見出し画像

【詩】要請、多様性

素敵に汚いビル街を 歩く
狭い入り口 細い階段を上る
さぁ 腹ぺこだ 
風を切り 扉を開ける 
焼いた肉の匂いに呑まれる

いらじゃいやじぇ
………。なんだ、多様性か。
買って数刻の食券 届かぬ願い

ガッチャンガッチャンガチョン
………。これが多様性の音か。
騒々しく 無遠慮に 鼓膜を侵す

ドンッッ
………。これが多様性か。
丼は荒く置かれ 肉は跳ねる

氾濫する異国語
大和撫子は隅に萎れる

振り回されては ぶつけ置かれる
それでも踊る
「誰か」の要望という 掌上で
我々の社会が 我々同士が 衝突する
米が 米が死ぬ 丼が壊れる

温かさは 熱ではない
不器用さは 暴力ではない
柔らかさは 無気力ではない

廃れた汚いビル街を 去る
狭い路地 倦怠な坂を 上る
あぁ 腹一杯だ 茹だる風

扉を閉じよう 引きこもる理想郷
今は亡き祖国
外から こじ開ける力に 
外扉は破られた
内扉の陥落も すぐそこにある
瞬きする間に 迫る危機

空っぽな夢をみる
此処には存在し得ない虚像
身勝手な夢に壊される
私たちの実像



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集