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#君たちはどう生きるか 「よく分からないけど面白かった」を言語化してみたい

久しぶりに事前情報が全くない状態で映画を観に行くという幸せな体験ができました。ネタバレを含んだ記事になりますので、ぜひ映画を観た後に読んでいただければ幸いです。

いくつかTwitterに感想を先に載せたので、観たてホヤホヤの感想から載せていきます。

見終わってまず1番の感想は、わからない!でした。
そして次に来たのが、面白かった!という感情でした。
わからないけど面白い、そして見られて良かった。

様々な世界観を論理ではなく感覚で見せる映画なので、伏線回収系や推理系のようなロジックが効いている映画が好みな人にとってはかなり苦手な映画だった気がします。
異なる世界観を私たちの世界が持つロジックでは解明できないのです。
なので、「分からない」がまず頭の中を埋め尽くし、「よく分からない世界がある」を受容した先に面白いが生まれてきた感じです。

未開の土地の特有のしきたりに触れた時の感情に似ていました。「なんでそんなことをするのか分からない」→「よく分からないが彼らの論理でしきたりを守っている」→「いろんな世界があって面白いな」の流れです。

たくさんの人が面白がるような作品ではなく、小劇場で見られるような刺さる人には刺さるけど売れない映画だったのかなと思います。好きなものをコツコツ積み上げた気概がひしひしと伝わる渾身の映画でした。


引っかかった点、まだ答えが見えない点についてまとめます。
ピンとくるものがある有識者のみなさま、ご意見あれば是非コメントお願いします。

・普段は家に近寄らないアオサギがなぜ眞人には近づいたのか
→父親も大伯父と血縁関係にあるが、アオサギは接触しなかった。(父は過去に失踪したことはない)眞人が来るのを待っていた。

・寝たきりの人の存在
→戦時下と考えれば不思議なことではないのですが、ワイワイ騒ぐおばあちゃん集団のそばでひっそりと寝たきりの人と看病する人を描いたことに何か理由があったのでしょうか。

・眞人が自分を石で殴ったのはなぜか
→ラストで頭の傷を「自分の悪意」だと話します。傷を負うことで、両親にかばってもらい、両親から同級生への仕返しや学校へ行かなくていい口実になることを期待した。

・何かと楽しそうな老婆と孤独な老爺
→集団で何かと楽しそうな老女のおしゃべりには華がありますが、ナイフの研ぎ方を教えてくれた老爺や大伯父は集団を嫌っているように見えました。現実世界も似たようなもので、宮崎駿は自身の孤独を投影して描いたのか、それとも女性への憧れを描いたのか気になりました。

・「君たちはどう生きるか」を途中までしか読んでいない
→母がプレゼントしてくれるはずだった本「君たちはどう生きるか」。これを読んでから明確に眞人の行動が変わる重要なアイテムです。
危険な森に入って行く夏子さん(母の妹、父の再婚相手)を一度は無視したのに、本を読んだ後は弓矢を持って救いに行こうとし、度々「夏子さんを連れて帰る」と宣言します。
元の性格もあるかもしれませんが、アオサギに刺した矢を抜いてあげる、穴を塞ぐ栓を作ってあげる、ペリカンを土葬する、という優しさもこの本を読んで変わった点ではと推察しました。この本で主人公が得たのは、生命の尊重だったのだと思います。嫌な相手でも、嫌がらせをしてきた相手でも、困っていれば救いの手を差し伸べる。そして他者に悪意を向けない。
これだけ重要な転換点だったのに、本を途中までしか読んでいない点が気になりました。

・ペリカンに押し込まれる黄金の門
→なぜ押し込まれたのか。なぜアオサギの羽を持っていたら守られたのか。あの岩間の奥には何があったのか。

・麦わら帽の幽霊みたいなやつは何?
→謎。

・ペリカンは大伯父によって生み出され、どれだけ飛んでもどこにも行けない
→人間もアオサギもこの世界を出入りするのにペリカンは出られなかった。白いワラワラを食うためだけに生まれ、食ってはヒミに焼き殺される地獄。

・テーブルの下で寝かされたのは何故?人形に囲まれていたのは何故?
→わざわざキリコさんがテーブルに下に眞人を安置し、人形を並べてくれたとしか思えないのですが、その理由はわかりません。元の世界の記憶はないはずなのですが。

・触らないで、と言われた人形を眞人が普通に触ったのは何故?そして触っても何も起きないのは何故?
→これはめちゃくちゃ謎です。かなり印象的なシーンだったのですが、メタファーだったのか、伏線だったのか、最後までわかりませんでした。

・妊婦のヒサコさんはなぜ下の世界へ行ったのか?
→以下仮説です。
自分のことを嫌うそぶりの連れ子の眞人。転校早々学校で喧嘩をして帰ってくる。荒れてるなと思っていたらナイフを研ぎ、弓矢を作り出した。コイツ、ヤバくね?私とお腹の赤ちゃん殺されるんじゃね?と不安になって下の世界へ行った、という説はどうですか?
他にもまだ有力な説がありそうです。

・13個のパズル、数字の意味は?
この映画の中で唯一出てくる印象的な数字です。13個のパズルを3日に1度組んでいく。うーん。このセリフにピンとくるものがありません。

・積み木
→何かのメタファーだと信じたいのですが、アイテムとしては幼児向けです。大伯父が作った世界で、世界の平和を握るアイテムが子供のおもちゃである積み木。大伯父の精神的な未熟さを表すアイテムとも解釈できるのではないでしょうか。

・大叔父の正体は?
→あの世界の創造主、神様など様々な解釈があると思いますが、個人的には究極の引きこもり、社会との関わりを拒絶した者の行く末と解釈しました。

おばあちゃんたちは、大伯父は本をよく読み、頭がおかしくなってある日忽然と消えたと話します。
突如空から降ってきた塔は、パレレルワールドを繋ぐものではなく、大伯父が自ら作り上げた他者との関わりを拒むシェルターだったと思えて仕方ないのです。他者の悪意に晒されることを嫌い、他者への悪意を持ってしまう自分が嫌で一人になりたかった。そして一人になった世界で、インコやペリカンなど空を飛ぶ自由な鳥類への憧れを炸裂させ、自分だけの世界を構築したかった。

大伯父の住む場所へ行く際に通る白い三角のトンネルがあります。白い石でできたトンネルは、子孫である眞人やヒサコだろうが関係なく、アオサギやインコ大将軍に対しても全てに電流を浴びせてしまう。
来る者皆に電流(≒悪意)を浴びせてしまうのは、自分のテリトリーを踏み荒らされたくないという願いの表出だと思うのです。

最後の大伯父から眞人への問いかけは、この世界を継いで悪意のない世界を作るか、元の悪意にあふれた世界に戻るか。
私の解釈で言えばこの2択は、悪意に晒されないように他者との関係性を捨てて孤独に生きるか、悪意にあふれた世界に迎合して生きるかの2択になります。これがタイトルの「君たちはどう生きるか」に繋がると思うんです。

眞人は自分の中にある悪意を認め、その上で悪意のある世界で生きていくと決意を表明します。
きっと大伯父は眞人が自分と同じ選択をすることを期待していたんだと思います。
眞人が抱える父の再婚相手への嫌悪感、怪我を負って学校を休もうという社会との不和、死んだ母の忘れられない記憶。眞人が引きこもりになっておかしくない状況はすでにあったのです。
眞人が自分と同じ選択をしてくれるなら、自分の人生も肯定される。自分の生き方は間違っていなかったと大伯父は誰かに認められたかった。
ここまで考えると、眞人の父が大伯父に呼ばれなかった理由も分かります。父は豪快で社会に適合しており、大伯父の生き方を否定するのが目に見えている。

気になる点も色々とありますが、ひとまず今の段階での私の解釈です。皆さんの解釈もよければ教えてください。

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