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~N1にこだわり後発参入でも市場シェアの獲得に成功した飲食店向け顧客管理SaaS「トレタ」~

1.サマリー

業界内で先行的にサービスをリリースしたトレタだが、直ぐにリクルートが参入し、ホットペッパーの集客媒体で培った顧客資産を活用し、予約台帳管理市場にも参入。N1でもある自社で経営している飲食店が使いやすいプロダクトを想定して開発されたトレタ。後発ではないが、巨大企業が参入してきた中で、どのように市場シェアのNo.1シェアを奪ったかを分析する。

2.前提整理

2-1.トレタについて

・代表者経歴

パナソニック、外資系広告代理店を経て2000年に西麻布で飲食店を開業。立ち飲みブームの火付け役となった「西麻布 壌」や「豚組」などの繁盛店を次々とプロデュース。2011年、料理写真共有アプリ「ミイル」をローンチ後、2013年に飲食店向け予約システムの開発を手掛ける(株)トレタを設立。2014年6月にはWiLより2億円の資金調達を実施。数々の飲食店向けセミナーの講師も務める。

・創業年:2013年/2014年「トレタ」リリース
・累計調達額:20.3億円
・企業実績:導入店舗数:1万弱(2021年)

2-2.業界全体の各プレイヤー(カオスマップ/飲食店向けツール)

・飲食店向けツールサービスカオスマップ

引用

・飲食店向け予約台帳管理サービス一覧

引用

2-3.市場規模

・飲食店数:30~50万店舗
・予約対応割合:10万店舗(3,000円以上の価格帯)
・予約台帳導入割合:3~4万店舗(2021年時点)

2-4.業界課題

・慢性的な人手不足
・顧客管理を実施していない
・顧客データを元にしたマーケティングを実施できない
・「暗記」「熟練」が仕事に求められる絶対条件スキルだった

2-5.対象サービスのプレイヤー/市況感

トレタが展開しているプロダクト領域の既存サービスは事業立ち上げ時から、競合が新規参入し、競争が激しかった。

3.事業立上背景

元々飲食店を経営していた経験から、飲食店業界のIT化が遅れているのを痛感し、ユーザー側が自分に合った飲食店を探せない、事業者側には、どのような顧客が来店しているのかを蓄積できない、という両事業者の課題に対して、ユーザー側には写真共有サービスを、事業者側に、顧客管理ツールとしてトレタを開発。下記インタビュー記事より抜粋。

「トレタはお店向けの予約システム。予約台帳がそのまま顧客台帳になるものです。日時でまとめたデータではなく、個人別にデータをクラウドに蓄積して、お店に提供しています。お客さんの来店行動を予約という形で全て捕捉すると、「この人は何回目だ」というものが分かる。お客さんの名前から、どんなものを好んで頼んだかといった情報が入っていくわけなので、お店側からすると来店の数が100%予約になれば、そのお店に来店されるお客さんの個人情報がすべて予約台帳に蓄積されているはずなんですよ。」

引用記事

4.参入時の各戦略

4-1.事業の差別化戦略(コンセプト戦略&機能戦略)

・機能の独自性

飲食店の空席情報を正確に把握できる点。紙での予約管理を撤廃し、トレタ上で“すべての”空席情報をリアルタイムに確認する仕組みになっている。一般的なオンライン予約サービスは、紙台帳との併用を前提に設計されているが、紙から脱却し、ITツールに完全移行していただけるように徹底してサポートしている。

・徹底したオンボーディングと営業

顧客の心理的安全性を構築するために、トレタを導入した時のメリットと、導入後の不安を払拭できる理由とステップを明確に教示して、導入後にはカスタマーサクセス部が伴走をする体制を構築している。

下記インタビュー記事より抜粋

「紙の予約台帳を完全に捨ててもらうためには、トレタを使うことでどのようなメリットが得られるかについての合意形成が不可欠です。当社のセールスには、商談の段階で、提供できる価値について認識をすり合わせるステップを踏むよう徹底させています。」
「カスタマーサクセスにおいて特に重視しているのは、オンボーディングです。導入段階で紙から完全移行してもらえなければ、トレタを活かすことはできない。完全移行してもらうために「大丈夫!ひとりじゃないですから、一緒にやり抜きましょう」と、できる限り伴走するんです。時間もコストもかかりますが、最も手を抜けない部分なので、かなり丁寧に進めていますね。」

引用記事

・ツール使用時のUX

マニュアル無しでも使用できて、ボタンを押すと何が起きるかを直感的にわかる操作性を実現することができるUIでないと、ツールの使用価値には繋がらない。一般的なITツールが一つの画面で操作を完了させる方が、UI的には評価される中、飲食店事業者の様なアナログ業界では、1画面の情報量を少なくして、次に取るべき操作を視認的に分かるようにしたほうが、彼らのUXは良くなる。電話予約の受付のオペレーションの設計に合わせた。

・プライシング

1店舗1.2万円の導入ハードルが低い価格帯。端末課金ではなく店舗課金なので、追加するユーザー数なども無制限なのが特徴。

・他社サービスとの連携

引用

予約データや来店/接客データ、POSデータなどを扱っている為、来店/需要予測やシフト/仕入れの管理、喫食やそこから商圏や顧客の分析などもできるようになる。

下記、記事より抜粋。

「例えば飲食店の場合、『今日のおすすめ』のように、メニューに料理名を登録せずにPOSデータを取得しているためコード化・一律化されておらず、分析が進まないということがよくあります。しかし、我々のAIを活用すれば、例えば「イカのサクサクフリッター」のようなメニューであれば、「魚介料理」「イカ」「揚げ物」のようにラベリングをする事で、店舗の中でメニュー単体の分析だけでなく、カテゴリーごとの分析ができるようになります。カテゴリーで分けることができれば、売れる組み合わせも可視化され、メニュー開発やマーケティングなどに活かすことが可能になります。」


・初期ユーザー獲得戦略

自社で元々飲食店事業を経験していたこともあり、つながりのある飲食店事業者からアプローチ。

5.今後の事業戦略

飲食店舗のPL項目の中で、25%を占める販管費で発生する業務を効率化できるプロダクトを横断的に展開していくのではないか。飲食店舗の販管費には、顧客獲得、顧客管理、POS、決済の4つの大きな軸があり、POSと決済領域への展開を予想、リクルートが自社で全てプロダクトを展開しているので、どのように市場を獲得していくのかがウォッチしていきたい。

6.さいごに

トレタが市場No.1を獲得できた要因を、個人的に感じた点から下記2つにまとめた。

1.他社サービスとの素早い連携

自社で取得できない、飲食店で発生する全量データの取得を、他社サービスと連携することで可能にした。データを統合して価値を届けるという価値提供のポジションを確立した。

今後このようなAPIを開放したAPIエコノミーや会社というボーダーを超えた事業定型を前提としたサービス提供が、他業界でも当たり前になるのではないか。トレタでは、自社で集客媒体を保持していないことで、業界内の集客媒体サービスとの連携が可能になった。

2.プロダクトのへのこだわり

飲食店事業者が使いやすいUI/UXの実現や、アプリのバージョン数からみても、プロダクトへのこだわりを伺える。モバイルアプリのバージョンが他社と約3倍の差があり、試行錯誤の差が明らかに差別化要素になっている。

7.Appendix

・参考記事一覧

代表インタビュー
代表インタビュー
代表インタビュー
代表インタビュー
2013年創業会社まとめ
代表インタビュー
飲食DXレポート記事
従業員note記事

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