
鋸山に行って来たよ-07
これまでのお話
正午、お腹は満たされたし、荷物も旅館に預けたし、鋸山ハイキングに出発だ。
「ここに行きたいです。行ってください」
私より地図を読む能力に長けているたぁにマップを渡すと、彼は周辺を見渡して肉屋の方へと向かった。
戻るの?
なっ、なんとっ!
そこには「鋸山登山道」と書かれた看板があった。
「たぁ、すごーい」
“地図を読まずとも本能に従えっ”
と言いたげなほど、彼は自信満々の笑顔を浮かべた。
細い道を進んで行くとコーヒーショップの看板が目に留まる。
そういえば、最近飲んでないなぁ。あえて立ち寄らないけど。
満開の菜の花の横を通り、トンネルと進むと外国人グループに出くわした。
まだ山じゃないし声をかけようかな、どうしようかな。
「こんにちは」
悩んでたら向こうから声をかけてくれた。咄嗟に出た私のアンサーは・・・・・・
「ハロー」
「『こんにちは』って言われたんだから『こんにちは』って返さないとダメでしょ」
ニュージーランド人であるたぁに言われる。
「つい外国人って思ったら『ハロー』って出てきちゃったんだもん」
「それはのん(私)が外国にいる時、『ハロー』って言ったら『こんにちは』って言われるのと一緒だよ」
まぁ、それって嬉しいような、嫌なような、微妙な気持ちになるかもしれないけど。
「でも私、海外で『こんにちは』って言われたことないよ。だいたい『アニョハセヨ』か『ニーハオ』だし。あまりにもそう言われるから自分が韓国よりの顔なんだって理解したし」
「そうしたらちゃんと『アニョハセヨ』って答えなきゃ」
「なんでだよ。じゃぁ、たぁだってさっき『こんにちは』って言われたんだから『こんにちは』って返さないとダメじゃん」
「彼らの顔はこっち向いていなかった」
・・・・・・・・・・・・。
無限に続きそうなくだらん会話。
まぁ彼が言っていることもわからなくもないから、今度、「こんにちは」って言われたら「こんにちは」って返そう。
道沿いには迷わないようにと案内板が結構ある。
ご親切にありがとうございます。
沢コースについての看板を見つけた。

うーん、通行止めか。
行きたいコースではないので軽く確認だけしておく。
今日は車力道から山頂へと向かい、日本寺を楽しんだ後、ロープウェイで下ろうと思っている。だけど日曜の今日、混み合っていないかとちょっと不安。なんせ既に前後グループに挟まれて歩いている。明日もハイキングする予定だし、予定とは未定とばかりまだ深くは決めていない。
後ろの三人組は韓国の方のようではしゃぐその声が前を歩く私たちに駄々洩れて、雰囲気を見事に崩してくれる。
だから人が多いと嫌なんだよね。
平坦道と階段の分かれ道。親切看板によると車力道と関東ふれあい道とある。
ふれあい道は明日上る予定なので左の車力道へと進む。看板は英語でも記載があったから外国人にも優しい町だね。
「キノコがあったら教えてね」
森のアイドル(と勝手に呼んでいる)キノコを見つけるとテンションが高くなる。先を歩く私より、後ろを歩くたぁのほうがよく見つけるので念のため声をかけておく。
「なら、もう見つけたよ」
もうっ?
まだ山に入っていないよ。
彼は道脇下に落ちている気を指差す。なんとっ、白キノコが3つ成長しているよ。

すごい観察力、というよりもなんて強い引き寄せ力なのか。お陰でアイドルに癒されました。
先には枝にぶら下がる葡萄のように花が咲いている。

ほんわか情景を写真に収めるとピンボケしてしまうのでフォーカスが合うまで粘る。その間に後ろの3人組に抜いて欲しかったんだけど、彼らは私の撮影が気になったようで後ろで止まってしまった。
逆効果っ。
叶わなかった私の思い、その後も背後はしゃぎ声を聞きながら前へと進む。
日陰で見かけたぶら下がり花(って勝手に名付けてみる)が青空の下、日向でいっぱい花を付けていた。

日陰な日向かでイメージが全く異なるもね。
「あっ、穴だ」
向かいの岩場にいかにも「人力で彫りました」的な穴があった。

石切りの際に使われていたものだろうけど、暗闇で中が見えないとそれだけで見えないものに対する興味心と恐怖心が合わさって軽く興奮してしまう。近くに同じような穴があったから「中でくっついているのかな?」と思うけど安全第一な私たちは決して中には入らなかった。
「あっ、桜だ」
3月の半ばだというのにほとんど満開。

「もう散っている場所もあるよ」
確かに枝先には青葉がちらほら見える。だけど下の方はまだ蕾。日の当たり方によって同じ木でも変化があり、そのおかげで長きにわたって花を楽しめるのは有難い。
都会で見る桜はそれ自体がもてはやされて、それはそれで美しいのだけど、山で見る桜はどんなに周辺を緑で囲まれても目立ってしまうその存在感がたまらなく良い。
ジャパニーズビューティー。
国花、あなたに恥じない日本人になれるよう今日も平和に生きています。
無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。