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朗読フリーの作品

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こちらにある作品は基本朗読フリーとなっています。 ※朗読する際はこちらのアカウントにDMでご連絡ください。(https://twitter.com/jamasin6) 語尾の変更…
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#かすみみたま

バスが来ない (朗読:かすみみたま様)

当初は家に帰りたいという意味で言っているのだと、友人や施設の人たちは思っていた。
入所する人の多くがバスか自家用車で最初訪れる。
老人の場合はバスに乗ってだったから、同じバスに乗れば帰れると信じているのだとみんな思ったのだ。
それから、来る日も来る日も「バスはまだか?バスはまだか?」と老人は言い続けた。
「赤いバスはまだか?赤いバスに乗りたいんだ」そう繰り返した。

ある職員の一人が見かねて段ボー

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コインロッカー(朗読:かすみみたま様)

その日、僕は駅の構内で友人を待っていた。
スマホに視線を落とすと時間は12時25分。
約束まではあと5分。友人から28分着の電車に乗ったとLINEがあった。
友人はいつも、時間どおりにくる。らしいと言えばらしいが、いつも早めにくる自分に少しは合わせてくれてもいいような?と思わないでもない。
ま、自分も友人に合わせる気がないからどっちもどっちか。

『ここを開けてくれ……』

突然、背後から男の声が

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山奥の水鏡(朗読:かすみみたま様)

とある休日に、私は妻と娘二人を乗せてドライブをしていた。
行先は山奥の古寺だという。
なんで休みの日にそんなところにと思わないでもないが、私を除く三人が乗り気なのだからどうしようもない。
私は渋々ハンドルを握りながら、それでもいい年をして親の休日に付き合ってくれる娘に相好を崩した。
なんでもその寺の境内にある手水舎(ちょうずや)にある水鏡(みかがみ)の噂をたしかめに行きたいとのことだった。
一体全

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