLモデム配布ケースのみならず、Yahooショッピングで全て無料にして店舗数を大幅に増やしたことや、PayPayの大躍進などにおいても全く同様のことをやっておりますし、リクルートやSonyや楽天などの1兆円を超える企業らにおいても新規事業の成功例と、KGI戦略とは切っても切り離せないものになっています。
また、よくある事業長が判断するKGIの設定ミスについても触れてみましょう。よくあるKGIの設定ミスの典型例としては、今は「UUが一番大事だ」と「CVRを上げることだ」です。なぜこれは設定ミスなのでしょうか?
確かに、UUが紐づいて伸びてこなくてはサービスがグロースしていかないので一見正しそうですが、UUをKGIにしてしまうと多くのサービスにおいてはアクションがおかしくなるからです。
※「多くの」と書いたのには理由があり、UUが増えれば全ての収益につながる。なんでもいいからUU(視聴数)を増やすべきだというマスメディアのようなサービスはありえます。が、インターネットサービスのほとんどでは有効ではないです。
KGIとは「何をどうやっても絶対達成すべき指標」であるため、UUをKGIと捉えてしまうと支離滅裂な打ち手が増えていってしまいます。極論「懸賞をやればUUが増えるね!どんどんやろう」というのも正解になります。KGIが増えれば良いので。その上、UUのほとんどはその先に目的行動があり、UUを上げることは手段にすぎないためそこもブレてきます。また、UUのほとんどはフロー指標なので、中長期的な筋肉増強につながるような指標がKGIにならないと短期成長でストップしてしまうのも問題です。(少し補足すると、KPI=目標として100万UUを達成するぞは全く問題ないです。
また、「CVRを上げる!」もほとんどの場合ではおかしいです。CVRはさまざまな施策を通じた「結果的な指標」であるため、CVRをあげるぞ!という大きすぎるレンジのKGIでは、メンバーは何をどう改善したらよいか全くわかりません。KGIとは、「今、UUxCVRを上げるための最も重要な単一指標はこれである」と言うことを決めるものであって、CVRは確かに結果的に改善しえますがそれは結果指標です。経営が決めることは、「CVRを改善するにはこれが一番効く。だからここを改善する。」であり、それこそがKGIです。
繰り返しですが、素晴らしいKGIとは「そこに向かって全力でアクションしやすいもの」であって、その結果としてUUやCVRが増えるようなものなのです。その目的手段を誤解すると、プロジェクトメンバーは何をしたら良いかアクションが考案できなくなりますし、走れなくなります。
こうして、今のソフトバンクやYahooを支える事業の礎が築かれていきました。さて、続いてはKGIを決めたら何をすべきかを考えてみます。
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3:KGIを立体的に捉え、経営戦略に落とす
繰り返しですが、KGIを定めても実行プランがセットで存在しなくては実現がなりません。主にはヒト・モノ・カネなどの観点から戦略を構築していくわけですが、KGIという1つの指標に対して立体的にアプローチをするようにします。
またケースを戻して、ADSLモデムの話しに戻ってみます。
では、立体的に「1年以内に3,000万世帯へのモデムを配布する」というKGIを達成するためにはどのような戦略を描くべきか考えていきたいと思います。構造を整理すれば以下のようになるのではないでしょうか。
全社KGI:1年以内に3,000万世帯へモデムを導入すること
ヒト:3,000人を採用する(=ヒト部門のKGI)
・3,000万世帯に配布するには圧倒的な人員数が必要である
・モノを洗練させるために、エキスパート採用も平行で必要である
モノ:各部門のKPIを徹底モニタリングする
・技術=3,000万世帯に耐えられるエンジニアリングや、オペレーション
・マーケ=認知を強化し、持ち帰ってもらうための方策を徹底検討
・事業開発=配布場所確保や、配布契約プロセスなどを短期間で構築する
・セールス=より多くの人たちが持ち帰ってくれるような営業活動
カネ:1,000億円を調達する(=カネ部門のKGI)
・これらのプランを実現するための予算確保や資金調達の実行
・モデムの無料配布における財務LTVモデルを構築し直すこと
これを立体的に描くとこうなります。(※繰り返しですが金額とか人数は適当ですよ)
といった具合です。
さて、さらに現場で起こったストーリーを見ていきます。
(ちなみに私が勝手に考えてるだけで適当ですよ!)
孫さんはまず、CHROのAさんに大号令をかけます。来週までに3,000人の採用をしてくれ!!と。Aさん「え、来週ですか?笑」ともちろんなるものの、人事部隊は大急ぎで実行をしていきます。そして結果、1ヶ月程度をかけて人事異動や新規採用を急速に対応し近い数値を実現することができました。続いてはお金です。CFOのBさんに声をかけます。中期経営計画(予算)には当然入っていない簿外数値なはずですので、様々なところから投資予算をかき集めていくしかありません。具体的にどうやったのか詳細はわかりませんけど、あらゆる手段を通じて投資予算を確保していきます。1ヶ月くらいで確保ができました。スタートアップであっても、なかなか困難ですしこんな速くは難しいですよね。
そしてさらには、事業開発チーム。CSOのCさんに声をかけます。駅前でのスペースを新規1,000箇所用意せい!など。他、鉄道会社やら警察許認可やらを短期間で徹底的にやり切り、一気に実施できる段階へ持ち込んでいきます。同時にプロダクトチームや、エンジニアチームも3,000万世帯に耐えられるネットワーク回線の対応や、申込みオペレーションの構築などあらゆる打ち手がKGIに向けて放たれます。そして当然、現場で泥臭く実行する部隊も必要です。日本中の駅前などに人をベタベタに貼り付けていき、「インターネットモデム0円!」と言って、どんどん配布していきました。グロースチームや広告チームだって全てがこのKGIのために動いていきます。多分ですが、3,000万世帯というとんでもない数値を前にして、「無料で配布しないとムリなのでは?」という突飛なアイデアが出たのではないかと想像します。
このように、KGIを中心としてその実現に向けて、立体的に戦略を構築していくのです。
ここでもう1つ、とても重要なポイントを考えます。
これらのアクションプランというものはKGIが策定されていなければ、これほどまで大胆に採用や人事異動、無料で配るというアイデア、短期間でのファイナンスなどのアクションプランは絶対に実行されていないわけです。KGIが策定されたからこそ、大胆に全てのアセットを寄せきっていき実現ができるわけです。
KGIがなければ、つまりは線形の成長しか望めないわけです。
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まとめ:高速グロースには正しいKGIが必須
さて、今日は新規事業におけるグロース戦略においてKGIがいかに重要かを共有してみました。本当はミッションやビジョンとの接合性や、バリューとの関係性なども書いてみたかったのですが記事のボリュームが倍近くになってしまうのでまた次回・・・
こうやって、半年ごとに私たちは経営戦略を徹底的に見直し、特に4月の新しい期になる際は2〜3ヶ月くらいは徹底的に部署横断で戦略を構築するタームにしています。年始からヘトヘトに疲弊しますが、我々にとっては本当に大事なプロセスですし、ここをやりきると「ああ、今年も成長間違いないな」と謎の自信に満ち溢れることができます。笑 ちなみに今期の戦略プレゼンスライドは500ページ近いものになりました、数は重要じゃないんですけど。笑
※こちらでも経営戦略の策定方法を書いています。
しかし、それくらい必死に考え抜いて作ったKGIなので、かなり仮説確度も高いと信じています。もちろん間違っているかもしれませんが、今までのところはNEWTの各指標実績がその正しさを証明してくれています。これからも着実に一歩一歩、KGIの実現に向けて全員一丸となってアクションをし、あたらしい旅行をデザインし、より多くの人たちに素晴らしい海外旅行体験を届けていきたいと思っております🚀
ということで、長文になりましたが以上でございます。最後までお読み頂いた皆さま、ありがとうございました! もしちょっとでも役に立ちましたら、シェアなどしてくださるととても喜びます👏
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