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「オイシックスじゃなきゃダメ」を作り出す~正攻法を忠実に再現したオイシックスの売れる仕組み~



今回のマーケティングトレースは「オイシックス・ラ・大地株式会社」さん。
※以下「オイシックス」

今年の夏にSNSで反響を呼んだクレヨンしんちゃんとのコラボ。



さらに、9月にカンブリア宮殿で取り上げられていたオイシックスさんのサービスに対する想いに感銘を受けたので、是非とも少しでも多くの人に共有したかったのでまとめてみました。

まずは会社概要から。

【会社概要】

・料理キットや宅食が6年で約4,000万食を売り上げた
・手作りしたいけど時間が取れない家庭にターゲットを絞っている
・契約農家が約4,000軒以上
・2011年は売上高126億円だったが、2018年は640億円に急成長
・食品通販ランキングでイオンやイトーヨーカドーを抑えてトップの売上
・「らでぃっしゅぼーや」と「大地を守る会」の3社で経営統合した会社
 ※らでぃっしゅぼーや:有機野菜の宅配
 ※大地を守る会:野菜宅配の草分け

【企業ビジョン】
・食のこれからをつくり、ひろげていく
・美味しくて体に良いものを苦労せずに食べたい


【事業戦略】
・各3つのブランドで顧客をセグメント化
・徹底した顧客へのヒアリングにより課題を抽出して解決で徹底する
・食のビジネス界隈を盛り上げる施策

一言でまとめると、、、

安心・安全で美味しい食材を気軽に多くの人に提供し、
顧客の声を拾い上げて最高のサービスにし続けている会社です。

「プロダクト>プロモーション」といった優先順位が巷では言われていますが、オイシックスさんはさらにその先を見据えて、常にプロダクトを最高の品質の状態に保っておくことを常に意識しています。

まさにSaaSビジネスの正攻法を正確に行っているように思える会社でした。

さて、そんなオイシックスさんが、どのようにサービスを提供しているのかを分析していきましょう。

まずは3C分析、PEST分析から。

【3C分析】

Customer:顧客
・Oisix:共働き夫婦
 ⇒仕事後に時間がなくても、安心安全で美味しい料理を子供たちに食べさせたい人
・らでぃっしゅぼーや:料理を楽しみたい女性
 ⇒珍しい野菜を宅配して、料理の楽しさを追究したい人
・大地を守る会:健康に気を使っている年配層
 ⇒いつまでも美味しく健康であり続けたい人

Company:自社
・野菜のネット通販会社3社を経営統合
・安心で安全で新鮮な野菜を最適に提供
・野菜をネットで販売する新たな価値を日本に広めた立役者

Competitor:競合
・大手小売り業者
・EC宅配業者

【PEST分析】

Political:政治
気候変動による国産野菜の値段高騰の脅威

Economic:経済
18年度EC通販市場は18兆円となっており過去最高を更新中

Social:社会
農業就業人口の激減

Technological:技術
農業×ITにより全体レベルの底上げ

特にスゴイのが競合についてです。
とあるインタビューで目にしたのですが、競合はあまり意識していないそうです。
その理由が以下2点でした。
・お客さまの期待を超えることのほうがはるかに重要で、かつ難しいということ
・お客さまは各サービスを使い分けているというか併用されている方が非常に多い

常にお客様が何を感じて求めているかを追究し続けています。
競合がこうしているからとかではなく、お客様の本質的な課題はどこにあるのかを徹底して探り、解決に向けてとにかく進む。

その結果、お客様に信用・信頼されるプロダクトが形成される。

全て綺麗ごとのようですが、そこを決して妥協しない精神。
実際に現場で働いたことがないですが、全社として目指す方向性に全くブレがないので、現場は迷わずにそこに向かって突き進む一体感が生まれているのではないかと考えられます。

続いて、企業の事業戦略を考える前段階としてSWOT分析を行います。

【SWOT分析】

Strengths:強み
・徹底した高品質と課題解決
・国内最大の食品通販事業
・契約農家が約4,000軒

Weaknesses:弱み
・配送領域(沖縄や北海道や離島など)
・値段の高さによりユーザーが限定的になる

Opportunities:機会
・冷めることのない健康ブーム
・SNSの普及などによる販売チャネルの拡大

Therats:脅威
・配送業者の人手不足による商品提供のスピード低下
・退会検討者などによるネガティブな口コミ
・生鮮食品を扱っているため欠陥商品が混じってしまう可能性

特に強みとしていることが品質もそうですが、徹底した顧客へのヒアリングです。
以下に例を記載しておりますが、ユーザーとなるのは主に調理者(母親)やそれを食べる子供たちです。

Ex)ある料理キットの試食会
・小松菜を食べづらそうにしている子供を見逃さずにヒアリング
 ⇒子供でも食べやすい大きさにするように試行錯誤

Ex)冷蔵庫が空いていない状態で定期便が来ると入らない
・冷蔵庫の空き状態を把握しできるサービスを開始できないか
 ⇒冷蔵庫の空き具合で定期配送をストップさせるサービスを開始

まだ企画の段階からユーザーにヒアリングをしてユーザー視点に立つこと。
また、ぼそっと出てきた不満を取りこぼさないことに徹底していました。

では、なぜそこまでユーザーの声を忠実に拾い上げていく精神が宿っているのか。
それは以前、定期便を解約するユーザーに解約理由をヒアリングした際、サービス自体を嫌いになった理由で解約するといったユーザーがいなかったエピソードが発端です。
「余っている食材を捨てるのがもったない」や「調理する手間がかかる」などといった解約理由が多くを占めていたそで、だったら「作るプロセスよりも料理を考えるプロセスを短くする」ことで課題を解決し、新たな利用価値を生み出すことに繋げていくことに方向転換をしていったそうです。

そのように、言葉にならない高い価値を提供して、潜在ニーズを喚起して言語化していくことでサービスのクオリティをより高めていきました。

もし自分が起業のCMOだったら

・アジア市場の開拓
・高年齢層向けサービスの提供
・レシピ動画の作成
・近隣地域の食材の希望で割引
・減量レシピの開発
・近隣ユーザーで余った食材の物々交換の仕組みを構築

オイシックスさんは単純に商品を届けるまでだけではなく、届けた後にお客様の食卓が豊かになるかを追究しています。

一度利用してしまえば、その便利さと品質の高さから、「もうオイシックスじゃなきゃ嫌だ」を自然と作りだしているように感じました。

会社の都合でサービスを提供しない。

そんなことはわかっているけど、どこかの瞬間でいつの間にか会社都合でサービスを構築してしまっていることがあるのではないかと、つい振返ってしまいました。

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