
TVドラマ『霊験お初〜震える岩〜』と、心の強さのこと。
こんにちは。桜小路いをりです。
昨日、ドラマ『霊験お初〜震える岩〜』を視聴しました。
宮部みゆきさん原作、上白石萌音さん主演、そして、SixTONESのきょもこと京本大我さん出演ということで、「もう見るしかない!」とリアタイ。
萌音さん演じるお初の芯の強さがとても印象的に描かれていて、私も「心の強さ」について思わず考えてしまいました。
ここからはネタバレ注意でお届けします。(ちなみに原作は未読なので、その点はあらかじめご了承ください)
『霊験お初〜震える岩〜』で描かれる「強い心」
お初は、兄の六蔵(満島真之介さん)とは血が繋がっていないものの、兄からも義理の姉からも、飯屋のお客さんたちからも好かれる看板娘。
人ならざるものが見える、その想いが心に流れ込んでくる、という不思議な力に翻弄されながらも、与力見習いの右京之介(京本大我さん)と共に、事件を解決しようと奮闘します。
その力は自分にしかないものだから、死人憑きを追うことは自分にしかできないことだから。
そんな使命感をもって恐ろしい「死人憑き」の事件に挑んでいく姿はとても凛々しくて、それを生き生きと演じる萌音さんも、とても素敵でした。
何より印象深かったのは、事件を追っていくことに疲弊していたお初が、「私は大丈夫じゃないから助けてほしい」と兄に告げる場面。
兄の六蔵は、それに対して「弱さを吐き出せるのは『強い』証拠」というようなことを話していました。
私はこの場面から、お初が、温かい家庭で温かい愛情を注がれて育ったこと、尊重され信頼されて育った女の子だということを、すごく感じました。
お初の心にある「強さ」は、持って生まれた「強さ」だけじゃない。
周囲の人に恵まれて、その温かさを受け止めながら育ってきたからこそ、お初の心は、人ならざるものの想いが急激に雪崩込んできても壊れないほど、強い。
思えば、冒頭の火事のシーンでも、お初が「私についてきて」と言うと、六蔵はすぐにそれに従っていました。
「お初はもとから勘が鋭い」なんてことも話されていましたが、こんなところからも、お初が周囲にどれだけ信頼されているかが垣間見える気がします。
もしかしたら、その「強さ」があるから、お初の中に「不思議な力」が顕現したのかもしれません。
一方で、本作を見て思ったのは、「強い心」の反対の言葉は、「弱い心」ではないんじゃないかな、ということでした。
「死人憑きは心の隙につけこむ」という話もあった通り、「強い心」の反対は、「空っぽの心」なのだと思います。
没頭するほど何かを好きになる気持ち、何かを守りたいと思う気持ち、助けたい、寄り添いたいという気持ち。
どんな「気持ち」でもいいけれど、とにかく、「この気持ちがあるからこう行動する」という軸になるものが入った心なら、それは「空っぽの心」ではないのではないか。
本作のクライマックス直前、「右京之介が死人憑きに取り憑かれたのではないか」と、六蔵・お初兄妹が慌てる場面がありました。
右京之介は過去にトラウマという言葉では片付けられない経験をしており、どこか頼りない一面もあります。
彼は確かに「憑かれやすそう」なタイプではあると思うんです、お初に比べて。
しかし、実際に死人憑きに憑かれていたのは右京之介本人ではなく、その父親でした。
どうして、右京之介は死人憑きに憑かれなかったのか。
「父親が先に死人憑きに憑かれていたから、右京之介は憑かれていなくて当然」という見方もできますが、私自身は、ちょっと違う考えを持っています。
右京之介には、「算学が好き」という(どこかオタクっぽさも感じるような)強い気持ちがありました。
そして、ラストシーンでお初に「いつか伝えたい想いがある」とも打ち明けており、お初に対しての気持ちも、恐らく既に心に抱いていたと思われます。
それだけの熱さ、温かさを心に携えているなら、もし隙間に入り込もうとした死人憑きがいても、跳ね返してしまえるのではないかなと、私は考えました。
何かを、あるいは誰かを強く想う気持ちは、時に危ういものではある。
しかし、それと同時に、暗くどろどろとした邪悪なものから心を守る存在にも、なるんじゃないかな、と。
作中の言葉で喩えるなら、その想いは、自分の心すら燃やし尽くして炭にしてしまう「火」にもなれば、誰かを焼き尽くし飲み込もうとする「火」にもなり、悪しきものを浄化したり、それらから守るための「火」にもなる。
なんて、大好きな萌音さんときょもの初共演作が、好きな作家さんのひとりである宮部みゆきさんの小説が原作のドラマだった私の、考察にも満たない感想ではありますが。
その「火」を絶やさないように、でも、燃え広げさせてしまうことがないように。
自分の心も大切な人の心もしっかり見つめていこう、と思いました。
ドラマの感想まとめ
印象的だったのが、ドキドキ、ハラハラしながら、時にくすっと笑いながら見られる展開。
「さすが宮部みゆき作品……!」と唸りました。(原作も読んで比べてみたいです)
また、本ドラマでいちばん嬉しかったのは、萌音さんときょもの共演でした。
大好きなお二人の色んな表情、姿が見られて嬉しかったです。
お二人とも舞台でのお芝居を多数経験されているだけあって、さすが安定感も抜群。
特に! ラストのお団子屋さんでの掛け合いが、すごく素敵でした。
全体的に、人の心の深いところ、暗くどろそろした部分を描き出す重めのストーリーではあったからこそ、この穏やかなシーンがより引き立っていたように思います。
(個人的に、ついさっきまで「頼もしいところある……!」と思っていた右京之介が急に弱気になるところが、すごくキュンでした。彼が先延ばしにしようとした告白を「今伝えてください」とはっきり言うお初も、すごくかわいかった)
そして、そのシーンで流れる坂本冬美さんの「恋の予感」が、すごく温かくて。
私は、オリジナルの安全地帯が歌う「恋の予感」もとても好きで、小さい頃から母が家でかけているのを聴いていたこともあり、嬉しいコラボでした。
既に、もう一度見返したくてたまらなくなっています。
さて、ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
私の「好き」が何乗にもなっていた、ドラマ『霊験お初~震える岩~』。
この記事で、少しでもその魅力をお伝えできていたら嬉しいです。
今回お借りした見出し画像は、蓮の花の写真です。作中の季節が夏だったのと、死人憑きを成仏させるというストーリーが印象的だったので、仏教を象徴するような存在でもある蓮の花を選ばせていただきました。
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