【詩】網膜
(はじめに)
前回の「沼津市芸術祭」の記事でお知らせ
しました通り、市長賞に選ばれました詩を載
せます。書いたきっかけを少しだけ述べます
と、久しぶりに本気の恋愛詩を書いてみよう。
実体験というよりは、篠井らしい作品をつく
ろうと思い、はじめはコンクール用に書いた
ものではありませんでした。ところが完成品
を読むと、どこかに旅立たせてみるのも面白
いのではと沼津市芸術祭の詩部門に応募した
次第です。今年から審査員に井坂洋子さんの
名前があり、私の詩に感想をいただきたいと
強く願ったのも応募の決め手になりました。
詩を書く方ならご存知でしょうが、中原中也
賞の選考委員を務められたり、詩集「GIGI」
にてH氏賞をはじめ、数々の受賞歴のある方
です。
前置きが長くなってしまいましたがスイー
ツをいただくひと時のように、ゆっくり楽し
んでくださいませ。
網膜
紡ぎ出す言葉が見つからない夜は
空を見上げる
流星群を観測できるのは奇跡だと言った
抱擁のあとの吐息だけを纏った体
の丸みが残っている
足らない温度を埋めるのは何だろうか
空気ばかりが澄んでいる
人の思いには それぞれ色があって
ここが色であふれているのは均衡をとるため
寝癖がチンチラの耳のようだった
覚えている形が押し寄せて 眠れない
思考を中空に解き放つ
選んだ孤独が さらに孤独を連れてくる
点滅する 航空障害灯を網膜がとらえる
指先がつめたいのはかなしいからだ
∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶∶
小々露さま。イラストお借りいたしました。
ありがとうございます😊
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(ちょっとだけ解説)
井坂洋子さんの選評を少しだけ載せますと
「語をチョイスする感覚がいい…」御言葉を
いただきまして、この作品に取りかかるにあ
たり、言葉の選択に苦労したことが報われた
気持ちになりました。題名に至りましては、
自分のなかでしっくりくるまで、大げさでも
なく数ヶ月を要しました。( なので才能など
ありません)本文をあらためて読んでみます
と、情況などの説明はなるべく省くかたちで
書きました。読み手に自由に想像していただ
きたい思いを優先したつもりですが、省きす
ぎた感じもありますね。現代詩っぽい感覚を
大事に仕上げました。
お読みくださいまして、ありがとうござい
ました。急激に寒さが増してきました。お体
大切に過ごしてください。